第5回 末梢神経障害(しびれ)の悪化・怪我を防ぐセルフケア支援|がんの治療と緩和②
- 公開日: 2018/9/11
<末梢神経障害とは>
しびれや痛みとして現れ、QOLに及ぼす影響が大きい
化学療法においては、末梢神経障害(しびれ)の副作用を起こす薬剤を使用することがあります。末梢神経障害は、がん患者さんの生活に影響を及ぼす不快な症状の一つです。化学療法による末梢神経障害は、メカニズムの詳細が明らかになっていませんが、坐骨神経痛や糖尿病神経障害などのように、さまざまな要因によって生じる神経障害性疼痛に含まれます。神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインに示された定義や考えられているメカニズムを表1に示します。
表1 化学療法による末梢神経障害と影響
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ,編:神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版. 2 神経障害性疼痛の病態.p20,10神経障害性疼痛とQOL.P43,真興交易,2016.
国立がん研究センターがん対策情報センター:がん情報サービス.末梢神経障害(しびれ).(2018年8月10日閲覧)を参考に作成
<アセスメント>
使用中の抗がん剤を確認し、患者さんの訴えを聞いていく
患者さんは、末梢神経障害に対し、「抗がん剤で命が助かるのだからしびれくらいは我慢しておこう」「神経痛は時間がかかるもの、そのうち治まるだろう」と、軽視することがあります。末梢神経障害は重症化する場合があり、重症化すると、転倒、怪我などを頻繁に起こしQOLを低下させます。末梢神経障害が重症化した患者さんからは、次のような訴えが聞かれます。
「手がしびれているので物をよく落とす。落としてもしびれで拾えない」
「しびれで足がふらついて転ぶ。転んでもすぐに立ち上がれない」
「包丁で指を深く切った。しびれで切ったこともわからず血が出てわかった」
「今までできていたことが何もできない」「日常のすべてに時間がかかる」
「一人ではどこにも行けない」「家族に迷惑をかける」
「情けない」「生きている意味がない」
QOLが低下した状態は、生きる意味を問うほどの気持ちのつらさを招きます。
医療者は、末梢神経障害を起こしやすい薬剤について理解し、患者さんの訴えから症状の程度や日常生活への影響をアセスメントする必要があります。末梢神経障害が出現する薬剤は、白金、タキサン系、ビンカアルカロイド系の製剤などです(表2、表3)。
表2 末梢神経障害を起こしやすい主な薬剤