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【連載】「ビュートゾルフ」型訪問看護から学ぶ

フラットな自律型のチームづくり

  • 公開日: 2018/9/27

オランダの「在宅ケア」の約60%を占め、世界中で注目されている在宅ケア組織「ビュートゾルフ(Buurtzorg)」。「ビュートゾルフ練馬富士見台」では、このビュートゾルフをモデルとした訪問看護の提供に取り組んでいます。
その取り組みの1つが、ビュートゾルフの大きな特徴である「フラットな自律型のチーム」づくり。管理者を置かず、スタッフ同士の上下関係もなく、運営にかかわることについては、スタッフ全員が会議で話し合って決定しています。
今回は、その会議の方法や実践例について紹介します。


Q. フラットな「自律型のチーム運営」がビュートゾルフの特徴だそうですね。馬場さんから見て、特に特徴的だと思われる取り組みの例は何ですか?

A. 「ビュートゾルフ式会議」がその1つです。解決志向型意思疎通法というもので、普通の会議のように多数決や、だれかが主導権を握って誘導するのではなく、全員の合意をとる形で物事を決定していきます。もし合意がとれなければ、その議題は延期になります。皆が納得していないことはやらないのです。また、ちゃんと系統立てて発言する必要はなく、おしゃべりをするように自由に発言していく決まりにしています。型にはまらない思いつき、自由な発想を大切しているためです。
 そして、自分と意見が違っても、他者の発言を否定してはいけない。尊重すること、という約束にしています。互いに敬意をもってコミュニケーションをとる、いわゆるアサーティブ・コミュニケーションが基本となっています。

Q. おもしろい会議の仕方ですね。こうしたルールはビュートゾルフで決められているのですか?

A. ビュートゾルフが提供するマニュアルがあるのです。日本語版もあります。マニュアルといっても指南書というほうが近いかもしれません。ビュートゾルフの考え方が示されていて、これを基盤とすることで、皆が同じ姿勢や意識をもって、ケアの提供にあたっていけるようになっています。

Q. 会議はいつ、どんなメンバーで行っているのですか?

A. 週に1回、ランチの時間に昼食やお菓子を食べながら、会議を行っています。現在のところ、サテライトもあわせて9名のスタッフを1チームとしています。会議は基本的にチーム全員が集まり、サテライトのスタッフは、スカイプを通して参加します。
 ランチミーティングの形をとることで、時間的な負担を軽減し、また皆が自由に発言しやすい環境を整えています。
 オランダのビュートゾルフの事業所を見学したときも、お菓子を食べながら雑談をするように会議を進めていたのが印象的でした。

Q. どのように会議は進められますか?

A. あらかじめ司会進行と書記という役割を決めておきます。司会進行がファシリテーターとしての役割を担います。
 会議の冒頭では、議題の提案者が「何を話し合うか、何を決めるのか」といったことを明確に掲げます。そこで出てきた提案について、皆が意見を出し合い、最終的には採決が行われ、全員の同意が得られれば決定となります。

contents
マニュアルをはじめビュートゾルフには、さまざまなコンテンツが用意されており、スタッフはPCやモバイルを通していつでも見ることができる

Q. どんな議題について話し合っていますか?

A. 利用者さんのケアで困っていることについて、どうやって解決していけばよいか意見を出し合うことが多いですね。またシフトの組み方や休暇のルール、スタッフの採用についても皆で決めますし、新人の教育方法など、運営にかかわることをすべて話し合って決めています。
 例えば最近では、子育て中のスタッフなど、フルタイムで勤務することが難しい人でも正社員で働けるように、週20時間もしくは30時間勤務を選択できる勤務制度があるのですが、実際に週20時間や30時間で働くスタッフが増えてきたことに伴い、どのように業務を分担していけばよいか、就業内容やサポート体制などを話し合いました。この制度についても、就業内容やサポート体制などをスタッフ全員で会議して決めていきました。

Q. こうした合議制の会議には、どんな効果があると思いますか?

A. スタッフ全員が、「自分も会議に参加している」という当事者感をもつことができます。また、自分の発言を皆が合意してくれるのですから、責任感も仲間意識も生まれてくると思います。
 それに皆が自由に発言することによって、予想もしなかった意見が出てくることもあって、それぞれのスタッフがいろいろな強みをもっていることを実感することができます。

Q. 苦労したところ、工夫したところはありますか?

A. やはり皆、合議制の会議というのは初めてで、やり方に慣れていませんから、最初は戸惑いましたね。そこで会議の進め方について研修を行いました。今では、最初に研修を受けたスタッフがファシリテーターとなって会議を進めています。
 また、ケアが難しいケースなどについては、かなり活発にディスカッションが行われるのですが、運営にかかわる制度などを決めるときには、なかなか意見が出ないこともあります。そんなときは、主に私がファシリテーターになり、「他のステーションでは〇〇をしている」など、皆が考えやすくなるような情報を提供しています。
 おとなしく発言が少ないスタッフには、声をかけて意見を求めるようにしています。ファシリテーターとして重要なのは、自分の意見を押しつけず、皆の考えを上手に導き出すための「気づき」を与えること、そして発言しやすい空気をつくることだと考えています。

Q. 印象的だったエピソードを教えてください。

A. 新人訪問看護師(以下、新人)を採用したときですね。看護師の経験はある方でしたが、20年ブランクがあったので、教育方法について皆で話し合ったことがありました。はじめは、「新人だから、とにかく教えなければならない、手が足りない」とスタッフからネガティブなコメントが出ていました。新人さんの教育は、スタッフにとって大きな業務負担に感じられるものなのです。
 そこで、「みんなが考える一人前の訪問看護師って何だろう? 何ができると一人前なんだろう?」と、話を振ってみました。すると必要なスキルについて、いろいろな意見が出てきたのです。
 最終的には、「これがここまでできるようになりたいね」「あれがここまでできるようになりたいね」と具体的な案が上がり、「それを身につけてもらうには何をしたらよいか」という議論となり、新人の指導方法が決まりました。「新人教育なんて大変、できない」というネガティブな意識が、皆で話し合っていくうちに前向きな姿勢に変わり、解決策を導き出すことができたのです。

 教育にかかわらず、仕事では難しいことはたくさん生じます。難しさの理由を1つずつ皆で紐解き分解していくことで、いつかは解決策につながります。そのためには、皆が自由に発言できることに加えて、ポジティブな合意につながるようにファシリテートすることも大切なのだとあらためて感じた出来事でした。


*次回は、地域連携の取り組みについて紹介します。

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