虚血性心疾患治療薬の種類・作用機序と使い分け
- 公開日: 2019/4/6
慢性冠動脈疾患では、心臓への酸素供給量と酸素消費量のコントロール、急性冠症候群ではこれに加え、心血管イベントの予防と予後改善が重要になります。それぞれに働きかける薬の使い分けの順番や併用・順番への考え方を解説します。
虚血性心疾患に使う薬とは
虚血性心疾患は、以前は狭心症と心筋梗塞という心筋壊死の有無による「結果重視」の分類がなされていました。しかし最近は、慢性冠動脈疾患と急性冠症候群に分類されています。
<慢性冠動脈疾患と急性冠症候群>
慢性冠動脈疾患と急性冠症候群は心筋梗塞(=心筋壊死)という結果をもたらす原因となるアテローム動脈硬化巣が不安定であるか、否かに焦点を当てた「原因重視」の分類です。治療は原因を抑制することが重要なので、治療法を考える上では原因重視の分類を理解しておくと便利です。
慢性冠動脈疾患の治療にはβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、硝酸薬、急性冠症候群にはこれに加えて脂質異常症治療薬と抗血小板薬が使われます。
慢性冠動脈疾患
心臓が虚血になるか否かは、心臓の酸素消費量と冠動脈を介して供給される酸素量のバランスで決まってきます。慢性冠動脈疾患はこのバランスが崩れた状態であり、治療法としては心臓の酸素消費量を減らすか、酸素供給量を増やすかのどちらかです。
1.β遮断薬
(1)作用機序
心臓の交感神経のβ受容体をブロックすることで、心臓の収縮力・心拍数を減らし、酸素消費量を減少させます。慢性冠動脈疾患の治療に使われる主なβ遮断薬を表1に示します。
(2)特に注意が必要な副作用
徐脈や房室ブロックを起こすことがあります。中枢神経抑制作用があるため、うつ病の患者さんではうつ症状を悪化させることがあります。
糖尿病の患者さんでは低血糖症状を自覚することが困難となります。
また、カルベジロールのようにβ1受容体非選択的な薬物は、気管支喘息や間歇性跛行を誘発することがあります。喘息・高度徐脈では禁忌、耐糖能異常・閉塞性肺疾患・末梢動脈疾患は慎重投与です。