希少・難治性疾患を取り巻く現状と課題
- 公開日: 2019/5/14
2019年2月27日、大手サンケイプラザにて「2月28日はRare Disease Day 10回目を迎える「世界希少・難治性疾患の日」希少・難治性疾患を取り巻く現状と課題 筋ジストロフィー治療の展望・患者さんの体験談を交えて」をテーマにプレスセミナーが行われました。講演は国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター長 小牧宏文先生とNPO法人PADM 遠位型ミオパチー患者会代表 織田友理子さんです。その様子をレポートします。
今は「筋ジストロフィー=長生きできない疾患」ではない
最初に、小牧先生が「筋ジストロフィーの現実と未来」をテーマに講演されました。
神経筋疾患はほぼすべてが希少疾患、難病であり、その1つであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーも、以前は長生きができない疾患であると考えられてきました。しかし、現在は研究が進み、20歳を超える、またその先を目指すということも可能となりました。
筋ジストロフィーとプロアクティブケア
プロアクティブケアとは、先制医療や先回りの医療という意味です。筋ジストロフィーと診断された時点から包括的なケアを開始することは、長い目でみると大きな力となります。その際に重要となるのがその疾患がどのような経過をたどるのか、という情報です。それらを踏まえ、いつ、どんな検査が必要であるかを提示しながら、多職種が連携してケアを積み重ねていきます。寿命が延びたことにより、小児期から成人期への移行医療も課題の1つとなっています。
筋ジストロフィーとシェアリング
筋ジストロフィー患者さんのより良い未来のためには、さまざまなことをシェアしていくことが必要であると小牧先生は考えています。まず1つ目は労力です。本人、家族だけでなく多職種が連携し、関わる労力を分散します。2つ目はデータです。個々の患者さんのデータを集積し、シェアすることでその後の治療に生かすことができます。最後は、成果です。さまざま分野の人が筋ジストロフィーを含む希少疾患の治療研究にかかわり、結果を分かち合います。
筋ジストロフィーとエンパワーメント
エンパワーメントとは「勇気づける」「生きる力を湧き出させる」などの意味があります。
患者さんにとって、医薬品開発は希望です。米国では、患者擁護団体から臨床開発へ強い関与があります。医薬品の開発は製薬会社や医療者で行うものではなく、患者さん、家族、患者会など多くの人々とともに行うものであると考えていくことが大切です。
「当事者だから話せること」を伝え続けていきたい
続いて、織田さんが「超希少難病とともに歩んだ10年」をテーマに、患者さんとしての体験談をお話されました。
織田さんは、大学時代に遠位型ミオパチーと診断されました。遠位型ミオパチーは神経性の筋疾患で、日本には数百人しかいないめずらしい疾患です。難病ということで診断も難しく、診断前は自分に起きていることの理由がわからず、不安を強く感じていました。そのため、診断がついたときは安心感が先にきたといいます。
難病は「世界中で5000~7000種類」「多くは遺伝子疾患」「誰しも10個前後の遺伝子変異を持っている」ことから、難病になる確率というのは誰もがゼロではありません。
織田さんは「何もしなければ何も変わらない」という気持ちから、全ての難病が根治可能となる社会を目指し、精力的に活動しています。
2008年にはPADM遠位型ミオパチー患者会を発足し、署名活動や要望活動、認知度向上活動を行っています。そのほか、車椅子に乗っている人が実際に行った場所を共有できるようなアプリをGoogleと共同で開発したりするなど、世界とも連携しながら活動をしています。
発病から15年、病気の進行を受け入れる日々を過ごすなかで、わかったことがあるといいます。それは「人は1人では生きられない」「みんな自分にできることで助け合って生きている」ということです。できる、できないということで人の価値を決めるのではなく、存在そのものに価値があるという社会になることが必要であり、人と比べることで感じる相対的幸福よりも、自分のなかにある絶対的幸福を大切にして欲しいと考えていると話されました。
2月の最終日は世界希少・難治性疾患の日(RDD:Rare Disease Day)です。
Rare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日、以下RDD)はより良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者さんの生活の質の向上を目指して、スウェーデンで2008年から始まった活動です。日本でもRDDの趣旨に賛同し、2010年から2月最終日にイベントを開催しております。 (RDDホームページより抜粋)