【事例4】強心薬から離脱できず退院困難な心不全患者の看護 ~在宅での療養を実現するための支援~
- 公開日: 2020/1/16
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事例紹介
Dさん、80歳代前半、女性
現病歴
弁膜症術後、心不全
既往歴
X-23年 僧帽弁置換術、三尖弁形成術
X-18年 徐脈性心房細動でペースメーカーの植込み
慢性閉塞性肺疾患(在宅酸素療法:2L/分)、慢性腎不全
入院までの経過
X年3月、下肢浮腫あり、心不全増悪のため入院となる。トルバプタンの内服を開始し症状が改善したため、トルバプタンを中止、アゾセミドを開始し退院。その後、心不全増悪がみられ、かかりつけ医の指示によりトルバプタンの内服が再開となった。X年7月に下肢浮腫増強、呼吸困難も出現し、心不全増悪で当院に再入院。
来院時検査所見
●採血結果
BNP1,113pg/mL、BUN54.7mg/dL、Cre2.14mg/dL、推定糸球体濾過量eGFR17.7mL/分
●心エコー検査
左室駆出率(LVEF)30.8 %、左室拡張終末期圧(LVD)(d)65.0mm、左室収縮終末期径(LVD)(s)57.3mm、大動脈弁逆流(MR)1度、僧帽弁逆流(AR)1度、三尖弁逆流(TR)2度
入院時内服処方の内容
イミダプリル1.25mg、ビソプロロール0.625mg、アゾセミド60mg、トルバプタン(サムスカ® )15mg、フロセミド20mg、ワルファリン1.25mg、ルビプロストン(アミティーザ®)48μg、フェブキソスタット(フェブリク®)20mg、ランプラゾール徐放錠15mg、アルファカルシドール1μg
患者背景
夫、長男と3人暮らし。次男・三男は近くに住んでいる。長女は結婚して県内の他市に住んでいる。大腿骨頸部骨折の既往があり、要介護4の認定を受けているが、介護サービスは利用していない。倦怠感が増強して以降は、おもにベッド上で生活しており、家事も夫・長男がしていた。
入院後の経過
入院後すぐ、点滴強心薬ドブタミン(ドブポン®注0.6%シリンジ)が開始となった。ピモベンダンの内服も開始したが、開始後より尿量がさらに減少したためピモベンダンは中止となり、心不全の改善はみられなかった。
Dさんは状態悪化に伴いせん妄状態となり、「家に帰りたい」とベッドから降りようとすることもあった。その後、環境調整でせん妄は改善したが、「家に帰りたい」と訴えることは変わらなかった。そのため、Dさんの思いを聴き、主治医は本人・家族に今後の療養に対する意向を確認することにした。
医師から、本人、夫、息子に「Dさんは心不全の改善がみられず点滴を外すことができないため、家に帰ることは難しいかもしれない」と説明があったが、Dさんは「状態が悪いことはわかっている。でも家に帰りたい」とはっきり答えた。それを受け家族は、Dさんを家に連れて帰ることを決めた。
しかし、点滴強心薬を減量すると尿量減少、腎機能悪化がみられ、心不全は増悪。内服強心薬のデノパミン(カルグート®)を追加するも、点滴を中止することは困難だった。
また、点滴の強心薬を減量しなくても呼吸困難、倦怠感がみられ始めており、症状が増強するにつれ、Dさんは「こんなにしんどかったら家には帰れない」と話すようになった。看護師もこの状態では、退院し家に帰ることは難しいのではないかと思っていた。