第15回 巻き爪③~症例でみるケアの実践
- 公開日: 2019/10/15
今回は巻き爪のケア実践として症例をご紹介したいと思います。
治療にかかわるドクターのいない高齢者施設(ディサービス、サテライトなど)や、在宅、障がい者施設、治療を希望されない外来などでフットケアを行うときにどこまで行えばいいのか看護の範囲で悩むことが多いです。
私は、現状を維持し、日常生活が送れるよう援助しています。
治療ではなく、看護ケアの範囲でかかわる症例を見ていただきたいと思います。
☆看護として取り組む内容としては、下記の2つとしました。
1. 日常生活において
清潔の保持
トラブルの予防
ケアについての正しい知識の指導
2. 療養上の援助において
疾病、加齢、障がいに伴う、異常の早期発見及び治療のサポート
☆看護目標は下記になります。
1. 支障が少ない日常生活が送れる援助
2. 最低限の援助でトラブルを防ぐ(清潔保持・危険防止)
3. 変化する症状に対応したケアを患者さんと一緒に考える
<症例①>
・90代 女性 DM C型肝炎
・隠居(高齢者家族と同居)
・受診理由
数年前視力低下、脊椎変形、腰痛があり、自力でフットケア困難になる。
爪白癬、ケアできずに伸ばしすぎて肥厚、変形あり
(受診時写真)
ケアの実際
1.聞き取り
困っていること → 歩くと爪を踏んで痛い。
靴下、靴が履きにくい(スリッパで受診)。
自分でどうなっているのか見えないし、足に手が届かないので切るのが怖い。
2.爪周囲の観察、確認、不要な角質除去
3.指の長さまで爪切り
4.食い込んで痛みがありそうな爪を切る
5.指に沿うようにやすりがけ
6.再度、爪周囲の観察、不要な角質除去
7.靴下がひっかからないか、疼痛はないか、歩行に変化がないか確認
8.第2趾の爪が母趾にあたっても傷にならないように調整して終了
9.痛みがなくなることや爪が伸びていたときとは違う部位が使えることによって歩行状態が変化するので転倒に注意するよう注意を促す。
10.立位で足の裏の感覚を自覚できるよう必要であればマッサージを追加する。
(同日終了時写真)
<症例②>
・90代 男性DM
・一人暮らし
・受診理由
視力低下、腹部がつかえる、脊椎変形腰痛あり自力でフットケア困難
巻き爪、肥厚、変形あり
(受診時写真)
ケアの実際
1.聞き取り
困っていること → ほとんど外出しないが靴を履くと爪全体が痛い。
靴下が引っかかる。
肥厚、巻き爪で自分で切れない。
2.爪周囲の観察、特に巻き爪の周囲の発赤、傷の確認、不要な角質除去
3.指の長さまで爪切り
4.食い込んで痛みがありそうな爪を切る
写真の\部位を皮膚を切らないように巻き爪用の爪切りで小さく一回で切る。
やすりを入れるための隙間なので大きく切らなくてよい。
巻き爪用爪切り
5.巻き爪を切った断端をやすりがけ
やすりがけのやり方
6.再度、爪周囲の観察、不要な角質除去
7.靴下がひっかからないか、疼痛はないか、歩行に変化がないか確認する
終了時写真
2例とも10年以上、足も生活も現状維持をしています。
看護としてできることはどのような状況であっても患者さんに沿い、今ここで、できるだけのケアを行うことだと思います。