Zancolliの分類
- 公開日: 2020/4/8
1.このスケールは何を判断するもの?
Zancolliの分類とは、元来、四肢麻痺における上肢機能再建を行うための分類法として開発されたスケールです。具体的には、上肢の筋肉の機能に対応する脊髄の髄節を細かく分類したものであり、主に頚髄損傷の部位を把握し、機能残存の程度を評価するために用いられています。
手指を含めた上肢は緻密な運動をするため、機能再建を行うにはより詳細に残存した機能を把握する必要があります。そのために生み出されたのがZancolliの分類であり、頚髄神経が司る上肢の筋肉の運動機能を「徒手筋力検査(MMT)」の結果に基づいて分類します。その結果によって、頚髄のどのレベルにダメージが生じているのかがわかります。そして、その後の日常生活への支障などを予測することもできるため、必要なリハビリや支援などの計画を立てることが可能となります。
なお、近年では、評価する筋肉を8つに絞ることでよりわかりやすく明確な判定が下せるよう「改良Zancolli分類」が開発され、臨床の場で広く用いられています。
2.スケールはこう使う!
Zancolliの分類は四肢麻痺患者の上肢機能再建を行う際に活用すべく開発されたスケールです。しかし、実際は頚髄損傷患者の残存機能レベルを評価する際に用いられることが多いのが現状といってよいでしょう。
Zancolliの分類では、上肢の筋肉を12項目に分け、徒手筋力検査(MMT)の基準に従って評価を行います。具体的には、上腕二頭筋、腕橈骨筋、長短橈側手根伸筋、円回内筋、上腕三頭筋及び橈側手根屈筋、4・5指伸筋群、2・3指伸筋群、母指伸筋群、4・5指屈筋群、2・3指屈筋群、母指屈筋群母指球筋、浅指屈筋の12項目です。
C4〜C6BⅢまでの分類
上腕二頭筋 | 腕橈骨筋 | 長短橈側手根伸筋 | 円回内筋 | 上腕三頭筋・橈側手根屈筋 | |
---|---|---|---|---|---|
C4レベル | 0~2 | ||||
C5A | 3~5 | 0~2 | |||
C5B | 3~5 | 3~5 | 0・1 | ||
C6A | 3~5 | 3~5 | 2-~3 | ||
C6BⅠ | 3~5 | 3~5 | 3+~5 | 0~2 | |
C6BⅡ | 3~5 | 3~5 | 3+~5 | 3~5 | 両筋0~2、あるいは一方の筋3~5※ |
C6BⅢ | 3~5 | 3~5 | 3+~5 | 3~5 | 3~5 |
※上腕三頭筋と橈側手根屈筋の両筋がMMT0~2、あるいはどちらか一方の筋がMMT3~5かつ他方の筋がMMT0~2の場合にC6BⅡとなる
C7A〜C8BⅡまでの分類
4・5指伸筋群 | 2・3指伸筋群 | 母指伸筋群 | 4・5指屈筋群 | 2・3指屈筋群 | 母指屈筋群母指球筋 | 浅指屈筋 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
C7A | 3~5 | ||||||
C7B | 3~5 | 3~5 | 2-~3 | ||||
C8A | 3~5 | 3~5 | 3+~5 | 3~5 | |||
C8BⅠ | 3~5 | 3~5 | 3+~5 | 3~5 | 3~5 | 2-~3 | 0~2 |
C8BⅡ | 3~5 | 3~5 | 3+~5 | 3~5 | 3~5 | 2-~3 | 3~5 |
Zancolli E:Surgery for the quadriplegic hand with active, strong wrist extension preserved. A study of 97 cases.Clin Orthop Relat Res 1975;(112):101-13.より引用
例えば、上腕二頭筋の徒手筋力検査(MMT)の結果が0~2となった場合、分類に基づいてC4レベルの頚髄が障害されていることがわかるのです。また、このように頚髄損傷の状態を詳しく評価することで、その後に期待できる生活状況を推測することもできるため、長期的な支援に役立つスケールともいえます。
3.スケールを看護に活かす!
頚髄損傷では、ダメージを受けたレベルより下の脊髄も障害を受けるため重篤な神経症状を引き起こします。このため、今後の生活状況や予後を予測するためにも、どの頚髄レベルにダメージが生じているのかを把握するのは極めて重要と考えられます。
頚髄損傷の看護の場では、Zancolliの分類による損傷レベルを正確に把握し、考えられる合併症やリスクを念頭に入れることが大切です。例えば、上位頚髄の損傷では呼吸筋麻痺が生じる可能性があるため、呼吸状態を慎重に観察する必要があります。また、下部頚髄の損傷では自力での車いす生活が可能と考えられますが、排尿障害に起因する尿路感染症などに注意し、移乗の際の転倒などには十分に注意して見守りを行うことが必要です。
このように、患者さん一人ひとりに合わせたアセスメントを行ってリスクや予後を把握するようにしましょう。
引用・参考文献
1)Zancolli E:Surgery for the quadriplegic hand with active, strong wrist extension preserved. A study of 97 cases.Clin Orthop Relat Res 1975;(112):101-13.