実習記録がずれてしまう本当の理由
- 公開日: 2020/8/15
問題を理解して、はじめて答えは導かれる
いきなり、読む気が失せてしまう質問になってしまうかもしれませんが、ひとつ聞かせてください。小学校、中学校、高校、大学、ほか自動車学校や、資格やスキルを取得するための学校などで、いろんな試験を受けてこられたと思います。それらの試験で、あなたは問題を読まずに、答えを書いたことがありますか?
「あります」という方に興味津々で、お話を聞きたい気持ちでいっぱいなのですが、その気持ちは少し抑えることにしまして。多分ほとんどの方は、問題を読んで答えを書いていたと思うんですね。そもそも、問題を読まなければ答えは書けません。そうなんです。その通りなんです。問題を読むから、答えとして書くことが決まるわけです。つまり、正解を書くには、問題を正しく理解することが大前提になります。
小学生の頃、「あてはまるものを、四角で囲みなさい」のような問題の文章を「あては、まるものを」と読んでしまったせいで、まったく意味がわからず、まるなのか、四角なのか、子どもながら試験中にずいぶんと悩んだことを今でも覚えています。問題を正しく読むことができなければ、問われていることがわからないわけなので、問いに合った答えを導き出すのは難しくなります。
当たり前のことを、つらつらと書いてきましたが、実習記録になると、この当たり前のことがひっくり返されてしまうのです。
「実習記録が書けない……」それは答えばかりを気にしているから
実習記録は、これまでの学校での試験に置き換えると、記述式の解答用紙だといえます。問題があって、その問題の答えを書く用紙だということです。
な、はずなのですが、実習記録が書けないことで悩んでいる人の多くは、問題ではなく、答えばかりを気にしています。「何を書けばいいのか、わからない」というのは、「何を答えとしたらいいのか、わからない」ということです。
なぜ、このようなことが起こるのかというと、問題を理解できていないからです。文章能力とか、国語力とかの問題ではないのです。問題を読まないまま、答えを出そうとしているということに、そもそも無理があるのです。実習記録への教員や指導者から、「ずれている」とコメントされたことがあるのだとしたら、きっと問題の文章の意味を正しく理解できていないことが原因です。
仮に、5人の画像に関する問いがあったとします。次の5人の中から、男性をまるで囲みなさい、という問いに対して、女性を選んでいる場合は不正解ですし、四角で囲んでいる場合も不正解です。「次の5人」と言っているのに、まったく関係のない人を選んでしまうのも不正解です。なぜなら、問題に合った答えになっていないからです。問題からずれた答えになっているからです。実習記録も同じです。問題に合わない答えは、「ずれている」ことになります。
ずれない実習記録を書くには~アセスメントの場合~
例えば、アセスメント。アセスメントを書く記録用紙を、解答用紙だとすると、問題は次のようになります。
・どのような看護問題が考えられますか
・そのように考えた裏付けとなる情報(事実)はどれですか
・(看護問題があると判断した場合)、その看護問題は、何が原因で生じていると考えますか
これらの答えが、問われていることへの解答になります。つまり、アセスメントを書く記録用紙に「書くこと」です。これで、ずれないアセスメントになります。言い換えると、これが教員や指導者が「知りたいこと」です。
指導者の視点は「問題と答えの整合性」にある
とはいえ、書き直しが多くなると「教員や指導者が求めていることが、わかりません」と悩むことがあります。
教員や指導者が求めていること、というのは、教員や指導者が書いてほしいと望んでいる、個人的な願いや思いではないのです。教員や指導者に対して「何を書いてほしいんだろう」と、相手の頭の中をのぞいて、気持ちを知りたいと思い始めると、もう混乱の始まりです。相手の感情は、手がかりなしに、そんなかんたんに正しく読み取れませんから。
教員や指導者が知りたいことは、問いに対する答えを出すことができているかどうか、です。アセスメントを書く用紙には、アセスメントするための問いに対する答えが書けているか。看護計画を書く用紙には、看護計画を立てるための問いに対する答えが書けているか。教員や指導者は、ここを見ています。
記録用紙に応じた問題を正確に捉えて実習記録も攻略!
ずれない実習記録を書くために大事なことは、解答用紙である記録用紙に何を書くのか、の前に、何について問われているのか、問題を正しく理解することです。それぞれの記録用紙には、それぞれ異なる「問題(問い)」があります。いつも、「何を書けばいいのか、わからない」という悩みに振り回されている場合、答えの前に問題(問い)を確認してみるとよいでしょう。
イラスト/たかはしみどり