第20回 胼胝のケア
- 公開日: 2020/7/7
「やってみよう!フットケア」も20回目となりました。少しは日常のケアに役立っておりますでしょうか?
今回は皮膚のトラブルでよくみられる胼胝(べんち=たこ)のケアです。
胼胝はどうしてできるのでしょう?
一般的には加重と摩擦による皮膚の硬化、いわば皮膚の防衛反応としてできることが多いようです。実際に私の個人的な経験ですが、右側アキレス腱を断裂し、手術してギプスをつけ、その後数か月間装具を装着して右足底に加重をかけない生活を約半年しました。
それまでナースサンダルを履いていて右足の人差し指のつけ根に胼胝がありましたが右脚を使わないうちにすっかりきれいになりました。そのかわり、左足の加重がかかった場所に新たに胼胝が出現しました。
術後2年くらいで両側同じように体重がかけられるようになると胼胝はもとの右足にもどりました。歩き方のくせはなかなか変わらないようです。
これらを踏まえ、看護師ができる胼胝のケアを考えていきたいと思います。手術を受けた患者さんだけではなく疾患や加齢によって身体の使い方を変えざるを得なくなった方もこれから足の使い方が変わるであろうと予測できる方も対象になります。足裏だけでなく身体全体のバランスの観察を十分に行い、今後のトラブル予防もサポートできるとよいと思います。
1.胼胝とは?
皮膚は、身体の一番外側にあり、外部からの刺激から身体を守る働きをしています。
摩擦や圧迫などの外部刺激が皮膚の局所に加わり続けると、防御反応としてケラチンをたくさん作りその部位を厚くして刺激から守ろうとします。これが性状、性質によって「胼胝」「鶏眼」となるのです。胼胝、鶏眼ともに、皮膚の角質層が厚くなる状態で鶏眼には中心部に芯があります。外部からの圧迫やずれで皮下組織の損傷や離断が起こりやすい状態になっています。
靴などの履物の直接の刺激や圧迫、靴の中で足がずれることにより起こる摩擦が継続的に皮膚に与えられ角質が厚くかたくなり盛り上がったものを胼胝といいます。
胼胝は表面が見た目には黄色みがかった厚い皮膚が比較的広い範囲で面としてできることが多く、骨が下にあるので外側に向かって厚くなっていきます(図1)。
図1 胼胝
胼胝は指の付け根、指の先、中足骨部などにみられ、痛みは多少ありますが痛みよりは感覚が鈍くなり違和感があります。
2.胼胝のケア、予防
1.できる原因を取り除く
・圧迫や摩擦を起こしている履物などの観察
・外反母趾や開張足などの変形や歩き方、姿勢のくせとの関連を考える
2.保護
・痛みが少ない軽いものは市販されている保護パッドなどを短時間使用する
・厚みのあるソックスで保護する(靴下の選び方は第9回を参照してください)。
3.保湿
・初期の段階であれば保湿剤を塗布することにより肥厚した角質を軟らかくして圧迫を軽減できる。
4.肥厚した部分を削る
・肥厚が強く疼痛や日常生活に支障があるようなら電動やすり(グラインダー)やメス刃、コーンカッター、紙やすりを用いて肥厚した部分を削り、圧迫を軽減する。
※コーンカッター(写真左)やメス刃を使用するときはなるべく皮膚に平行に軽くあて、すべらせるように少しずつ硬い皮膚の5、6割を目安に削ります。出血に注意!
刃物に自信のない方はやすりで少しずつ、無理せず削りましょう(やすりのかけ方は第8回角質ケアを参照してください)。
※患者さんは市販のサリチル酸製剤(スピール膏)を貼付したり、かみそりやカッターで自己処理をされることがあります。サリチル酸製剤は胼胝の大きさより小さめに歩行時ずれないようにし、刃もので傷つけないよう指導が必要です。
間違うと大変!!
胼胝や鶏眼とともに見られる角化異常に疣贅(いぼ)があります。疣贅はウイルスによってできたもので、疣贅ができている皮膚は毛細血管が増殖しているため削ると出血します。
見分け方は
①表面がざらざらして崩れやすい。
②加重部位でない場所にある。
③小さいものがたくさんある。
③横からつまむと疼痛がある。
これらがあったら疣贅を疑いましょう。決して削ったりしないように、出血とともにウイルスが拡散されます。疣贅の場合は、削らなければ様子観察でもかまいませんが、治療を希望するのであれば皮膚科受診を勧めます。