第9回 在宅経腸栄養法
- 公開日: 2015/10/1
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経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント
はじめに
在宅経腸栄養法(Home Enteral Nutrition,HEN)の大前提として、まず対象の患者さんが腸が安全に使用できることが必要です。食事が十分摂取できないことにより、入院期間がいたずらに遷延する症例や、在宅においても栄養摂取が不十分で低栄養状態となる危険性のある症例などがHENの適応となります。
経腸栄養法は静脈栄養法に比べ、管理が簡便かつ安全であり、重篤な合併症も少ないのが特徴です。静脈栄養でのbacterial translocationや免疫能の低下も回避でき、経腸栄養法の選択が推奨されます。在宅の場合も腸管が安全に使用できれば、HPNではなくHENを選択すべきです。
1、HENの適応
HENの適応としては、[1]摂食・嚥下障害:脳血管障害、神経筋疾患などによる嚥下障害症例、[2]炎症性腸疾患(クローン病)、短腸症候群症例、[3]食事が十分摂取できない消化器手術後症例(食道癌・胃癌などの術後)、[4]食事が十分摂取できない進行・再発癌患者などです。
このうち、もっとも症例数が多いのは、脳血管障害による嚥下障害症例です1)。その多くは寝たきりの高齢者で、経鼻的に胃にチューブを挿入するか、胃瘻を造設して、在宅経腸栄養を行っています。脳血管障害に比較して頻度としては低いですが、炎症性大腸疾患、とくにクローン病は、重要なHEN適応症です1)。経腸栄養剤を飲むこともありますが、患者さん自身で経鼻的にチューブを挿入し、夜間に栄養剤を注入することが勧められています。
癌患者に対しての在宅経腸栄養は、食事が十分摂取できない消化器がん手術後患者や進行・再発癌患者に対して行われます。現在でも消化器外科領域の手術後栄養管理として、多くの症例で完全静脈栄養法(TPN)が施行されていますが、最近、より生理的な栄養法である経腸栄養が見直され、術後栄養法としても再認識されてきました。
腹部手術時に経腸栄養カテーテルを留置し、食事量が少ない症例にはHENを行うことにより、QOLを保つことができます2)。一方、癌が進行した状態で、食事摂取が不十分で低栄養状態になる危険性のある患者に対して、経鼻栄養チューブやPEGによる胃瘻から、在宅で経腸栄養を行うこともあります。
HEN導入に際しては、患者および介護者の準備、かかりつけの在宅主治医、訪問看護ステーションとの連携、在宅用の器具の調達など、幅の広い準備が必要です。