第10回 PICCとは?看護師のための輸液講座
- 公開日: 2009/11/10
輸液管理に関する最近の話題としては、どうしても、このPICCを取り上げる必要があります。まだそれほど普及してはおりませんが、償還価格の問題が解決すれば、一気に使用する施設が増えるはずです。
PICCは何の略?
このPICC、英語ではperipherally inserted central venous catheterで、頭文字をとってPICCと呼ばれています。この英語の全部の頭文字をとるとPICVCとなりますが、Vは省略してPICCと呼ばれています。また、peripherally inserted central catheterと記載されていることもあります。それでは日本語は?『ピック』です?とりあえず、『末梢挿入式中心静脈カテーテル』という日本語が一番よく使われているようです。カタカナで書くと『ピック』ですが、英語も知っておいてください。私は、上腕から挿入するPICCを、『上腕PICC』と呼ばせていただいています。
PICCとは?
PICCについて簡単に説明しますと、肘の静脈(尺側皮静脈、橈側皮静脈、肘正中皮静脈など)から挿入し、先端を中心静脈(上大静脈)に位置させるカテーテルのことです。非常に細く軟らかいカテーテルです。上腕の部分でこれらの静脈を穿刺して挿入する方法が『上腕PICC』ということになります。
PICCの利点
PICCの利点の主なものは、患者さんが怖くない、痛くない、安心して手技を受けられる、という点が一番重要です。また、術者にとっては、気胸などの重大な合併症が起こらない、という安心感があります。介助するナースにとっても、重大な合併症が起こらない方法である、というのは、重要です。CVCを挿入して、後で、気胸を起こしていることがわかって胸腔ドレナージをしなくてはいけないとか、血圧が下がったとか、患者さんが苦しんでいる、とか、そういう問題が起こらないというだけで安心だと思います。
肘から挿入するPICC
実は、いわゆるPICCと呼ばれる肘静脈を穿刺して挿入する方法については、日本で最初にこのPICCを使用したのは私で、大阪府立病院におりました1994年のことです。使用経験についても私が日本で最初に報告しています。もちろん、使用成績を最初に報告したのも私です。(井上善文ほか:Groshong PICCの使用経験 外科治療76:225-231, 1997)(井上善文ほか:Groshong peripherally inserted central venous catheter(PICC):管理の実際と問題点 JJPEN 21:137-145, 1999)。
もともと、肘の静脈から中心静脈へとカテーテルを挿入する方法は、30年以上前、TPNが始まる前から実施されていました。
しかし、当時のカテーテルは材質として硬かったため、先端が上大静脈の壁に当たっていると、腕を動かす(外転)という動作によってカテーテル先端が数センチ単位で動き、これによって静脈壁穿孔という合併症が起こることが知られるようになり、徐々に行われなくなっていました。ところが鎖骨下穿刺法に伴う合併症としての気胸などが問題となり、もっと安全にカテーテルを挿入する方法はないか、ということで見直されるようになりました。おりしもカテーテルを作る技術が向上し、細くて軟らかい、血管刺激性の低い材質でできたカテーテルを、肘から挿入することができるようになったのです。
そこで、全く新しい概念としてPICCというカテーテルが使用されるようになったということです。アメリカでは訓練を受けて資格を有する看護師さんが挿入することができるようにもなっており、これもPICCの普及に拍車をかけたようです。
この記事を読んでいる人におすすめ
CVポート・CVカテーテル-造設・挿入と観察のポイント
【関連記事】 * ヘパリンロックとは? 正しい手順・量・フラッシュについて * 【連載】ナースのための消化器ケアに役立つ基礎知識 * 【マンガでわかる!】CVカテーテル、なぜ医師はピリピリする? CVポートとは CVポート(皮下埋め込み型中心静脈ア
輸液の看護|輸液とは?種類、管理、ケア
輸液ケアを行うときに、知っておきたい知識が得られる記事をまとめました。 輸液ケアとは 輸液ケア(輸液療法)の目的には、主に蘇生、生命の維持、栄養の補給の3つがあります。輸液は開始後ずっと同じものを投与しつづけるわけではなく、病態や疾患の悪化・回復に合わせて、
第17回 中心静脈カテーテル先端の適正位置
輸液・栄養管理を有効に実施するために重要なことの一つは、投与経路を安全に作成して維持し、目的とする輸液や栄養を確実に投与することです。輸液の場合は、血管内にカテーテルが確実に入っていればいいのですが、栄養輸液を投与する場合は、栄養輸液自体の血管壁への刺激が問題になります。そう
第1回 カテーテルの種類(中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテルについて)
カテーテルの分類 この輸液管理のセッションを担当することになりました、医療法人川崎病院外科の井上善文です。よろしくお願いします。 輸液管理を理解するためには、輸液を投与するためのカテーテルについて知っておかなければなりません。 そこで、第1回のタイトルとしては『カテ
第14回 カテーテル挿入時の高度バリアプレコーション
カテーテル関連血流感染症(catheter-related bloodstream infection:CRBSI)が院内感染症の重要な要因であることが認識されるようになり、さまざまな対策が講じられるようになってきました。このCRBSIという用語ですが、現在、CLABSI(c