1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. カテーテル
  5. 中心静脈カテーテル
  6. 第10回 PICCとは?看護師のための輸液講座

【連載】看護師のための輸液講座

第10回 PICCとは?看護師のための輸液講座

  • 公開日: 2009/11/10
  • 更新日: 2020/3/26
  • # 注目ピックアップ
  • # 中心静脈カテーテル

輸液管理に関する最近の話題としては、どうしても、このPICCを取り上げる必要があります。まだそれほど普及してはおりませんが、償還価格の問題が解決すれば、一気に使用する施設が増えるはずです。



PICCは何の略?

このPICC、英語ではperipherally inserted central venous catheterで、頭文字をとってPICCと呼ばれています。この英語の全部の頭文字をとるとPICVCとなりますが、Vは省略してPICCと呼ばれています。また、peripherally inserted central catheterと記載されていることもあります。それでは日本語は?『ピック』です?とりあえず、『末梢挿入式中心静脈カテーテル』という日本語が一番よく使われているようです。カタカナで書くと『ピック』ですが、英語も知っておいてください。私は、上腕から挿入するPICCを、『上腕PICC』と呼ばせていただいています。

PICC説明図

PICCとは?

PICCについて簡単に説明しますと、肘の静脈(尺側皮静脈、橈側皮静脈、肘正中皮静脈など)から挿入し、先端を中心静脈(上大静脈)に位置させるカテーテルのことです。非常に細く軟らかいカテーテルです。上腕の部分でこれらの静脈を穿刺して挿入する方法が『上腕PICC』ということになります。

PICCの利点

PICCの利点の主なものは、患者さんが怖くない、痛くない、安心して手技を受けられる、という点が一番重要です。また、術者にとっては、気胸などの重大な合併症が起こらない、という安心感があります。介助するナースにとっても、重大な合併症が起こらない方法である、というのは、重要です。CVCを挿入して、後で、気胸を起こしていることがわかって胸腔ドレナージをしなくてはいけないとか、血圧が下がったとか、患者さんが苦しんでいる、とか、そういう問題が起こらないというだけで安心だと思います。

肘PICCの利点と欠点

肘から挿入するPICC

実は、いわゆるPICCと呼ばれる肘静脈を穿刺して挿入する方法については、日本で最初にこのPICCを使用したのは私で、大阪府立病院におりました1994年のことです。使用経験についても私が日本で最初に報告しています。もちろん、使用成績を最初に報告したのも私です。(井上善文ほか:Groshong PICCの使用経験 外科治療76:225-231, 1997)(井上善文ほか:Groshong peripherally inserted central venous catheter(PICC):管理の実際と問題点 JJPEN 21:137-145, 1999)。
もともと、肘の静脈から中心静脈へとカテーテルを挿入する方法は、30年以上前、TPNが始まる前から実施されていました。

PICCの走行

しかし、当時のカテーテルは材質として硬かったため、先端が上大静脈の壁に当たっていると、腕を動かす(外転)という動作によってカテーテル先端が数センチ単位で動き、これによって静脈壁穿孔という合併症が起こることが知られるようになり、徐々に行われなくなっていました。ところが鎖骨下穿刺法に伴う合併症としての気胸などが問題となり、もっと安全にカテーテルを挿入する方法はないか、ということで見直されるようになりました。おりしもカテーテルを作る技術が向上し、細くて軟らかい、血管刺激性の低い材質でできたカテーテルを、肘から挿入することができるようになったのです。

グローションPICC

そこで、全く新しい概念としてPICCというカテーテルが使用されるようになったということです。アメリカでは訓練を受けて資格を有する看護師さんが挿入することができるようにもなっており、これもPICCの普及に拍車をかけたようです。

肘の静脈から挿入したPICC

肘PICCの挿入方法

PICCキット

PICCの挿入は比較的容易です。上腕部を駆血し、肘の静脈が、見て、あるいは触れて十分な太さがあると判断できたら、ほぼ確実に挿入することができます。

非常にPICCが挿入しやすい血管

橈側皮静脈から挿入することも可能ですが、鎖骨下静脈と合流する部分でひっかかって上大静脈まで到達できない場合がありますので、できたら肘正中皮静脈か尺側皮静脈を用いた方が確実です。成人男性では40~45cmで上大静脈の適正位置に先端を留置することができます。挿入に際しては、もちろん鎖骨下穿刺などを行う場合と同様に消毒し、高度バリアプレコーションを採用します。内頚静脈への誤挿入を予防するため、患者さんには顎を穿刺側の方にくっつけるような感じで首を曲げてもらいます。事故抜去予防のために穿刺部位で縫合固定し、スタットロックという器具を用いて固定します。

肘PICCの合併症と管理上の問題

穿刺時の合併症はほとんどありません。しいて挙げるとすると、動脈穿刺や、穿刺部位からの出血です。動脈穿刺は、肘の部分で動脈の拍動を触知しながら穿刺することで避けることができるでしょうし、穿刺部位からの出血は出血傾向がない限り圧迫により止血できます。皮下血腫という合併症もありますが、通常は自然に消褪します。鎖骨下穿刺で挿入した場合よりもカテーテル敗血症発生頻度が低い、その理由は、胸部に比べて肘の体温が低いからだ、という説もありますが、エビデンスとして認められたものではありません。もちろん気胸や血胸といった重篤な合併症は起こるはずもありません。この点が、最近、ピックが注目されている理由です。 
しかし、管理上の問題点もいくつかあることは知っておいて欲しいと思います。まず、ある程度の頻度で静脈炎が発生します。これは、通常の血栓性静脈炎ではなく、非血栓性静脈炎と呼ばれています。カテーテルの材質に対する反応としての静脈炎です。血栓性静脈炎の場合には感染を伴うことが多いので抜去しなければなりませんが、ピックの非血栓性静脈炎の場合には自然に炎症が治まってきますので(通常は1週間以内)、抜去せず、そのままの状態で継続して使用することができます。しかし、痛みが強い場合には抜去しなければならないこともあります。可能ならば、消炎鎮痛剤を投与したり、冷シップをしたりして、炎症が消褪する時期を待ちます。また、肘を曲げると滴下が不良になることも、実は、重大な問題です。肘から挿入しているので、肘を曲げるとカテーテルが屈曲して、滴下が不良になるということで、考えたら当たり前の現象です。特に、一定の速度で投与しなければならない場合には肘を固定する必要があることもあります。

上腕PICC

私は、この『肘を曲げると滴下が悪くなる』『静脈炎の発生頻度が高い』という理由で、肘から挿入するPICCは、確実に安定した管理をある程度の長期間行う症例に対しては使用しないことにしておりました。かつては、鎖骨下穿刺を第一選択としておりました。しかし、エコーガイド下に上腕から挿入する方法『上腕PICC』をアメリカに習いに行き、その技術を修得してからは、ほとんどの症例に対して採用しています。

静脈穿刺用エコー

静脈穿刺用エコー②

肘を曲げても滴下不良は起こらないし、静脈炎も発生しません(250例の使用経験で1例だけ静脈炎が発生しました)。肘PICCの利点に加えて、これらの欠点を克服できる方法ですので、CVC挿入方法として第一選択になる、第一選択とすべき方法です。

上腕PICC

上腕PICCの挿入方法

穿刺挿入方法としては、まず、上腕を腋下にできるだけ近い部分で駆血し、エコーで穿刺する静脈を検索します(図8)。ほぼ腋下と肘の中央くらいが適切な位置と言えるでしょうか。上腕静脈、尺側皮静脈など、エコープローべで圧迫することによって簡単に同定することができます(図9)。静脈は圧迫すると凹みますが、動脈は凹まない、という所見で判断します。挿入時には高度バリアプレコーションを行いながら、通常の中心静脈カテーテル挿入と同様の方法で行います。

穿刺風景

いわゆるセルディンガー法です。肘からの挿入方法の応用と考えていただくと、すぐに方法になれるはずです。現在までに約250例に挿入し、重篤な合併症は全く発生しておりません。もちろん、気胸や血胸などの合併症は起こすことができない、というのは、解剖学的にもおわかりだと思います。とにかく安全な方法であることは間違いありません。

エコーガイドの下の穿刺

上腕PICCの管理方法

管理方法は、通常の中心静脈カテーテルと同様です。ドレッシング交換は曜日を決めて定期的に行う(当施設では週1回)、皮膚刺入部の消毒はエタノールで皮脂を除去してからポビドンヨードで行う、輸液ラインはフィルター・側注用Y字管が組み込まれた一体型のものを用いる、カテーテルとの接続にはI-systemを用いる、などが主なものです。PICCを使えば感染率が低下する、そう考えた管理を行うことは、誤った考え方です。PICCでも、輸液や輸液ライン、ドレッシング管理などをいい加減にやれば、容易に感染することを理解しておく必要があります。

上腕PICC

上腕PICCは普及させるべき方法

いずれにせよ、PICCは患者さんにとっても、医療者にとっても、安全で怖くない、いい方法です。今後、CVC挿入の第一選択となる方法であることは間違いありません。1994年に私が、大阪府立病院時代に、本邦で最初にこのピックを使用してから、結構普及しました。しかし、その後、使用頻度は低下しました。その理由は、ピックの償還価格が非常に安く設定されてしまった、ということです。現在、その償還価格についての再評価をする動きがあります。この問題が解決すれば、爆発的に使用症例が増えるはずです。とにかく安全なCVC挿入方法であることは間違いありませんから。

新着

[動画]排便のメカニズムを知って排便管理に役立てよう|第29回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会【PR】

排便トラブルは患者さんにとってもケアする側にとっても負担となります。より良い排便コントロールを行うには、排便のメカニズムを知っておくことが大切です。その知識をもとに便の性状から、適切な食事管理や下剤による調整を行います。この動画では、排便のメカニズムや排便コントロールについてわか

2020/11/17