【連載】スペシャリストに学ぶ! がん患者さんの皮膚障害のケア
③がんの薬物療法中に起こりうる皮膚障害【PR】
- 公開日: 2021/3/26
がんの薬物療法はさまざまながん種に行われています。用いられる薬剤もさまざまあり、多彩な副作用が生じることもあります。副作用のなかでも皮膚障害は、患者さんのセルフケア支援やきめ細かな観察など看護師がかかわる場面が多くあります。今回は、がんの薬物療法中にどのような皮膚障害が発症するのかを解説します。
大腸がんの治療中にざ瘡様皮疹と爪囲炎を発症した60歳代男性の事例を紹介します。皮膚障害が悪化したときにはしばらく抗がん薬を休薬して症状の改善を図り、また投薬を再開するという形で治療を続けていました。
この患者さんは、皮疹が出現し外見に変化が生じていても「日常生活にはあまり支障がない」と言うのです。これは60歳代以降の高齢男性にみられがちな傾向で、石けんで洗顔する、皮膚を保湿するなどの習慣がもともとないことが影響し、スキンケアへの意識が向かないのです。女性は皮膚に関する意識が高く、保清や保湿は当たり前にできることが多いのですが、性や年齢によっては、スキンケア行動を生活のなかに取り入れてもらうこと自体が難しい患者さんがいることを学びました。
がん治療における皮膚障害とは
がんの薬物療法で用いられる薬剤は、作用機序により細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などに分類されます。抗がん薬の副作用として生じる皮膚障害も薬剤によって異なります。
細胞障害性抗がん薬
がん細胞とともに細胞周期が短い細胞が障害されるため、皮膚や爪に影響を受けやすく、手足症候群、色素沈着、皮膚の乾燥、爪の変化などの症状があらわれます。
分子標的薬
EGFR阻害薬に特徴的なざ瘡様皮疹や爪囲炎、皮膚の乾燥・亀裂・掻痒、まつげの変化などのほか、マルチキナーゼ阻害薬では手足症候群が高い頻度で必源します。発症時期は、細胞障害性抗がん薬よりも投与早期からみられます。
免疫チェックポイント阻害薬
皮膚の乾燥や掻痒の頻度が高く、進行すると発疹、メラノーマでは白斑が生じることがあります。発症時期については個人差が大きいのが特徴的です。
主な皮膚障害の症状と経過
手足症候群
手のひらや足の裏になんとなくピリピリ、チクチクするような違和感や不快感が生じ、細胞障害性抗がん薬の場合は進行すると痛みやびまん性の発赤が対称性に出現します。皮膚がテカテカしてみえることが多く、さらに悪化すると水疱が生じてきます。
分子標的薬の場合は、かかとや足趾の付け根部分など圧力がかかるところに発症することが多く、水疱や皮膚が乾燥し角化が進んでいるところに紅斑を伴うことがあります。荷重部位に限局してみられます。
ざ瘡様皮疹
分子標的薬であるEGFR阻害薬の治療で特徴的に起こります。毛穴に一致した発赤疹で、かゆみを伴うことがあります。頭部、顔面を中心に前胸部、背部、下腹部、四肢などにも生じます。
爪囲炎
ざ瘡様皮疹と同じくEGFR阻害薬で生じやすい症状で、爪の周囲に炎症が起き、紅斑や炎症が生じます。陥入爪ができやすい部分に亀裂が生じて痛み、滲出液や出血が固まって痂皮をつくるようになると痛みも激しくなります。進行すると爪の側縁の上に腫れた上皮や肉芽が盛り上がり、強い痛みで手作業ができなくなったり、靴を履けなくなったりします。
皮膚障害の予防とケアの考え方
抗がん薬による皮膚障害を予防するためのケアの基本は、抗がん薬の種類に関係なく皮膚の保湿・保護・清潔です。分子標的薬では皮膚の乾燥や亀裂が起こりやすいため、かかとなどに角化が進んでいるようであれば、治療開始前に除去しておくことも必要です。
スキンケアの習慣がなかった患者さんの場合、慣れないことをどれだけ生活に組み込めるかが鍵となります。患者さんの生活状況を把握しながら、その生活に合わせて指導することが大切です。意識づけができるように、無理にならないよう、過度にならないような指導を心がけています。
保湿については、治療開始時に朝晩2回、十分な量の保湿剤を使うよう指導しています。保湿剤のクリームやローションは、適量を使えるようにクリームは第一関節のところまで出して手のひら2枚分に塗り広げるというように具体的に示しています。実際に規定量を塗布してみるとかなりしっとりする感じが実感でき効果的です。
皮膚障害がある程度進んだ場合、重症度に応じて副腎皮質ステロイドの外用薬を使っています。手足症候群では、発赤や疼痛が生じ日常生活に差し支えるようになったら使用を開始し、Gradeに応じてステロイド外用薬のランクを上げることもあります。ざ瘡様皮疹では、抗がん薬の治療開始時に保湿剤とともに処方しています。保湿などの基本的ケアの指導に加え、「顔に皮疹が出た時点で塗ってください」のように、使用のタイミングについても指導しています。
外来の短い診察時間のなかで、医師が皮膚や足の指まで十分にみるのは難しいのが実情です。顔や手のようにみえるところから観察し、前胸部や背部に出ていないか、指に絆創膏が貼ってあるなら爪囲炎や亀裂はないか足の指に生じていないかと考えて、患者さんに尋ね、きめ細かく患部をみることも看護師の重要な役割です。
皮膚障害に対する意識や受け止め方は、性や年齢によっても違いがみられます。看護師は、患者さんの気持ちを受け止めつつ、生活にどのような影響を与えているかを把握し、治療やケアにつなげていくことが大切だと思います。
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がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ
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