【連載】スペシャリストに学ぶ! がん患者さんの皮膚障害のケア
②放射線皮膚炎予防ケア・発症後の実際【PR】
- 公開日: 2021/1/31
放射線皮膚炎を悪化させないためには、予防的ケアが重要になります。どのように行えばよいのか、実際の取り組みについて紹介します。
40歳代女性の舌がんの患者さんにかかわる機会がありました。仕事をバリバリこなし、外見にも大変気を遣っている方で、傷跡を残したくないとおっしゃっていました。術後に放射線療法と化学療法を併用した治療を行うため、海外の文献で学んだ予防的ケアについて口腔外科の医師とも相談し、実践することにしました。60Gyの放射線照射を受けましたが、わずかな発赤と少しの乾燥がみられた程度で、grade1の皮膚障害に抑えることができました。
この事例から、しっかり対策をすることで皮膚炎は予防できることを実感しました。
予防的ケアの考え方
放射線治療を受ける患者さんにとっては、予定された線量の照射を完遂することが何より重要です。皮膚炎の悪化で治療が中断されるような事態は避けなければなりません。放射線治療が決まった時点で予防的スキンケアを始めるのが理想的ですが、実際には治療開始の1週間くらい前から開始することもあり、この点は課題の一つと思っています。
放射線治療のゴール → 放射線治療が完遂すること
放射線皮膚炎予防的ケアのゴール → Grade 3以上の皮膚炎を発症させないこと
放射線治療終了後のゴール → 急性放射線皮膚炎が治癒すること
予防的ケアの実際
1.観察
照射が開始されたら、照射部位の皮膚だけでなく背面側もよく観察します。あらかじめ患者さんがどのようなセルフケアを行っているか具体的に把握しておきます。皮膚炎が生じたとき、保湿剤の選択が適切でない、塗る量や回数が少ないなどの問題が見つかることも少なくありません。どんな衣服を着ているか、衣服による摩擦などの問題がないかなども確認しておきます。
2.保湿
<保湿剤の選択>
保湿剤はエモリエントとモイスチャライザーに分けられます。エモリエントは、皮膚から水分が蒸散しないようにフタをするもので、主に油性成分でできています。モイスチャライザーは、その成分が角質の水分と結合することで水分を保持するもので、天然保湿因子などを含む保湿剤です。
当院では、モイスチャライザーとしてのジェルまたはローションに、エモリエント効果を持つクリームを重ねて使っています。ワセリンなど硬くて伸びが悪いものは、塗るときに摩擦による刺激が加わるので薦めていません。また油分が多いものは、照射時に保湿剤によってできる膜の厚みが問題になります。放射線の照射はとても繊細で、皮膚に残った保湿剤の厚みでピークの位置が変わり、それが皮膚炎発生の要因になるのです。保湿剤の油分が厚く残らないように、エモリエントもクリーム系の基剤のものを選ぶとよいと思います。同様の理由で、ヒアルロン酸も粒子が粗く皮膜が厚くなるため、ヒアルロン酸が入った保湿剤は使いません。また金属を含む化粧品は、放射線が散乱してしまうので禁止しています。
<保湿の仕方>
モイスチャライザーとエモリエント、2種類の保湿剤を紹介し、患者さんに購入していただいています。それを使って1日に4〜6回、生活習慣に合わせて塗るよう指導します。私たちの経験では、1日3回以下では予防効果は不十分だと感じています。乾燥が強い人はさらに頻回に塗るようにお伝えします。量が少ないと広げるために皮膚を必要以上に摩擦することに繋がりかねないため、多めくらいの十分な量を、擦らずに塗るようにします。
3.保清
皮膚の保清も大切です。照射部位の皮膚は脆弱になっているので、弱酸性皮膚洗浄剤をよく泡立て、泡を転がすように優しく洗います。その後、柔らかいタオルで押さえ拭きし、速やかに保湿剤を塗布することが大切です。入浴は最も水分を補給する機会になるため、その水分を蒸散させないことがポイントです。男性の髭剃りの際、カミソリは刺激になるので電気シェーバーを使うようにします。
4.着衣
着衣は綿など柔らかいものにします。病院で貸し出す寝巻きは縫い目などが固く刺激になってしまうことがあるので注意が必要です。また麻や化学繊維は擦れて刺激になり、痒みが生じて掻くという行動を惹起してしまうので望ましくありません。
発症後の経過と治療・ケア
最近では、頭頸部がんに対して2門照射や4門照射などの固定照射だけでなく、トモセラピー等を用いた強度変調放射線治療も増えています。強度変調放射線治療を行った場合は、grade3の皮膚炎が発症する例がしばしばあります。固定照射の場合も同様にありますが、予防的スキンケアを適切に行うことで、grade3の進行を遅らせたり、抑えたりすることができます。とはいえ治療をしている間は皮膚炎を治癒させるのは困難です。放射線治療中のケアの目標は、強度変調放射線治療の場合も固定照射の場合のいずれも、皮膚障害を悪化させないこと、次のgradeに進行するのを遅らせることがケアの目標になります。grade 1の状態で見つけたら保湿を強化し、grade 2への進行を遅らせます。
grade 2でびらんが生じた場合は、保湿剤に加え、副腎皮質ステロイド外用薬など消炎作用のある薬剤の併用も必要です。創傷被覆材は照射のたびに剥がすことになるため使用は望ましくありません。傷を保護し滲出液をコントロールして痛みを緩和し、乾燥防止を図り悪化を防ぎます。
皮膚炎が発症したら、できるだけ早く主治医や放射線科医などの医師や専門看護師・認定看護師等に相談したほうがよいでしょう。また、患者さんへの指導方法も見直す必要があるかもしれません。
基本的に放射線皮膚炎は、放射線治療が終われば治っていきます。終了時にびらんなどの創傷がある場合は治療方針を創傷治癒に切り替え、創傷被覆材や軟膏類なども積極的に使用して治療します。創傷治癒後も皮膚の乾燥は続くことがあるため、乾燥が落ち着くまではしっかり保湿を続けることが大切です。
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