【連載】スペシャリストに学ぶ! がん患者さんの皮膚障害のケア
⑤ざ瘡様皮疹、爪囲炎予防のスキンケア【PR】
- 公開日: 2021/3/30
今回は、分子標的薬の代表的な副作用であるざ瘡様皮疹と爪囲炎について予防ケアと発症後の対応について、予防ケアと発症後の対応について解説します。
大腸がんのEGFR阻害薬治療中にざ瘡様皮疹を発症した30歳代女性の患者さんがいました。スキンケアはしっかりしていましたが、顔にひどい皮疹が出て、かなり気にしていました。皮疹がひどいときに休薬し、何回か休薬したところで皮疹が落ち着いたため、患者さんはホッとしていました。病状から薬物療法を継続する必要があったので、皮疹が治まったら薬物療法を再開することになりました。
看護師は、患者さんが皮膚症状についてどんな思いを抱えているのか、休薬することで病状が進行するのではといった不安について丁寧に耳を傾けました。アピアランスケアの専門スタッフとも情報を共有しながら、ともに支援するよう心がけました。
ざ瘡様皮疹の経過と予防・治療・ケア
ざ瘡様皮疹の経過毛穴に一致した紅色丘疹や膿疱が、まず顔に出現する傾向があります。紅色丘疹や膿疱が全身の体表面積の10%未満を占めるようになったのがGrade 1、10〜30%がGrade 2、30%を超えて中等度〜高度の症状を伴い日常生活に支障が出るようになったのがGrade 3です(表1)。抗がん薬投与開始後はじめの数週間の症状が最も重く、その後は落ち着いていく傾向がありますが、治療中は症状の改善と増悪を繰り返すこともあります。
定義 | 典型的には顔面、頭皮、胸部上部、背部に出現する紅色丘疹および膿疱 |
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Grade 1 | 体表面積の<10%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない |
Grade 2 | 体表面積の10-30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない;社会心理学的な影響を伴う;身の回り以外の日常生活動作の制限;体表面積の>30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、軽度の症状の有無は問わない |
Grade 3 | 体表面積の>30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、中等度または高度の症状を伴う;身の回りの日常生活動作の制限;経口抗菌薬を要する局所の重複感染 |
Grade 4 | 生命を脅かす;紅色丘疹および/または膿疱が体表のどの程度の面積を占めるかによらず、そう痒や圧痛の有無も問わないが、抗菌薬の静脈内投与を要する広範囲の局所の二次感染を伴う |
Grade 5 | 死亡 |
ざ瘡様皮疹の予防ケア
ざ瘡様皮疹の予防ケアの基本は「保湿と清潔」です。
保湿
保湿は最低でも朝晩2回しっかり行います。保湿剤は患者さんに合わせてローションやクリームを処方していますが、ほかにも自分に合ったもので、入手しやすく使いやすいものがあれば加えて使ってよいことを伝えています。
清潔
洗浄剤は今まで使っていたもので、患者さん自身にとって刺激にならないものであれば、どんなものでもかまいません。洗浄剤をしっかり泡立て、こすらずに泡で洗うようにします。化粧は、しっかり保湿したうえで普段通りしてかまいませんが、しっかり落とす必要があります。弱めのクレンジング剤で化粧が残ってしまうよりは、どのようなクレンジング剤を使ってもしっかり落とすことが大切であることを伝えるようにしています。
男性のヒゲは伸びたままにしていると皮疹が治りにくいため、しっかり剃るようにします。電気シェーバーを使い、皮膚に垂直に軽く当てるようにして剃っていきます。強く押しつけたり、押し付けながら滑らせると角質を傷つけるので注意が必要です。ヒゲ剃り後はローションやクリームでしっかり保湿します。
ざ瘡様皮疹発症後の治療・ケア
外来受診時の患者さんを観察し、顔や頭皮、前胸部や背部などにも出ていないか確認します。ある程度進行した場合は副腎皮質ステロイドの外用薬を使います。抗がん薬導入のはじめの段階で保湿剤とともにステロイド外用薬を処方し、顔に皮疹が出た時点で塗布するように伝え、早めに対処できるようにしています。
外来では、患者さんが皮膚障害に対してどういう思いでいるか、生活上どんなことに困っているかなどを丁寧に聞くようにしています。皮疹がひどくて化粧ができない、仕事で人前に出なければならないが皮疹が気になるといった悩みがある場合には、アピアランスケアの専門スタッフとも情報を共有して対応しています。
皮疹があまりにひどくなった場合は休薬し、症状の改善を図ります。
爪囲炎の経過と予防・治療・ケア
爪囲炎の経過
爪襞(爪の両側の皮膚部分)の浮腫や紅斑から始まり(Grade 1)、滲出液や疼痛を伴い、身の回り以外の日常生活に制限が生じるGrade 2、身の回りの生活まで支障が出て、外科的治療等を要するGrade 3へと進行していきます(表2)。
表2 爪囲炎の定義と重症度
定義 | 爪周囲の軟部組織の感染 |
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Grade 1 | 爪襞の浮腫や紅斑;角質の剥脱 |
Grade 2 | 局所的治療を要する;内服治療を要する(例:抗菌薬/抗真菌薬/抗ウイルス薬);疼 痛を伴う爪襞の浮腫や紅斑;滲出液や爪の分離を伴う;身の 回り以外の日常生活動作の制限 |
Grade 3 | 外科的処置を要する;抗菌薬の静脈内投与を要する;身の回りの 日常生活動作の制限 |
爪囲炎の予防ケア
爪囲炎の予防には、保湿と清潔というスキンケアの基本をしっかり行うことに加えて、爪やその周囲を圧迫しないようにすることが大切です。靴はきつくなく、履きやすいものにします。爪は切りすぎず角を丸く落とさない、深爪にならないようにスクエアカットを指導します。
爪囲炎発症後の治療・ケア
指先に症状があるとちょっと当たっただけでも痛いため、指を守るため絆創膏を巻く患者さんがいます。絆創膏で圧迫することで症状が悪化してしまうこともあることを説明します。
また滲出液や出血があると石けんで洗ってはいけないのではと思う人がいますが、出液が固まると治癒の妨げになったり感染源となるため、石けんの泡をのせてしばらくおき、ふやかして取るよう指導します。
腫れた皮膚や肉芽が爪の側縁にかぶってきているときはテーピングを指導します。自分でうまくできない高齢患者さんなどの場合、家族にも指導します。テープを巻くのが難しければ、圧迫しないよう保護する形に変えるなど、患者さんや家族ができることを一緒に考えていくことが大切です。 症状が重症化しQOLが低下すような場合は休薬せざるを得ない状況に陥ります。炎症や肉芽が増悪した場合は皮膚科を受診し、液体窒素で肉芽を処置する凍結療法を行うこともあります。
がんの薬物療法中に生じた皮膚障害のケアでは、患者さんの状況に合わせて、なるべく負担を減らしながら抗がん薬治療を続けられるようにすることが求められており、看護師が心を砕くところではないかと考えています。
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がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ
薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。