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片頭痛治療の最新知識|たかが頭痛と思わないで! 頭痛フリーで充実した看護師ライフを

  • 公開日: 2022/3/23

看護師はじめ女性に多い片頭痛。命にかかわらないので軽視されがちですが、実はきちんと治療することが大切なんです。きちんと治療をしないと痛み止めの飲み過ぎによる頭痛に発展して大変な目にあうことも……。今回は頭痛でお悩みの方だけでなく、医療者として知っておくべき頭痛に関する知識を、慢性頭痛の診療ガイドライン2021にそって紹介します。

片頭痛の誤った対応

頭痛はQOLを下げる病気第2位!?

 脳出血や脳腫瘍、緑内障や髄膜炎といった、何らかの原因があって頭痛が起こる二次性頭痛を見逃してはいけないのは当たり前。でも片頭痛を始めとしたいわゆる普通の頭痛である一次性頭痛に関しては、まだまだ社会も医療者も理解が不足しています。

 一次性頭痛には肩こりからくる緊張型頭痛と、吐き気や光過敏・音過敏、体動困難を伴う片頭痛などがあります。特に片頭痛は看護師に多いのです1)。看護師は仕事のストレスや不規則な勤務体制で悪化しやすく、頭が痛くて仕事に集中できなかったり、欠勤や早退してしまった経験がある人もいるかもしれません。このような頭痛による欠勤や仕事のパフォーマンス低下による経済損失は、1人あたり年間170万円、日本全体では年間2兆円とも言われています。

 WHOの疾病負担の調査では、脳卒中や認知症に並んで頭痛のQOLへの影響は第2位2)。片頭痛は日本人の8%が有しているといわれており、適切な治療が求められています。ですが、患者・社会・医療者の頭痛に対する理解はまだまだ不足していて、治療法があるのにきちんと治療されていないのです。

頭痛に関して正しい理解を

 QOL低下や経済損失を生み出す片頭痛。こんな経験はありませんか?

―頭が痛くて吐き気がする。仕事や家事が思うようにできず休みたいけど迷惑がかかるから痛み止めを飲んで頑張らなきゃ。
―学生時代、テストや部活で頭痛のため良いパフォーマンスが出せなかった。
―友達と遊びに行く約束をしていたのに頭痛でドタキャンしてしまった。申し訳ない。もう友達と遊ぶ予定は立てられないな。
―頭痛で仕事がうまく行かず上司に相談したけれど「たかが頭痛で。我慢しなさい」と邪険に言われた。
―夫に頭痛のことを「生理みたいなもんでしょ」と言われて我慢するしかないと思った。
―頭痛のことで病院に相談に行ったらCTだけとられて「なにもないですよ。命に危険はないから様子見ね」と帰された。普段の頭痛はどうしようもないのかな。
―頭痛で体調が悪いなんてきっと精神的なものだよね。
―頭痛がひどいのは環境のせいだから仕事をやめたら治るのかな……。

 いかがですか? これらはすべて誤った考え方や対応なんです。

 片頭痛は嘔気や光過敏・音過敏を伴い、歩行など軽い動作でも増悪して寝込みたくなるような頭痛を指します。数カ月に1回くらいなら、市販薬で対応するのもいいでしょう。しかし、片頭痛の増悪因子の第1位はストレス。頭痛で勉強や仕事、友達との約束に支障をきたしたり、職場や家族など社会からつらくあしらわれたり、病院に行っても片頭痛の治療をきちんとしてもらえないと、どんどんストレスが溜まっていきます。そうすると頭痛の頻度や強さがどんどん悪化して、最終的に週に何日も頭痛が起きることで仕事が思うようにできず、仕事を辞めてしまう人もいます!

 せっかく働きたい職場で働けていても、頭痛で自分のやりたいような看護ができないとつらいですよね。頭痛は治療可能な疾患です。でも、患者・社会・医療者の片頭痛に対する理解がまだまだ乏しく、未治療の頭痛で仕事を辞めてしまう人はたくさんいます。そうなる前に、きちんと頭痛に関して適切な治療を始めることが大切なんです。

頭痛の治療は2本立て

 頭痛の治療は大きく2本立て。1つは痛いときの急性期治療薬。これはいわゆる痛み止めやトリプタンで、痛いときに飲むものです(痛くないのに飲んじゃダメですよ)。また頭痛がひどい場合は休息、安静を取りましょう。痛い中仕事を続けるよりも、痛み止めを適切に使用して1〜2時間休んだほうがさっと良くなって仕事に復帰できる人も多いのです。企業の中では、啓発が進んで片頭痛でしんどくなったら休息が取れるところもあります(https://www.lilly.co.jp/news/stories/henzutoo参照)。

 肝心な治療の2本柱のもう1つは頭痛の頻度や程度を軽くするための予防薬。降圧薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、漢方薬などがあり、毎日飲むことで頭痛の頻度や程度を抑えることができます。この予防薬は、月に2回以上頭痛があるか、月に3日以上生活に支障がある人が適応です。また、2021年にはCGRP関連製剤という注射の特効薬が出ました。1〜3カ月に1回注射をすれば、50%の人は頭痛が半分に、10%の人は頭痛がなくなります。予防治療は年中ではなくても、結婚式など大事なイベントがあるとき、ストレスの多い受験期や、頭痛の多い梅雨、患者さんの増える冬の繁忙期など、頭痛を起こしたくなかったり頭痛の悪化する時期に絞って行うこともあります。

 痛み止めだけでなく、「予防薬」で頭痛の頻度や強さが改善することを知らなかった人も多いと思います。もし月に2回以上頭痛があって困っている人がいたら、ぜひ頭痛外来を受診しましょう。

きちんと治療しないと痛み止めの飲みすぎによる頭痛に

 頭痛に対する不適切な対応でもう一つ問題になるのは痛み止めの飲み過ぎによる頭痛(薬剤使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)。予防薬を使わずに痛み止めばかりを月に10日以上使い続けると、痛みのセンサーである三叉神経節がおかしくなり、頭痛がどんどんひどくなってしまうのです。

 糸魚川総合病院脳神経外科 勝木将人らと糸魚川市健康増進課 山岸千奈美らの国内初の有病率調査によると、なんと43人に1人が痛み止めの飲み過ぎによる頭痛になっていることがわかりました3)。頭痛の予防薬を飲まずに、市販の痛み止めをたくさん自己判断で飲むことで、2.3%の人が痛み止めの飲み過ぎによる頭痛になっていることがわかりました。

 痛み止めの飲み過ぎによる頭痛の治療は断薬と予防薬の開始。断薬中は1週間位激しい頭痛と嘔気に悩まされるので、そうなる前にきちんと予防治療を始めましょうね。また、すでに月に10日以上痛み止めを飲んでいる人は要注意。早めに医師に相談して予防治療を始めてもらいましょう。

頭痛に優しい社会を

 頭痛に関する正しい知識、皆さんご存知でしたか?

 頭痛はQOL低下、経済損失、失職など人生にかかわる重大な疾患なのに、まだまだ私たち看護師を始め、社会の理解はありません。適切な急性期治療薬と、月に2回以上頭痛がある場合は予防薬治療を行うことで、頭痛は治療可能なんです。

 頭痛のないストレスフリーな看護師ライフを送れるよう、頭痛に関して困っている人がいたら適切な対応・予防治療を始めましょう!

引用文献

1)Norihiro Suzuki et al:Prevalence and characteristics of headaches in a socially active population working in the Tokyo metropolitan area -surveillance by an industrial health consortium.Intern Med 2014;53(7):683-9.
2)T J Steiner et al:Migraine remains second among the world’s causes of disability, and first among young women: findings from GBD2019.J Headache Pain 2020;21(1):137.
3)Masahito Katsuki et al:Questionnaire-based survey on the prevalence of medication-overuse headache in Japanese one city-Itoigawa study.Neuro Sci 2022;online ahead.


イラスト/こさかいずみ

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