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【連載】難しい患者さんの日常ケア

体位変換ができない場合の4つの要因と対処法

  • 公開日: 2014/3/19

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体位変換とポジショニング
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褥瘡とは?褥瘡の看護ケア|原因と分類、評価・予防・治療など


褥瘡ケアが難しい患者さんへの対応のキホン

 褥瘡ケアで大切なことは、ケアの一つひとつの根拠を考えながら行うことです。たとえば、体位変換はなぜ行うのか。それは長時間の体圧が同一部位にかかると、虚血状態が生じ組織の壊死が起こるので、虚血状態になる前に支持面を変える必要があるからです。

 しかし、たとえしっかり「2時間ごと」に体位変換を行っていても、患者さんの状態によっては、褥瘡が発生してしまうこともあります。つまり一律に「2時間ごとに体位変換する」のではなく、患者さんの個別性に合わせた褥瘡ケアをプランニングできるような、知識と褥瘡のアセスメント力、ケアの技術が必要です。

患者さんや家族への根拠を持った説明も大切

 最近では体圧が一部に集中しないように、さまざまな「体圧分散寝具」が開発されているので、それらを使用することで体位変換が難しい患者さんを無理に動かさなくてもよくなりました。

 しかし、体圧分散寝具を使用すればそれでよいわけではなく、褥瘡予防にはセルフケアも大切になってきます。褥瘡発生の要因として、その人の姿勢や寝方の癖など、生活習慣によるところも大きいので、患者さんや家族に協力を得られるよう、ケアの方法や注意点を、根拠を持って説明することが重要です。

 さらに、褥瘡ができると創ばかりに目がいきがちですが、排便コントロールやスキンケアなど、褥瘡発生の原因を除去するケアをしていくことが大切です。

体位変換できない患者さんにどう対処する?

 体位変換できない場合の要因として考えられるものには、主に以下の4つが挙げられます。

①治療上動かせない、循環動態が安定していない

〔理 由〕

 治療上動かせないとは、たとえば術後、患部を固定する装具をつけている、あるいは止血を図るために安静が必要な場合、などです。また、手術中も全身麻酔で長時間体位変換できずに寝たままの状態にあったり、術式によって特別な体位を取らざるを得ない場合などは、褥瘡発生のリスクが非常に高くなります。さらにICUの重症患者さんで循環動態が安定していない場合は、体位変換ができないこともあります。

〔対処法〕

 体位変換の意味は、「除圧をし、ズレと摩擦を逃すこと」にありますが、同一体位による高い体圧がコントロールできないのであれば、「体圧分散マットレス」を使用するのが一番です。術後などは、ある程度安静時間が予測できるので、治療目標を確認した上で、効果的な体圧分散マットレスをあらかじめ準備しておくといいでしょう。

②ターミナル期

〔理 由〕

 がんの悪液質からくる倦怠感や浮腫などで、体圧が上昇する反面、組織耐久性の低下が起きやすい状態です。さらに、低栄養になりやすいなど、褥瘡発生リスクは非常に高く、がんそのものの痛みで体位変換ができない場合もあります。

〔対処法〕

 ターミナル期では、十分に疼痛コントロールを行っても、体位変換での苦痛が取り除けない場合があります。この場合、患者さんの思いや希望、安楽を最優先し、効果的な体位変換が実施できない分、別の対策を講じ、患者さんや家族に説明し、同意を得ます。

 患者さんの苦痛の少ない体圧分散マットレスを選択し、体位変換の間隔の延長や、患者さんの体が動かない程度に、介助者の手でマットを押し下げて、一部分でも局所の除圧を行うなど個別に計画することが重要です。

③麻痺や四肢屈曲、拘縮がある

〔理 由〕

 脊髄損傷で痙性麻痺の患者さんの場合、車いすや頭側挙上(ギャッジアップ)が長時間となることで、ズレの排除や除圧が困難となり、特に坐骨部に褥瘡が発生しやすくなります。また、四肢に屈曲性の拘縮のある患者さんは、拘縮の影響で骨が突出しているために、その部位に圧力が集中しがちです。さらに体位変換をしても、屈曲拘縮のために姿勢保持が難しく、同じ向きになりがちです。そのため皮膚の密着部位に褥瘡が発生しやすくなります。

〔対処法〕

 こういった場合もやはり、体圧分散マットレスを使用するのがよいでしょう。また、拘縮によって、骨の突出部や関節など、体圧のかかる部分が決まってくるので、患者さんの状態に合わせたマットレスやクッションを選択します。そして、骨突出部や屈曲に合わせて体とマットレスの隙間をクッションで埋めていくことで、体圧を支える面積を多く取るようにします。

④認知症

〔理 由〕

 認知症の患者さんで、少し意識があり痛みも感じる場合は、痛い部位をかばってしまうために、どうしても同じ姿勢になりがちで、褥瘡が発生しやすくなります。

〔対処法〕

 まずは看護師が、同じ姿勢を長時間続けていないか、そして皮膚の状態を頻回に観察します。同時に、家族に具体的に観察すべきポイントを伝え、協力をしてもらうようにしましょう。

 また、患者さんの体動の癖を見極め、例えば踵に褥瘡ができやすいのであれば、あらかじめ踵に滑りやすいフィルムを貼るなど、摩擦やズレを回避する予防策を講じておくのも一つの方法です。ただし、いろいろな手を尽くしても、褥瘡を予防しきれない難しさもあるので、家族には「対策を講じても褥瘡が発生する場合があること」についても伝えておくとよいでしょう。

(ナース専科マガジン2014年4月号より転載)

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