歯周病の新分類
- 公開日: 2025/1/21
歯周病の新分類は何を判断するもの?
歯周病の分類は見直しが重ねられており、2018年6月に、アメリカ歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病連盟(EFP)により公表されたのが、「歯周病の新分類」(以下、新分類)です。
歯周病は、「非プラーク性歯肉疾患を除き、歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患であり、歯肉、セメント質、歯根膜および歯槽骨よりなる歯周組織に起こる疾患」と定義されており1)、歯肉病変と歯周炎の大きく2つに分けられます。
歯の周囲には、歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質で構成された歯周組織があり、歯を支える役割をもちますが、歯肉病変は歯肉にのみ炎症が起きている状態を指します。一方、歯周炎は、歯肉に生じた炎症が歯槽骨・歯根膜・セメント質といった深部の歯周組織に及ぶのが特徴です。
今回の新分類で最も大きな変更があったのは歯周炎の分類です。これまで歯周炎は、侵襲性歯周炎と慢性歯周炎に分けられていましたが、新分類ではこの区別をなくして1つの歯周炎としてまとめたうえで、重症度・複雑度、進行スピードや将来的なリスクを評価することになりました。
歯周病は自覚症状に乏しく、気づいたときにはかなり進行して重症化しているケースも少なくありません。歯周病を治療しないまま放置して重症化すると、歯槽骨が破壊され、最悪の場合、歯が抜け落ちてしまうこともあります。そのため、歯周病の患者さんについては、新分類を用いて状態を評価して、適切な治療・管理につなげていくことが重要です。
歯周病の新分類はこう使う!
前述したように、新分類では歯周炎の分類に大きな変更があり、歯周炎を「ステージ」と「グレード」という2つの基準で評価することになりました(表1、表2)。
歯周炎がどの程度進行しているかを評価するための指標がステージです。歯周炎の重症度・複雑度がⅠ~Ⅳまでの4段階で示され、数字が大きいほど重症度は高くなります。また、歯周炎の範囲と分布により、限局型(30%未満)、広汎型(30%以上)、大臼歯/切歯型のいずれかに分類されます。
グレードについてはA~Cの3段階で示され、進行スピードや将来的なリスクについて評価します。Aは遅い進行、Bは中等度の進行、Cは急速な進行と判断され、喫煙や糖尿病といったリスク因子がある場合はグレードが高くなることがあります。歯周病治療、禁煙、糖尿病治療などによって状態の改善がみられると、グレードが変化する場合もあることから、治療経過の指標や治療目標の設定などにグレードを活用することができるといえます2)。
新分類により状態を評価して、適切な治療・管理につなげるとともに、患者さんにも治療の重要性を伝え、継続的に治療に取り組んでもらうように働きかけることが求められます。
表1 歯周炎のステージ
表2 歯周炎のグレード
引用・参考文献
2)関野愉:歯周病新分類の臨床的意義と今後の展望.日本ヘルスケア歯科学会誌 2020;21(1):6-11.
●日本歯周病学会:歯周病の新分類への対応.(2024年12月9日閲覧)https://www.perio.jp/file/news/info_191220.pdf
●村上伸也,他:歯周病新分類の解釈のその応用.日本臨床歯周病学会会誌 2021;39(2):20-6.