急変に結びつく危険な徴候とは?
- 公開日: 2013/9/11
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急変時の対応
患者さんのちょっとした異変を、急変サインとして早期にキャッチできればと願うナースは多いはず。そうした能力は個人の経験や感性によるしかないのでしょうか。
初めに、急変の前兆に気付く観察力を高めるための方法論について解説します。
急変の発生は予測できる!
急変前に起こる何らかの徴候を見逃してはいけないことは、誰もがわかっていることです。でも実際は、患者急変の多くのケースで意識が消失するまで気付かず、急変という事態に至っています。そして、緊急事態が起こった後で、「そういえば少し様子が変だった……」と振り返るのです。
これまで急変対応というと、BLS、ACLSといった急変に至った後の救命技術が中心に語られてきました。もちろん、これらの蘇生術は救急対応として必須ですが、多くのケースでは異変前に「危険な徴候(サイン)」が患者さんに現れています。実際、実に60~70%の症例で心肺停止の6~8時間前に何らかの前兆が認められるということが、複数の論文によって報告されています。
つまり、徴候に早期に気付いて必要な処置を実行することが、重篤化を回避し、患者さんの生命を守ることにつながるわけです。急変の最初の対応は、これまでの概念よりも幅広く、「急変」として発見する前の、その変化の「気づき」から始まっています。
Step1 正常な状態を知ることから気づきは始まる
気づきは具体的な症状というよりは、「何か変」「いつもと違う」といった、漠然としたいわば第六感のようなものです。例えば、これまで呼吸苦を訴えたことのない患者さんが「ちょっと息苦しいんだよね」と言ったり、今日に限って上着を着ている、肩が上がっている、テレビを見ている姿勢が違うなど、実はとても些細なことなのです。
その場面だけを見れば、取り立てて気になる状況ではないのですが、それまでの患者さんの様子と比較すれば、今までにない変化であることに違いありません。 看護師がこの変化をキャッチするには、いつもの患者さんの様子、その患者さんにとっての正常な状態を理解しておくことが大前提となります。それを知らなければ、「何か変」とは考えられないからです。
もちろん、バイタルサインも一般的な正常値ではなく、その人にとっての常時の値が基準になります。原疾患によっては特徴的な症状が出現しにくいことや、治療の影響などもあるので、患者さん個々のベストな状態を把握した上で、観察・評価することが必要です。
Step2 キラーシンプトムを見極めろ!
呼吸不全や循環不全・ショック、中枢神経障害、代謝不全といった急変や死に結びつく可能性のある危険な徴候を、キラーシンプトム(注)と言います。
看護師が患者さんと接するとき、最初にチェックするのがこのキラーシンプトムの有無で、「迅速評価」(Step3で解説)によって、呼吸の異常、末梢循環の異常、外見と意識の異常から判断します。
呼吸の異常を看る
・24回/分以上の頻呼吸や明らかに不十分な呼吸、努力様呼吸
・吸気/呼気時の異音・雑音
・動脈血酸素飽和度(SpO2)の急激な低下
末梢循環の異常を看る
・皮膚の蒼白、末梢のチアノーゼ
・冷感(敗血症では温感)、冷汗
・ブランチテストで赤みが戻るまで2秒以上
・頸動脈の脈拍が弱い(心肺停止の可能性)、橈骨動脈や大腿動脈(鼠径部)の脈拍が弱くて早い(ショックと判断)
外見と意識の異常を看る
・呼びかけに無反応、呂律が回っていない、朦朧としている
・表情や姿勢など全身から感じる印象
(注) キラーシンプトムとは、日本医療教授システム学会「患者急変対応コース for Nurses ガイドブック」の中で創造した造語で、“急変に結びつく危険な徴候” の意味です。