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【連載】検査値をケアに活かす!

【術後に肺血栓塞栓症を発症した患者さん】事例で見る検査値の活かし方

  • 公開日: 2014/5/24
  • 更新日: 2020/10/21

検査値を患者さんの病態とどうつなげて考えればよいかわからない──。

そんな声に応えて、入院時からの経過と検査値の推移を見ながら、数値の示す意味や看護への活かし方を、4つの事例で検討します。


▼術前・術後の看護について、まとめて読むならコチラ
術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防など)


事例2 人工関節全置換術後に肺血栓塞栓症を発症した患者さん

 Bさん(85歳、男性)は、数カ月前から右股関節に痛みを覚え、自宅近くの整形外科を受診し、骨頭壊死と診断されました。

 手術適応であったため、手術目的で当院の整形外科を受診。7月4日に入院し、同5日に人工股関節全置換術を受けました。手術翌日の6日に、SpO2が低下し、D-ダイマーの上昇があったため、造影CT検査を実施しました。

 その結果、肺血栓塞栓症と診断され、酸素投与とヘパリン投与による治療を開始しました。12日からはワーファリン3mgの内服が開始され、18日には酸素投与を終了しました。

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 その後、PT-INRが延長しすぎたため、ワーファリンを一時中断。経過をみて、30日に1mgで再開しました。

 8月1日に回復期リハビリ病棟へ転科し、筋力強化訓練や歩行訓練を中心とした、リハビリを本格的に開始。屋内歩行自立、屋外歩行見守り~自立を目標に継続しました。またその間も、引き続きワーファリンを内服し、肺血栓塞栓症に対する治療を行いました。

 回復期経過中は呼吸状態は安定しており、順調に経過しました。歩行自立に至ったため、9月7日に退院となりました。

検査値の推移

検査値の推移(7月1日)

検査値の推移(7月6日)

検査値の推移(7月26日)

診断・治療のポイント

  • 術後の7月6日に、PO2が54.7Torrと50台に低下し、D-ダイマーが40.72μg /mL、FDPが72.8μg /mLと高値を示しました。緊急で胸部造影CTによる画像検査を行ったところ、肺血栓梗塞症であることが診断されました。直ちにヘパリンの投与を開始するとともに、呼吸状態が悪化していたため酸素投与を行いました。 >> 続きを読む
 *抗凝固療法は、血栓の形成を抑制し、できれば今ある血栓が溶解するように行います。ヘパリンにより、APTTは約60秒と正常値の2倍ぐらいまでに延長され、血液が凝固しにくくなります。

 *Bさんのように、治療目的でヘパリンとワーファリンを用い、血液の凝固を抑制している患者さんは、出血傾向が強くなっています。ほんの少しぶつけただけで、ひどい内出血を起こしたり、一度出血するとなかなか止血しないことも少なくないため、患者さん本人にも注意を促す必要があります。

 *Bさんは人工股関節全置換術の術後であるため、出血傾向が強いからといって、リハビリを中止するわけにはいきません。通常のリハビリのメニューより負荷を軽くし、動作を制限した内容になっていると思われますが、リハビリ時にも内出血を起こさないような注意が必要です。

 *肺血栓塞栓症が進行すると、急性右心不全のリスクが高まります。急性右心不全の徴候をできるだけ早期にキャッチするためには、バイタルサインと心電図のこまめなチェックが必要になります。特に呼吸状態の観察は重要です。呼吸数の増加は危険なサインなので特に注意してください。

ココに注目! 看護のポイント

ポイント1 肺血栓塞栓症の病態を理解し、タイムリーな観察を

 術後の肺血栓塞栓症の大半は、骨盤部や下肢のDVT(深部静脈血栓症)由来で引き起こされます。つまり、(1)血栓の形成→(2)血栓の運搬→(3)肺動脈に詰まる→(4)肺梗塞というプロセスのできるだけ早い段階で、変化の徴候をキャッチして、適切に対応することが看護のポイントです。

 肺血栓塞栓症が進行すると、急性右心不全のリスクが高まります。急性右心不全の徴候をできるだけ早期にキャッチするためには、バイタルサインと心電図のこまめなチェックが必要になります。

 特に呼吸状態の観察は重要です。呼吸数の増加は危険なサインなので特に注意してください。

 (1)については、弾性ストッキング着用などによる予防、(2)については、手術後の安静解除時の細やかな観察を行います。(3)については、診断・治療のポイントにもあるように、まずは呼吸状態の変化、特に突然の呼吸困難の出現に要注意。過呼吸によりPaCO2は低下し、呼吸性アルカローシス状態になります。呼吸困難に伴いめまい・しびれなどの症状を訴える場合もあります。

 この状態が持続すれば急性右心不全につながります。頸動脈怒張や浮腫などの症状を見逃がさないようにします。

 さらに進行し(4)になると、ショック症状を呈します。高齢者の場合は、症状の出現が遅延したり、自覚症状に乏しかったりすることも予測して、より厳密に呼吸状態などを観察しましょう。

 また、パルスオキシメーターを併用し、SpO2の変化に注意することも有効です。「低下すればアラームが鳴る」と器械に頼らず、気を付けてチェックする、また、アラームが鳴ったら、すぐに患者さんのもとに行き、患者さんの状態を自分の目で確認することが原則です。

 術前から循環器疾患などで抗凝固剤を内服している患者さんは、術前後に抗凝固剤の投与が中断されると、塞栓症のリスクが高まります。術前にはきちんと内服薬を確認して、術前後の絶食期間に抗凝固療法が中断されないよう、主治医と相談していきましょう。

ポイント2 出血傾向のある患者さんは日常生活動作にも配慮する

 Bさんのように抗凝固療法を受けている患者さんはかなり出血傾向が強くなっています。今までは何気なく行っていた動作の中にも出血のリスクが潜んでいます。

 車椅子に移動する際に車椅子の角に臀部をぶつけてしまったり、看護師が患者さんを支えるため腕をつかんだだけでも、内出血を起こすことがあります。初めて抗凝固療法を受ける患者さんに対しては、出血傾向についての説明を十分に行い、患者さんに自覚を促すようなケアが大切です。

 また、採血などの穿刺を伴う処置や髭剃りなどはできるだけ控え、また清潔ケアの際にきちんと全身のチェックを行うなど、出血のサインに気を付けて見逃さないような対応をいつも忘れずに行います。

(『ナース専科マガジン』2012年8月号から転載)

次回は「事例で見る検査値の活かし方(3)心内膜炎の患者さん」について解説します。

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