がん化学療法中の下痢のケア
- 公開日: 2016/12/12
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がん化学療法とは?副作用の出現時期や症状別の看護
早発性下痢に配慮した治療環境を提供する
早発性下痢では、抗がん剤の点滴ボトルの半分ぐらいを投与した時点で、腸蠕動が亢進し、頻回にトイレに行きたくなる患者さんがいます。できるだけ、トイレに近いベッドで治療が受けられるよう配慮しましょう。患者さんに症状の特徴を説明し、症状出現時は我慢せずにトイレに行ってもらうように、あらかじめ説明しておきます。
遅発性下痢では止痢薬の使用方法だけでなく生活上の工夫を指導する
遅発性下痢は、患者さんが自宅に帰ってから発症するため、止痢薬の使用方法、服用のタイミングなどをわかりやすく説明しておきましょう。
在宅時に下痢症状が回復しないなど自分ではどうしてよいかわからない場合は、病院に連絡をして主治医や看護師に確認するように伝えておきます。患者さんから連絡があった場合、どの程度の下痢で、体調はどうかなど、具体的な言葉でしっかり聞き取り、アセスメントすることが大切です。排便回数や、便の性状、食事や水分は摂れるのか、発熱していないか、脱水症状の兆候はないか、など具体的な症状を確認し、院内のルールに従って受診の必要性があるか否か判断しましょう。
下痢が続く場合は安楽な体位をとって安静にする、お腹を温める、排便回数が多い場合はトイレの近い部屋で休むなど日常生活上の工夫も説明しましょう。
抗がん剤の副作用による下痢の場合は、突然発症したり、いつ下痢が起こるか予測不可能なことがあります。生活面では、外出するときにトイレの位置を確認しておくこともひとつの工夫です。下着を汚してしまう失敗体験などは、その後の治療にも影響を及ぼします。パットや介護パンツを利用して下着の汚れを防ぐ方法も説明しておくとよいでしょう。
下痢が続いているときは、患者さんのスキンケアにも目を向ける
下痢が続くと、肛門部からお尻にかけて発赤が出たり、ひどい場合はびらんから潰瘍ができる人もいるため予防ケアが大切になります。下痢による皮膚障害を起こす原因は2つ考えられます。
1. 便を拭き取ったり洗浄したりすることで起こる機械的刺激
2. 排泄物が付着することで起こる化学的刺激
機械的刺激の対策は、1日1回の石鹸洗浄後保湿剤を塗布します。洗いすぎは皮脂を除去しすぎてしまいスキントラブルを助長します。特におむつを使用している患者さんは、肌がむれて、外力に弱くなっています。そのため、頻回な洗浄で皮膚障害を起こしやすいので注意しましょう。
化学的刺激の対策は、排泄物を付着させないことです。それには、肛門周囲に撥水クリームの塗布やオイル系スプレーを噴霧しておきます。こうすると排泄物をはじき、皮膚を保護してくれます。
がん化学療法を受ける患者さんは、治療や病態の悪化などから二次的な障害が出現して、日常生活に影響がでてくることがあります。ライフイベントに合わせたきめ細かいケアやアドバイスを患者さんが得られるよう、些細なことでも医療者に相談できる関係を、患者さんとともにつくっていきましょう。