腹腔ドレーンの排液の色のアセスメント
- 公開日: 2017/9/23
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Q. 排液の色が突然変化した! これって何を意味しているの? どう動けばよいの?
A. 排液の変化の多くは、腹腔内で何らかの異常が起きていることを示しています。バイタルサインや身体所見の確認とともに、必要時は医師への報告が必要です。
排液の変化は腹腔内での異常を知らせている
ドレーンからの排液の変化は、腹腔内で起こっている異常をいち早く知ることができる重要な情報です。その情報を正しくキャッチできなければ、患者さんの状態悪化に気づかず、急変を招いてしまうことにもなりかねません。排液の量や色、性状、臭いなどの変化は常に確認するようにしましょう。
異常を早期に発見するためには、ドレーンの正常と異常を知っておくことが大切です。また、ドレーンの種類と留置部位の認識、ドレナージの目的を把握したうえでの観察や、術後合併症が出現しやすい時期を踏まえた排液管理も必要です。
図4-1 排液の性状・色調の変化
排液の性状・色調の変化が示すこと
《1》排液が血性になった!
術後の腹腔内で血管が破綻し、血液が漏れている状態が考えられ、術後合併症の1つでもある術後出血を疑います。その場合、血性の排液性状を示すとともに、排液量も増加します。
⇒発見したらどう動く?
ドレーンからの血性が100mL/h以上みられた場合には、再開腹による止血術が必要となることもあります。バイタルサインのチェック、排液の観察を行い、すぐに医師に報告しましょう。短時間で多量に出血してショック状態にある場合や、バイタルサインに変動があった場合には緊急度も高いため、迷わずドクターコールをしましょう。
《2》排液が膿性になった!
腹腔内臓器に感染が起きていることが考えられ、排液は白色~クリーム色の混濁した粘度の高い排液になります。特に消化管穿孔などの緊急手術、大腸などの消化管の切除を行った術後に注意が必要です。
⇒発見したらどう動く?
発熱の有無やバイタルサイン、腹痛などの症状を観察し、医師へ報告します。シバリングや高熱を伴う場合には敗血症などの可能性も考えられるので、すぐに報告しましょう。
《3》排液が腸液、便汁様になった!
消化器外科手術後に縫合部が生着せず、消化管内容物が消化管外へ漏出している状態が考えられ、縫合不全を疑います。縫合不全の場合、消化管の内容物がドレーンから流出するため、ドレーン内も黄色~茶色の浮遊物が多く、混濁した排液がみられます。便臭がすることもあります。
⇒発見したらどう動く?
バイタルサインとともに腹部症状を確認し、医師に報告します。ドレナージが良好で、炎症所見が軽度であれば保存的に治療することもありますが、排液量が多く炎症反応の高値が続く場合には、ドレナージ術や人工肛門造設といった緊急手術が必要となる可能性もあります。医師に治療方針の確認をすることも大切です。
《4》排液が膵液~膵液混じりになった!
膵切除術後などに膵切離断端から膵液が漏出している状態が考えられ、膵液漏を疑います。膵液は強い消化液で、腹腔内に漏出した場合には周囲の臓器や血管を溶かしてしまうほどです。膵液自体は無色透明の排液ですが、血液成分と混じるとワインレッドへ排液性状が変化します。
⇒発見したらどう動く?
膵液漏により周囲臓器が溶かされることで、大出血を引き起こす危険性もあるため、出血性ショックも念頭に置きながら、バイタルサインに変動がないか注意深く観察することが必要です。無色透明であった排液が少しでも血性になった場合には、すぐに医師へ報告しましょう。
《5》排液が乳びになった!
食事で摂取した脂肪は腸で吸収され、リンパ液と混ざり乳白色になります。これを乳びといいます。ドレーンから乳白色の排液がみられた場合、術後にリンパ管が破綻し、腹腔内でリンパ液が漏出していることが考えられ、乳び漏を疑います。
⇒発見したらどう動く?
排液量と性状を確認し、医師に報告しましょう。切迫した緊急性はありませんが、脂肪を吸収しないことを目的に、禁飲食もしくは脂肪コントロール食への変更などが必要となるため、医師の指示を確認しましょう。
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