ドレーンとは|ドレーンの種類と管理
- 公開日: 2018/8/4
ドレーンとは
体内に貯留した血液・膿・浸出液を体外に排出する医療行為を「ドレナージ」といい、その際に使用する管のことを「ドレーン」といいます。
ドレーン(ドレナージ)の種類
ドレーンにはさまざまな種類があり、用途によって分類することができます。
目的別の分類
<予防的ドレナージ>
感染の危険性が予想される場合に行います。
例)縫合不全が高確率で起こるような手術の術後、体内の浸出液の貯留など
<治療的ドレナージ>
浸出液や膿などの貯留によって発熱や臓器不全を引き起こしている場合に行います。
<情報的ドレナージ>
術後の出血量の確認や、縫合不全、消化液の漏れの早期発見を目的として行います。
排液方法による分類
<閉鎖式ドレナージ>
チューブに排液バッグを接続してあり外界との交通がなく、閉鎖空間となっています。逆行性感染のリスクが少ない、排液量の測定が正確にできるなどのメリットがある一方、排液バッグが身体に繋がっているため管理に注意が必要です。
陰圧機能のある能動的ドレナージと、陰圧のない受動的ドレナージがあります。
<開放式ドレナージ>
腹圧や毛細管現象を利用した排液法で、ドレーンが体表から3~4cm出た状態で外界に開放されています。閉鎖式とは違い、動きは制限されませんが逆行性感染のリスクがあります。また、硬い素材のものが多く、挿入部に組織障害を起こす可能性があります。
<半閉鎖式ドレナージ>
開放式ドレナージにオープントップ型パウチを貼り、外界と遮断させた状態です。
【開放式と閉鎖式について】
開放式ドレナージと閉鎖式ドレナージの注意点
原理別の分類
ドレナージは原理の違いにより「受動的ドレナージ」と「能動的ドレナージ」に分けられます。
受動的ドレナージで使用される原理は、重力・毛細管現象・サイフォンの原理など陰圧を使用しないものであり、能動的ドレナージでは機械・バネ・風船の力を利用して陰圧をかけます。
<能動的ドレナージ>
陰圧をかけて排液を促す方法で、持続吸引と間欠吸引に分けられます。
●持続吸引
持続吸引は、主に胸腔ドレナージで使用される低圧持続吸引器と手術創にドレーンを留置し接続した排液バッグに陰圧をかけるウーンドサクションに分けられます。
低圧持続吸引器:主に胸腔ドレーンに使用され、持続的に陰圧をかけることで血液や浸出液などを排出し、肺の再膨張を促進します。
ウーンドサクション:ねじタイプ、蛇腹タイプなどそれぞれの排液バッグ(ボトル)に合わせた方法で陰圧を生じさせ、排液を促します。排液量の増加に伴い吸引圧が低下するものもあるため、こまめに排液を処理します。また、チューブの閉塞を予防するため定期的にミルキングをする必要があります。
●間欠吸引
持続吸引では適切にドレナージができない場合に行うことがあります。
<受動的ドレナージ>
圧差や重力などを利用しサイフォンの原理によって排液を促す方法です。そのため、排液バッグはドレーンの留置部よりも低い位置に置かなくてはなりません。
留置部位による分類
ドレーン名 | 適応 |
---|---|
胸腔ドレーン | 気胸、血胸、肺切除術後 |
腹腔(横隔膜下、ウィンスロー孔、ダグラス窩)ドレーン | 腹部手術の術後 |
脳室ドレーン | 頭蓋内圧亢進、水頭症の治療 |
心嚢ドレーン | 心臓手術後、心タンポナーデの治療 |
胆管ドレーン | 閉塞性黄疸、胆道手術後 |
膵管ドレーン | 膵手術後 |
【メカニズムや観察の注意点などについて解説】
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胸腔ドレーンの目的と挿入部位・排出メカニズム
ドレーンの形状別分類
<フィルム型>
フィルム型・多穴型・ペンローズ型があり、ペンローズ型がよく使用されます。毛細管現象を利用するため、ドレーンの壁に多数の孔または溝を持ちます。開放式ドレナージに使用され、素材※が柔らかく挿入による違和感や苦痛は少ないですが、内腔が閉塞しやすいというデメリットがあります。
※毛細管現象:液体が細い管の中や隙間を上昇(または下降)する現象
<チューブ型>
デュープル型・プリーツ型・単孔型・平型などがあり、そのうちデュープル型とプリーツ型は毛細管現象を利用して排出を行います。管状のドレーンで、内腔に小孔をもうけることで排液が良好になるよう工夫されています。閉鎖式ドレナージで使用され、フィルム型よりも内腔が閉塞しにくくなっています。
<サンプ型>
内腔が2腔型・3腔型などの多重構造になっているため、吸引圧をかけてもドレーンの先端が周辺組織を吸着することがありません。サンプ効果※があり、空気が逆流することで逆行性感染のリスクがあります。閉鎖式ドレナージで使用され、大量の消化管液を身体の深部から吸引して排出することができます。
※サンプ効果:一方の腔から外気を導入し、他方の腔から体液を排出すること
<ブレイク(マルチスリット)型>
内腔はなく、4本の吸引溝(スリット)で構成されています。内腔がないため閉塞しにくく、広範囲にドレナージを行うことができます。
ドレーンの管理
固定の仕方
ドレーン挿入部はガーゼ・テープ・ドレッシング材などを使用し、抜けることのないように固定します。ドレーンを固定する際は、まず皮膚にテープを1枚貼り、その上からテープをΩ型に貼って固定します。固定部にマーキングをすることでズレがないかどうかを確認しやすくなります。
ドレーンの先に排液バッグが付いている場合は、外れることのないようにテープなどでしっかりと接続するようにします。排液バッグの位置は、挿入部にテンションがかからず、ドレナージにも支障のないような場所を選びます。排液の逆流を防ぐため、排液バッグは挿入部よりも下になるよう固定しますが、検査等でドレーンを持ち上げる必要がある場合は、一時的に鉗子(カンシ)でクランプします。
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排液のアセスメント
排液量や性状はドレーンの挿入部位によって違いがあるため、正常な排液はどのようなものかを知っておきましょう。また、術後であれば術式や患者さんの状態からある程度の予測を立て、排液量の観察をします。排液量に短時間で急激な変化があった場合は急を要することもあるため、バイタルサインと合わせ、アセスメントの上で必要であれば医師へ報告します。
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感染管理
感染の原因には挿入部の細菌汚染と排液ルートからの逆行性感染があります。排液に混濁や浮遊物を認める場合は感染を疑います。排液が停滞すると感染の可能性が高まるため、排液が少なくなったら早めにドレーンを抜去します。ドレーンの閉塞や排液のうっ滞を予防するためにミルキングを行いますが、ドレナージの種類や病態によってはミルキングが禁忌のものもあるため注意が必要です。医療者が菌を媒介することがないよう、手袋の装着と処置前後の手洗いは必須です。
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自己抜去予防
まずは患者さんにドレーンが「どこに」「どのように」入っているのかを説明しますが、状況をイメージしにくいようであれば患者さんに直接見てもらう、触ってもらうということも有効です。わかっていてもうっかり引っかけてしまうということがあるため、ドレーンの配置には注意します。認知症などで理解が困難な場合は、つなぎを着るなどドレーンが見えないような工夫をします。せん妄患者さんも同様に注意が必要です。自己抜去の危険性が高いと考えられる場合は、可能な限り早期の抜去を検討します。
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その他
ドレーンの挿入によって感じる苦痛はさまざまですが、疼痛も患者さんによって感じ方が大きく異なります。痛みの訴えがある場合は、強さの程度・いつから・どのように・どんな時に痛むのかを確認します。痛みは感染の徴候であることもあるので、注意が必要です。
また、ドレーンによる圧迫やテープなどにより皮膚トラブルを起こすこともあり、こまめに観察をするようにします。このような治療上に起こる創傷は医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)と呼ばれ、近年注目されています。
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【参考文献】
1)小野寺久 監:ナースのためのやさしくわかる ドレーン・カテーテル管理.第1版.ナツメ社,2013,:p.10.17‐20.23‐28.
2)竹末芳生,他編:術後ケアとドレーン管理のすべて.第1版.照林社,2016,p.218-223.234-243.