1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. 老年看護
  5. 老年看護|高齢者の特徴、アセスメントとケア、看護計画

【連載】テーマごとにまとまった記事が読める! まとめ記事

老年看護|高齢者の特徴、アセスメントとケア、看護計画

  • 公開日: 2022/8/10

老年看護とは

 老年看護とは、高齢者とその家族がこれまでの人生で培ってきた経験や考え方、人とのつながりを尊重し、その人らしく生活するための手段や方法を共に考え支援するものです。

 加齢や身体機能の低下に伴いできることが限られたり、大切な存在との別離を経験したりしますが、「年齢を重ねる=ネガティブなこと」ではありません。社会生活の中で担ってきた役割の変化や老いを前向きに受容できれば、それが老年期でその人らしい生活を送るきっかけとなります。

老年看護において大切なこと、老年看護における看護師の役割

 老年期は人生の最終ステージです。人生の振り返り、慢性疾患との共生、死の受容などの過程を経て、その人の人生を完成させる段階でもあります。

 社会生活からのリタイアを経験し、自身の存在価値や意義を見失いがちな時期ともいえるため、変化に適応できるよう支援するとともに、高齢者とその家族が前向きにこの時期を過ごせるよう、高齢者の特徴や役割を理解したうえでかかわりを考えることが大切であり、看護師に求められる役割といえます。

 また、老年看護においては、治癒を目指すというよりも、その人が持っている残存機能に目を向けたケアの提供が求められます。

高齢者の特徴

 前述したように、老年看護においては、高齢者の特徴に合わせたかかわりやケアが求められます。高齢者の主な特徴を理解しておきましょう。

身体機能・精神機能の低下

 高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、基礎体力も低下しているため、一度状態が悪化すると改善までにより多くの期間を必要とします。長期的な安静によりADLや筋力が落ちるなど身体機能が低下しやすく、転倒による骨折のリスクにつながる可能性があるほか、認知症発症のきっかけになることもあります。

 記憶力・分析力・学習力といった精神機能の低下を認めるのも特徴です。機能低下の程度は個人差があり、高齢者の場合はこれまでの生活習慣、基礎疾患、社会的地位に左右されます。

症状が出にくい、自覚症状に乏しい

 「熱も呼吸苦もないにもかかわらず、SpO2を計ると94%までしか上昇せず、画像検査を行ったところ肺炎が発見された」といったように、高齢者では疾患特有の症状が表れにくかったり、そもそも自覚症状の訴えがないというようなケースがよくみられます。状態の悪化が見過ごされやすいため、自覚症状に頼らず、いつもと様子が違うところがないか注意して観察する必要があります。

【関連記事】
第1回 【高齢者看護】加齢による機能低下とそのメカニズム
第3回 加齢による3つの機能低下と症状
第1回 高齢者とは―その3つの特徴―
高齢者の身体機能低下を理解する
Challenge! 高齢者ケア~高齢者のみかたを変える~
高齢者の機能低下をアセスメント

高齢者で主にみられる症状に対するアセスメントとケア

 高齢者は身体・精神機能の低下に伴い、さまざまな症状(障害)が生じます。それぞれの症状について、アセスメントとケアのポイントを押さえておくことが大切です。

転倒・転落

 たとえ患者さんの残存機能が高く保たれていても、転倒・転落のリスクはあるものとしてかかわります。入院時には必ず転倒・転落チェックリストを用いて、リスクを把握したうえでケアプランを立てていきます。チェックリストによる評価は定期的に行い、患者さんの状態に見合ったケアプランとなるように努めます。

 患者さんの1日の生活リズムや居住空間を確認し、ベッドから布団への変更やセンサー使用を検討するほか、ベッド周囲の整理・掃除(床に物を置かない、水漏れがある場合はすぐに拭き取るなど)をこまめに行い環境整備に努め、転倒・転落リスクを減らします。

【関連記事】
第4回 転倒・転落の原因は?なぜ起きる?
第5回 転倒・転落の観察とアセスメント
第6回 転倒・転落の予防とケアのポイント
第7回 転倒・転落 在宅に向けての視点(いきいき転倒予防運動)
[転倒・転落]急変につながる高齢者のリスク

麻痺・拘縮

 すでに麻痺や拘縮がある場合は、どれだけの機能が残っているか基本的日常生活動作(BADL)をもとにアセスメントします。

 麻痺側は感覚が乏しく、骨折、脱臼、皮膚損傷といったリスクがあるため、クッションや枕を用いて良肢位を保てるようにしたり、皮膚の保護を行ったりします。一方で、動かさないことによって肺塞栓症、拘縮の進行、褥瘡形成などのリスクも高まるため、定期的な体位変換やリハビリテーションの早期導入が行えるように調整します。

【関連記事】
第8回 麻痺・拘縮はなぜ起きる?
第9回 麻痺・拘縮の観察とアセスメント
第10回 麻痺・拘縮のケアと予防のポイント
第11回 麻痺・拘縮-在宅に向けての視点
麻痺(運動麻痺)の看護|種類や評価方法、メカニズムなど
拘縮患者さんの清拭・陰部洗浄のコツと注意点

摂食・嚥下障害

 高齢者では、歯の欠損による咀嚼力低下、口腔から食道にかけての筋力低下、食への無関心など、飲み込みに関連した機能低下が起こってきます。

 むせ、湿性咳嗽、喀痰、口腔内食物残渣、食欲低下、体重減少などを認めた場合は、摂食・嚥下障害を疑います。摂食・嚥下障害では、誤嚥性肺炎発症のリスクが高まるため、言語聴覚士による嚥下訓練などにスムーズにつなげるのと同時に、どの部分の機能低下が原因となっているかを適切にアセスメントします。

 食事は嚥下機能に応じた形態に変更する、食事時の姿勢や介助法を統一する、一人で食べられる場合は詰め込み食べにならないよう一口量の確認と調整をするといった対応を行うことも大切です。

【関連記事】
【誤嚥性肺炎を予防】摂食・嚥下障害の観察・ケアのポイント
第4回 誤嚥と誤嚥性肺炎の予防―不顕性誤嚥を例に
第5回 摂食嚥下リハビリテーションー嚥下訓練と食支援
【図解】誤嚥を防ぐポジショニング

脱水、低栄養

 高齢者は成人に比べて体液量が少ないうえに、口渇感などの自覚症状に乏しく、脱水になりやすい状態です。in-outバランスや皮膚状態を確認し、脱水の徴候を拾えるように心がけます。また、食欲低下や食事摂取量の低下により低栄養に陥りやすいため、入院早期から栄養アセスメントを行い、患者さんの状態に合わせて管理していくことが大切です。

 具体的な対応として、食事内容の調整、とろみ剤の活用、飲水の促し、必要時の点滴などを行い、脱水や低栄養に陥るのを防ぎます。

【関連記事】
【高齢者の脱水・食欲不振】アセスメントと予防・ケアのポイント
脱水(高張性・低張性・等張性)の原因と検査・治療・ケアのポイント
脱水のアセスメント
水分補給に欠かせない! 在宅でのとろみ付けを上手に指導するコツとは【PR】
脱水の看護計画|脱水で入院してきた高齢の患者さん
第38回 認知症で食欲不振から脱水になった患者さん
第43回 既往歴に脳梗塞と高血圧がある、脱水で入院してきた患者さん
脱水ってどんな状態?
「脱水」への輸液療法|インアウトバランスから見る!
脱水(高張性・低張性・等張性)の原因と検査・治療・ケアのポイント
高齢者の栄養管理の現状を聞く!
高齢者の低栄養を防ぐ! 病棟から地域まで、患者さんに栄養管理を継続してもらう工夫【PR】
主観的包括的栄養評価(SGA)

排泄障害

 排泄障害の原因を丁寧にアセスメントし、個々の患者さんに合わせて対応していきます。

 高齢者では、食事量・運動量の低下、腸蠕動の低下による便秘が多くみられます。食事内容を見直す、適度な運動を心がける、場合によっては緩下剤を使用するなどし、排便を促します。

 膀胱括約筋や肛門括約筋の筋力の低下により便失禁が生じている場合は、リハビリテーションと薬物療法で改善を図ります。麻痺や拘縮で移動に時間がかかり、トイレまで間に合わない場合は、排尿日誌を活用してパターンを把握し、トイレ誘導やポータブルトイレの活用について検討します。

 排泄の失敗は患者さんの自尊心を深く傷つけます。汚染された衣類・寝具を交換する際は、患者さんの気持ちに十分配慮した声かけや対応を心がけます。

【関連記事】
【尿失禁の看護】 尿失禁の種類・原因とアセスメント
加齢が排泄・スキンケアにもたらす「6つの悪影響」
排尿日誌のつけ方|排尿ケアに必要な看護技術
排尿日誌の読み方|排尿ケアに必要な看護技術
第3回 排尿機能に関する情報を収集しよう|病棟看護師に求められる排尿の管理とケア①
第4回 包括的排尿ケアを実践しよう!|病棟看護師に求められる排尿の管理とケア②
排尿誘導の間隔はどうやって決める?
最終回 高齢者の失禁ケアを見直す
適切なおむつの選択が、便失禁患者さんをスキントラブルから守りQOLを高める【PR】
おむつの種類と選択・交換頻度の見極め
歩行や座位が可能な高齢患者さんへのおむつケア【PR】

せん妄

 高齢者は誰もがせん妄になる可能性があります。アセスメントツールを活用して状態を把握し、早期介入につなげられるようにします。

 ベッドサイドに家族の写真や慣れ親しんだものを飾る、日付や時刻を知らせる、これから行うケアについて丁寧に説明するなど、自分が置かれている状況を把握しやすい環境づくりを行うとともに、処置を最小限にして過剰な刺激を避けるようにし、家族に面会に来てもらうなど安心できる環境づくりを心がけ、せん妄の発症や症状の進行を防ぎます。

 高齢の患者さんでは、ベンゾジアゼピン系をはじめ、せん妄の原因となる薬剤を服用している場合が多々あります。せん妄発症リスクの高い薬剤を使用している場合は、薬剤の調整について医師に相談します。

【関連記事】
【高齢者のせん妄】症状とアセスメント・ケアのポイント
せん妄になりやすいのはどんな患者さん?
せん妄は予防できる?
せん妄と認知症の見極め方は?
入院中のせん妄予防プログラムHELPとは?
これで対応に困らない! せん妄の基本

認知症

 認知症の症状には、記憶障害、見当識障害、遂行機能障害、失行(失語、失認)といった中核症状と、中核症状に付随して生じる周辺症状(徘徊、妄想、不潔行為など)があります。

 中核症状は脳の器質的な変化に伴って起こりますが、周辺症状は環境やケアの方法によって症状の表れ方に差が生じる場合があります。患者さんがなぜそのような行動をとったのか、そこにある理由や背景についてアセスメントを行い、適切なケアにつなげます。

 認知症の患者さんは意思の疎通を図るのが難しく、治療やケアに影響することもあります。患者さんに治療やケアについて説明する際は、患者さんの目を見て簡単な言葉でゆっくり話す、1回に伝える内容は1つまでにするなど、患者さんの不安を軽減できるようなかかわりを心がけることが大切です。

【関連記事】
ナースのための認知症ケア
認知症とは? 診断方法と4大認知症の特徴・症状・経過
認知症・認知機能障害の看護ケア|原因、症状、アセスメントのポイント
せん妄と認知症の見極め方は?
うつ病・認知症の観察とアセスメントのポイント
認知症の「BPSD」を知る! 見極める!
認知症でコミュニケーション不良の患者さんにどう対応する?
いつでも・どこでも・誰でもレクチャー~認知症対応力向上を目指した院内教育ガイドの作成~
【精神看護】 最終回 認知症患者の看護の仕方
DASC-21(ダスク-21、地域包括システムにおける認知症アセスメントシート)
FAST
臨床的認知症尺度(Clinical Dementia Rating:CDR)
改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

老年医学・看護に関する学会(日本老年医学会、日本老年看護学会など)

 老年看護に関する代表的な学会として、老年看護の発展や老年看護専門職の育成を図るために設立された、日本老年看護学会(http://www.rounenkango.com/)があります。

 また、高齢者医療への貢献と向上をめざし、日本老年医学会、日本老年社会科学会、日本基礎老化学会、日本老年歯科医学会、日本老年精神医学会、日本ケアマネジメント学会、そして日本老年看護学会を加えた7学会で日本老年学会を構成しています。

看護計画

「寝たきり状態で拘縮を認める高齢患者さん」を例に看護計画を紹介します。

看護問題
#1 長期臥床による拘縮に関連した身体可動性の障害

看護目標
・拘縮の進行を防ぎ、残存機能を生かした生活ができる

観察計画(O-P)
・バイタルサイン
・意識レベル
・拘縮の部位と程度
・関節可動域
・皮膚状態
・疼痛の有無と程度
・一日の生活リズム、離床時間、リハビリ実施時間
・ADL
・活動やリハビリテーションに対する本人の意欲の程度

ケア計画・援助計画(T-P)
・良肢位の保持
・定期的な体位変換と除圧
・残存機能に応じた自助具の選択と活用(カトラリー、ベッド、靴、車いすなど)
・拘縮に対するリハビリテーションを多職種と連携して実施する
・患者さんとその家族の思いの傾聴
・ベッドサイドの環境調整
・疼痛コントロール
・リハビリテーションや自動運動への意欲が保たれるよう、動機付けを行う

教育計画(E-P)
・リハビリテーションや身体を動かすことの必要性について説明する
・自助具の使い方を説明、指導する

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

呼吸困難とは|原因、重症度の判定、対処法、アセスメント、看護計画

呼吸困難とは  吸気や呼気の際に感じる不快な感覚の総称です。息苦しい、息切れなど、患者さんの自覚症状であるためさまざまな表現で症状を訴えます。 呼吸困難の訴えの一例 息が苦しい 息が吸いづらい、吐きづらい 胸が苦しい 呼吸がしんどい、つらい  など 呼

2022/8/31

アクセスランキング

1位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
2位

簡単! 楽ちん! 点滴の滴下数計算 2つの方法

皆さんご存知の通り、点滴指示書には様々な書き方があります。 よくあるパターン ●流速が書かれている (例)「○○輸液500ml 60ml/h」 ●1日の総量が書かれている (例)...

251296
3位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
4位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・...

250751
5位

看護問題リスト・看護計画の書き方|看護記録書き方のポイン

ここでは一般的な看護記録を解説しています。また、看護診断名にNANDA-I看護診断を使用しています。実際の記録は院内の記録規定に従いましょう。 【関連記事】 *看護計画の「観察項目...

249544
6位

転倒転落リスクに対する看護計画|高齢で転倒の恐れがある患

高齢の転倒転落リスクに関する看護計画 加齢に伴い筋力や平衡感覚などの身体機能が低下することに加えて、疾患やそれに対する治療、使用する薬剤の副作用、入院環境などさまざまな要因で転倒や転落しやすくな...

313501
7位

心不全の看護|原因、種類、診断、治療

*2020年4月30日改訂 心不全とは  生活習慣病やさまざまな基礎疾患、加齢などが原因となり、心機能、特に多いのは左心室のポンプ機能が低下することで起こります。心臓のポンプ機能の代償...

249812
8位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
9位

バイタルサインとは|目的と測定の仕方、基準値について

*2019年3月13日改訂 *2020年4月15日改訂 *2022年4月28日改訂 バイタルサインとは  バイタルサインとは「生命徴候」のことで、「脈拍」「呼吸」「体温」「血圧」「...

249791
10位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636