温罨法とは|目的・効果・注意点 〜根拠がわかる看護技術
- 公開日: 2018/3/31
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温罨法とは
身体の一部に温熱刺激を与える(温める)看護技術です。患者さんの安楽・精神的安定のために重要なケアです。
どんなときに行う?
治療として医師が指示する以外に、看護師の判断で行うこともあります。また、患者さんの希望により実施する場合もあります。
温罨法の効果
温熱刺激が血管・循環器系、筋肉・神経系に作用して、局所や身体を加温・保温し、血管拡張や血流増加、代謝亢進などを促します。そのため、単に身体を温めるだけではなく、疼痛緩和、入眠の促進など、さまざまな効果をもたらします。
腰背部や腹部を温める温罨法では、便秘症状を緩和する効果があるとされ、検証が行われています。
新陳代謝促進 |
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うっ滞の除去 |
循環血液量の増加(血行促進) |
筋の緊張・拘縮の除去 |
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疼痛緩和(筋肉痛・肩こり・関節痛・がん性疼痛などの慢性疼痛) |
機能訓練実施前の処置 |
安楽 |
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悪寒時の保温 |
身体加温・保温(体温・皮膚温の上昇) |
腸蠕動促進(排便促進、排尿促進) |
入眠促進・リラクセーション(鎮静) |
精神的興奮の安静・安楽 |
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温罨法に用いる道具の種類
温罨法に用いる道具には、さまざまな種類があり、乾性(乾いた状態)と湿性(湿った状態)に分かれます。湿性のほうが熱伝導率が高い、つまり温かさが伝わりやすくなります。
また道具によって、使い方や注意点は異なります。医療施設では、湯たんぽやホットパックを使用することが多いでしょう。
<乾性>
- 湯たんぽ(ゴム製・プラスティック製・金属製)
- カイロ
- 電気あんか
- 電気毛布 など
<湿性>
- ホットパック
- 温湿布(湯で絞ったタオル)
- 温パップ(温パップ自体は加温されていないが、血流促進効果が期待できる成分が含まれているため、温かく感じる)
コラム ナーシングアドバイス
温罨法は看護師の判断で行うことができます。効果が期待できる患者さんに対して積極的に行いたいケアです。私自身も、足が冷えて眠れない、便秘で苦しんでいる患者さんに温罨法が有効だった経験があります。
患者さんが希望される場合もありますが、看護師が患者さんの訴えにいち早く気づき、温罨法を行うことが理想的です。そうすることで、患者さんに安楽をもたらすだけではなく、症状の悪化を防ぎ、より患者さんに負担のかかる医療処置をせずにすむこともあります。
例えば、便秘の患者さんの場合、温罨法により自然排泄が可能になれば、摘便や浣腸に至ることもありません。
しかしながら、温罨法は使用法や患者さんによっては、侵襲を与えかねないケアだということも忘れてはいけません。注意点をよく把握しておきましょう。
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温罨法の注意点
温罨法の禁忌・注意したい患者さん
温罨法によるトラブルで、もっとも多いのは熱傷です。熱傷は、皮膚に60~65℃以上の温熱刺激が加わり、組織細胞たんぱく質の熱凝固細胞が死滅することで生じます1)。また、心地よさを感じる温度(40℃程度)であっても、長時間にわたり温熱刺激を与え続けていると低温熱傷を起こすリスクがあります。
特に、意識障害や知覚鈍麻があり、熱さを感じることができない患者さんでは注意が必要です。看護師が継続して観察することができない場合は実施しないようにしましょう。
患者さんの状態によっては、温熱刺激の効果が侵襲を与えることがあります。例えば、出血傾向のある患者さんでは、血管拡張や血流増加により出血が助長されるリスクがあり、急性期の炎症や関節リウマチなどでは代謝が上がることにより炎症が増悪してしまう恐れがあるため、禁忌となります。
その他、皮膚が脆弱な患者さんや全身衰弱のある患者さんでは、実施の可否を検討する必要があります。実施する場合は時間や温度に配慮するなど慎重に行いましょう。
禁忌 |
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・関節リウマチや痛風 |
・出血傾向 |
・虚血肢(血流改善による血栓閉塞のリスクがあるため) |
・消化管閉塞・穿孔(腸蠕動回復に伴う穿孔のリスクがあるため) |
慎重に実施する必要のある患者さん |
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・意識障害・知覚鈍麻、麻痺がある(継続した観察ができない場合は禁忌) |
・皮膚が脆弱な患者さん |
・全身衰弱のある患者さん(代謝亢進による影響) |
・高齢者(知覚が低下しているため) |
実施時の注意点
実施前には、患者さんの状態をアセスメントします。また、道具に破損や汚染がないか、 温罨法の目的に応じて、適切な温度になっているかを必ず確認します。
実施中は定期的に患者さんの状態を観察することが大切です。効果が得られているか、発赤や水疱など皮膚の異常はないか、発汗や熱感はないか、症状が悪化していないかなどを確認しましょう。また、道具の状態や温度の確認も怠らないようにします。
道具別注意点
使用する道具によって、注意点が異なります。電気あんかや電気毛布は、医療施設の備品にはないことが多いですが、患者さんが持ち込むこともあるので注意が必要です。
<湯たんぽ>
- カバーで覆い、皮膚に直接あてず、必ず10cm以上、離して使う。
- 空気が入っていると、膨張して栓が抜けるリスクがあるため、空気を抜く(ゴム製の場合)。
- お湯が漏れていないか、定期的に確認する。
<ホットパック>
- カバーやタオルで覆う。
- 貼付する場合、時間は10~15分程度とする。
<電気あんか・電気毛布>
- 電気による影響があるため、ペースメーカーや生体モニターを装着している患者さんには使用しない。
引用・参考文献
1)志自岐康子他編:ナーシング・グラフィカ 基礎看護学3 基礎看護技術.メディカ出版,2014.
2)任 和子他編:根拠と事故防止からみた基礎・臨床看護技術.医学書院,2014.
3)竹内 修二他:解剖生理の視点でわかる看護技術の根拠Q&A.照林社,2011.
4)村中 陽子他編・著:学ぶ,試す,調べる看護ケアの根拠と技術.医歯薬出版,2013.
5)竹尾惠子他監:医療安全と感染管理をふまえた看護師技術プラクティス.学研メディカル秀潤社,2014.
6)佐居由美:ANRAKU In Nursing.http://plaza.umin.ac.jp/sakyo/
7)聖路加国際大学学生用WEBサイト ルカーツ
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