外来がん化学療法の基本
- 公開日: 2018/5/8
がん治療において多くの場面でみられる化学療法は、新たな治療薬等が登場するなど目まぐるしく進化しています。安全な治療のためには、その現状と基本、さらに外来での看護を理解しておくことが大切。まずはがん化学療法の基礎的な知識と外来での実践について確認しましょう。
がん化学療法と薬剤
がんは、異常な細胞の集合体です。正常な細胞は、細胞分裂を繰り返す中で細胞死(アポトーシス)に至る過程がプログラムされ、一定以上に増殖することはありません。しかし、がん細胞は、がん抑制遺伝子の発現抑制や欠如、がん遺伝子の活性化やアポトーシスの抑制などから、細胞分裂を繰り返し増殖します。がん細胞が109個以上になると、直径1cm程度の小さな腫瘤として診断が可能となります。
がんの治療には、「手術療法」「放射線療法」「化学療法」があり、化学療法は点滴や内服で抗がん薬を用いる治療のことです。手術療法や放射線療法は局所的な治療であるのに対し、化学療法は全身治療となり、治療目的は、がん種や病期によって、「治癒」「延命」「症状緩和」に分類されます。化学療法が適応になる場合、進行・再発がんを対象とした化学療法単独治療と、手術療法の前後での実施や放射線療法と組み合わせて行う集学的治療があります。
化学療法に用いる薬の種類
がん化学療法(以下、化学療法)には、殺細胞性抗がん薬、分子標的薬、ホルモン製剤が使用され、最近では免疫チェックポイント阻害薬も登場しています。
[殺細胞性抗がん薬]
従来の化学療法は、殺細胞性抗がん薬が主流でした。殺細胞性抗がん薬は、がん細胞の核酸(DNA、RNA)に作用し、細胞周期を阻害し、抗腫瘍効果を発揮します。しかし、がん細胞だけではなく、細胞分裂の盛んな正常細胞にも作用するため、骨髄抑制や脱毛などの副作用が出現することになります。殺細胞性抗がん薬の種類は以下のようになります。
アルキル化薬は、DNAの二重らせんを結合させることで、DNAの複製を阻害し抗腫瘍効果を発揮します。白金製剤は、DNAのらせん構造に橋を架けたように結合させ、DNAの合成を妨げることで抗腫瘍効果をもたらします。核酸塩基に類似した構造をもつ代謝拮抗薬は、核酸の合成過程や核酸合成に必要な酵素を阻害することで、DNAの合成を阻害し腫瘍の作用を阻害します。ピリミジン代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬、プリン代謝拮抗薬に分けられます。