今見直したい薬剤耐性(AMR)の現状と対策ー看護師に求められることを考えよう
- 公開日: 2018/5/20
院内感染対策が業務の中で日常的に行われるようになっている今、看護師の皆さんは薬剤耐性(AMR)をどのように捉えていますか。その背景には抗菌薬の適正使用にかかわる問題があるとされているため、処方を行う医師の課題と考えがちですが、看護師も無関心ではいられない現状があります。国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターの具芳明さんに、最新の動向をうかがいました。
薬剤耐性と抗菌薬には切っても切れない関係があります
ペニシリンの発見以来、感染症の治療に大きく貢献してきた抗菌薬。その開発には薬剤耐性(AMR)がかかわっており、新たな耐性をもった菌に対抗するため新たな抗菌薬が開発されるということが繰り返されてきました。結果、多くの種類の抗菌薬が開発され、さまざまな感染症が「不治の病」ではなくなったわけです。しかし、1980年代以降抗菌薬の開発が減少すると、新たな薬剤耐性菌による影響が問題になってきました。現在、世界では薬剤耐性が原因で70万人が死亡し、2050年にはその数が1000万人に達するともいわれています。
薬剤耐性は、抗菌薬から生き延びた病原菌の一部が、抗菌薬に対して抵抗力をもつ菌へと変化することで生じます。また、わずかですがもともと薬剤耐性菌が体内にいることもしばしばあります。薬剤耐性菌は、体内にあってもすぐに感染症が引き起こされるわけではありません。しかし、抗菌薬を必要以上に使用し続けることで、人間が本来必要とする細菌が死滅し、薬剤耐性菌が増殖しやすい環境になって、感染症の発症するリスクが高まってしまいます。
直接感染だけでなく、手術や医療機器に関連した医療関連感染症(HAI)でも薬剤耐性が問題になっています。