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【連載】注射・採血・輸液の手技徹底攻略!

静脈注射時の血管探しのコツ

  • 公開日: 2019/2/20

Q.静脈注射:血管探しのコツを教えてください

A.血管を探しやすくするためのさまざまなテクニックを駆使し、焦らず探しましょう。

 静脈確保は看護師の業務の中でも、比較的実践する頻度が高い看護技術です。ワンショットの静脈注射または輸液を行うための静脈注射が想定されます。駆血しなくても静脈を目視できる患者さんもいれば、高齢で血管が細い、脱水で血管が怒張しない、抗がん剤治療を繰り返していて血管が硬くなっている、など患者さんの血管の状態はさまざまです。静脈注射を行う際に、いかに穿刺に適した血管を見つけるかは静脈注射の成功の可否を決める重要な手順の一つです。

コツ①まずは、血管の走行、解剖生理を理解しましょう

静脈の走行

コツ②適切な圧力で駆血する

 あまりきつく駆血帯を締めると動脈まで締めてしまい、かえって血流を悪くします。駆血帯は橈骨動脈が触れる程度のきつさに締めましょう

コツ③血管が怒張する環境を作る

腕を心臓よりも下に下げる
 心臓よりも下にすることで腕に血液が集まりやすくなります。座位であれば心臓よりも低い位置に手台を置きましょう。それでもうまくいかない場合は、ベッドに臥位になってもらいベッドの横に腕を下げてもらいます。

親指を中にして握る
 腕の筋肉が収縮して血管が怒張しやすくなります。

クレンチング
 手をグーパーグーパーと握ったり開いたりする方法です。静脈血が腕に停滞しやすくなり静脈が怒張しますが、採血が一緒にある場合には、血清カリウム値が高くなる可能性があることを知っておく必要があります。

腕を温めてみる
 温めることによって表在静脈に一時的に血流の増加を認めるため、血管が浮き出てきます。40℃前後で15分間の上肢温罨法が静脈怒張に有効であったとの報告があります1)
 
水分や食事を摂ってもらう
 脱水などの影響で血管のボリュームがなくなっている場合には、水分や食事を摂取すると血管が怒張しやすくなることがあります。ただし、この方法は水分や食事の制限がない状態に実施可能な方法です。

コツ④目視だけではなく、実際に触ってみる

 目視ではわからなくても、実際に指で触ってみると太い血管が見つかることがあります。特にふくよかな方は、この傾向が強いです。指先に神経を集中し、じっくり触れて探してみましょう。

コツ⑤焦らず探しましょう

 じっくりと両腕を探してみましょう。場合によっては、上肢ではなく下肢の方に太く柔らかい血管が見つかる場合もあります。また、患者さん自身に、「いつもどのあたりから採血や点滴をしていますか?」と聞いてみましょう。患者さんにとっても、針を何度も刺されることは苦痛なことです。血管が出にくい患者さんは、血管確保しやすい部位を自分で知っていることも多いです。焦らず恥ずかしがらず、思い切って患者さん自身に聞くこともよいのではないでしょうか。


【引用・参考文献】

1)佐々木新介:末梢静脈穿刺に効果的な上肢温罨法の検証.日本看護技術学会誌 2014;12(3):12-23.
2)佐藤エキ子,他,編:ナースが行う静脈注射 -安全に実施するための知識と技術- 南江堂.
3)山本加奈子:輸液管理の基本をおさらいしよう 点滴静脈注射の基本手順,看護技術 2013;59(1):26-32.

【関連記事】
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