【連載】COPDとは全く違う! 知ってる? 間質性肺炎の看護
間質性肺炎患者への教育・指導のポイント|在宅療養中の呼吸、運動、リハビリテーションへの援助
- 公開日: 2019/8/11
呼吸困難感が出現するタイミングに注意
間質性肺炎は、肺でガス交換を行う肺胞―毛細血管関門(血液とガスの接点)が肥厚しているため、酸素の拡散が遅れ(拡散障害)、動作を契機に経皮的酸素飽和度の低下がみられます1)。このため、動作の最中は呼吸困難感を自覚しにくいことがあります。
動作中に経皮的酸素飽和度の低下がみられなくとも、少し遅れて必ず経皮的酸素飽和度の低下がみられ、呼吸困難感が出現します。呼吸困難感が出現する機序は、疾患により異なるため(表1)、必要とされる援助も変わります。
呼吸、運動、リハビリテーションへの援助
呼吸障害により異なる呼吸法
労作時に低酸素血症を呈する間質性肺炎患者への呼吸リハビリテーションは、有効性があるとはまだいえない状況にあります。2014年のコクラン・レビュー*では、有酸素運動を中心とした運動療法は、生活の質の改善について低いエビデンスがあると報告しています10)。
*コクラン・レビューは、医学論文のシステマティック・レビューを行う国際的プロジェクト。コクラン共同計画が作成している。
間質性肺炎に有効な呼吸法については、今後の検証が待たれますが、Egan11)は、非薬物的療法の1つに呼吸法の習得を挙げています。
呼吸法とは、呼吸練習と呼ばれることもある呼吸理学療法の1つです。呼吸パターン(1回換気量、呼吸数、呼吸運動の強調部位)を意識的に変化させることによって、呼吸仕事量の軽減や、換気効率の改善などを試みる方法で、日常生活行動時の呼吸困難感を和らげることを目的としています12)。
呼吸法には、口すぼめ呼吸がありますが、気道・気管支が狭くなる病態を示すCOPDでは、推奨グレードBであることからも、その有効性が確認されています(表2)。しかし、間質性肺炎の呼吸機能障害は拘束性障害であり、特に特発性肺線維症は、気道・気管支が狭くなる病態ではなく、肺胞ならびに間質が厚く線維化する病態です。よって、口すぼめ呼吸の実施により、乾性咳嗽や、さらなる呼吸困難感の誘発が推測されます。このため現在は、横隔膜呼吸(腹式呼吸)を生かした呼吸法の練習が主軸となっています。
次に深呼吸ですが、肺が膨らみにくくなる(肺コンプライアンスの低下)拘束性障害を呈する間質性肺炎では、肺や胸郭を動かす呼吸仕事量を増大させ、深い吸気により咳を誘発させる可能性も考えられます。そのため、呼吸パターンを逸脱させるほどの深呼吸は、避けたほうがよいとされています。
このように呼吸障害により、有益な援助となり得る呼吸法が異なるため、知識に基づいた援助が重要です。そして、治療の選択肢は少なくとも、患者が少しでも楽な呼吸で生活ができるよう、取り組めることがあるという認識を強める援助は、その人らしさを支える援助になると考えます。