【連載】コーチング・ティーチングを活かしたCKD看護指導の極意
知っておきたいCKD患者への指導成功のコツ
- 公開日: 2019/12/8
CKD患者に理解してもらい、実施・継続してもらうためには、行動変容を促すかかわりが必要となります。
この連載では、コーチングとティーチングを使い分けて行う、CKD患者や後輩への指導方法を紹介します。
第1回となる今回は、行動変容を促すかかわりとコーチング・ティーチングの関係について解説します。
価値観形成を尊重しつつ変容させる
生活習慣病を原因とした透析導入が多くを占める
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)とは、原因を問わず、慢性的に腎機能が低下した状態を指す病名のことです。このCKDが進行して腎不全になると、体内から老廃物が排泄できなくなり、最終的には透析や腎移植など腎代替療法を受ける必要があります。
CKDとは、どのような原因であろうと腎機能が低下した状態だと述べましたが、透析導入に至る原因となる疾患が何かをみてみましょう。
日本透析医学会の統計調査によると、1998年に糖尿病性腎症が慢性糸球体腎炎を抜き、原疾患第1位となって以来、現在も4割以上が、糖尿病が原因で透析導入に至っています。また高血圧・動脈硬化が原因といわれる腎硬化症も増加しており、この2つを合わせると透析導入原疾患の半数以上を占めています(図1)1)。
図1:透析導入患者の主要原疾患の推移
言い換えれば、腎炎など腎臓そのものが悪くなるケースより、糖尿病・高血圧症・動脈硬化症など、生活習慣病が原因で腎臓が悪くなり、透析を導入するケースが多くを占めているということになります。そのため、CKD患者の生活習慣の改善・管理は大変重要になってきます。
しかし、生活習慣とは、生まれ育った家庭や地域の慣習、環境が大きく影響するなど、非常に個別性が強いものです。さらに長期間にわたり繰り返し行う行動や習慣は、それが当たり前だという個々の価値観が形成されており、それらは年齢を重ねれば重ねるほど変えることが容易ではありません。そのような患者に対し、個別性・価値観を尊重せず、押しつけるような態度で指導を行ってしまうことは、効果的でないどころか野蛮な行為ともいえます。私たち医療者は、生活習慣の指導や管理にかかわる際、患者の個々の生活、それも習慣というプライベートな部分に踏み込んでいるといった意識を常に忘れてはいけません。
そこで本稿では、CKD患者の生活習慣の管理を行う際、看護師が陥りやすい傾向とその対策についてお話ししたいと思います。