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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

J-HAQ(m-HAQ)|関節リウマチの身体機能障害評価指標

  • 公開日: 2019/10/1

1.J-HAQ、関節リウマチの機能状態分類(アメリカ・リウマチ学会の分類基準)、Steinbrocker分類のクラス分類、移動動作藤林分類は何を判断するもの?

 リウマチ患者さんがどれだけのレベルで日常生活をおくれるのか、自立度や身体機能障害を評価する指標には、J-HAQ、関節リウマチの機能状態分類(アメリカ・リウマチ学会の分類基準)、Steinbrocker分類のクラス分類、移動動作藤林分類などがあります。

J-HAQ

 HAQ (Health Assesment Questionnaire)の日本語版で、身体的な機能の障害を評価する方法です。また、疾患活動性の評価や、治療効果の判定にも用いられます。

 患者さんが日常生活で遭遇するさまざまな身体的な機能に関する20項目の質問に答え、点数化したものです。当院ではここから8項目を使った「m-HAQ」を使用し、ADLの評価を行っています(表1)。m-HAQ は点数が高いほど、身体機能が障害され、ADLが低下していることがわかります。

表1 m-HAQ
m-HAQ

 患者さんにそれぞれの質問に対し、「何の困難もない(0点)」、「いくらか困難(1点)」、「かなり困難(2点)」、「できない(3点)」のいずれかに○をつけてもらいます。トータルの点数を8で割り点数化します。0.5点以下が「機能的寛解」です。

関節リウマチの機能状態分類

 アメリカのリウマチ学会の分類基準で、リウマチの患者さんがどれだけのレベルで日常生活を送れるのかを、4つのクラスに分けています(表2)。この場合の「通常の身の回り」とは、着衣、食事、入浴、身体の手入れや排泄を含みます。「非職業的活動(娯楽、余技)」と「職業的活動(仕事、就学、家事)」は、患者さんの希望や年齢に左右されるものです。

表2 関節リウマチの機能状態分類(アメリカ・リウマチ学会の分類基準)
関節リウマチの機能状態分類
Arnett FC,et al:The American Rheumatism Association 1987 revised criteria for the classification of rheumatoid arthritis.Arthritis Rheum 1988;31(3):315-24.より引用

Steinbrocker分類のクラス分類

 機能障害度を4つのクラスに分類したものです(表3)。

表3 Steinbrocker分類のクラス分類
Steinbrocker分類のクラス分類

移動動作藤林分類

 移動動作に関し、Steinbrocker分類のクラス分類の「classⅢ」と「classⅣ」を、さらにきめ細かく分類し、評価や治療目標に活用するものです(表4)。ちなみに、当院では現在使用していません。

表4 移動動作藤林分類
移動動作藤林分類
藤林英樹,ほか:重度リウマチ患者のリハビリテーションとFollow-up:理学療法を中心に.理学療法と作業療法;1977;11(3):p.209より引用

2.m-HAQはこう使う!

 HAQは身体機能障害を評価する際に用いる指標で、本来は8群20項目ありますが、当院では簡便に利用できるm-HAQ(modified Health Assessment Questionaire)を使用しています。

 それぞれの項目がどのような意図で、何を確認するためのものかを知っておき、それを患者さんにも説明しておくと、正しい評価につながります。また、患者さんの状態とVASの関連性もアセスメントする際に活かします。

①(衣類着脱および身支度)くつひもを結び、ボタンかけも含め、身支度できますか
 例えば、初診時や治療強化前に、指の関節が腫れ、痛くて身支度ができなかった患者さんが、治療することで改善され、次第に身支度ができるようになっているのかなど、前回と比較しながらみていくことができます。

②(起立)就寝、起床の動作ができますか
 痛みやこわばりの状態から身体機能障害の程度を知ることができます。

③(食事)いっぱいに水が入っている茶碗やコップを口元まで運べますか
 肩や肘、手関節の関節に問題があれば、コップを運ぶことができないので上肢の可動域をみます。

④(歩行)戸外で平らな地面を歩けますか
 膝や股関節に問題がないかをみます。特に膝や股関節は荷重関節なので、負担がかかりやすく、痛みも生じやすいと言えます。股関節や膝関節の破壊や変形が進み、痛くて歩けない場合は、手術が必要な場合もあります。

⑤(衛生)身体全体を洗い、タオルで拭くことができますか
 身体全体の関節の機能障害や可動域に問題があるかをみます。ただし、単発的に「今日は肩がすごく痛くてできない」という人もいるので、その場合はなぜ肩が痛くなったのか、例えば仕事で重い荷物を運んだなど、患者さんのエピソードを聞いてみることも必要です。

⑥(伸展)腰を曲げ、床にある衣類を拾い上げることができますか
 身体全体の関節の機能障害や可動域に問題があるかをみます。
 単純に「腰が痛い」という理由から困難な場合もあります。

⑦(握力)蛇口の開閉ができますか
 現在では蛇口ではなくレバー式のものが多いので、レバー式の場合は、ペットボトルや瓶などの蓋に置き換えて聞く場合もあります。

⑧(活動)車の乗り降りができますか
 身体機能をみるものですが、外来に来られる患者さんは、ほとんどは車で来院されているので、「できている~いくらか困難」が多く見受けられます。

3.m-HAQの結果を看護に活かす!

 ④の「困難~できない」ところに○がついている患者さんの中には、膝や股関節の痛みだけではなく、足趾の変形やそれによる胼胝(タコ)ができ、それが痛くて歩けないという理由からつけている場合もあります。そのような場合は、医師の指示により看護師がフットケアを行ったり、合わせて装具療法を併用することもあります。また足趾の変形が進んでいる場合は、なかなか痛みも改善しないことも多く、胼胝も感染源になるため、足趾の形成術を検討することもあります。なぜ歩けないのかもその内容をアセスメントすることも大切と考えます。

 ⑤に対して「できない」理由が一過性の痛みからのものであれば、大きな心配はないと考えますが、長期間痛みが続き、機能障害が続いている場合は、関節変化が起きていることが考えられます。問題のある関節に対してしばらくX線を撮っていない場合は、医師にX線撮影の提案をすることを考えてもよいでしょう。また、⑤は清潔面に直結することなので、できない場合は家族に協力を求めたり、他の手段(介護サービスの利用)を検討するようなアドバイスも必要です。

 ⑦の蛇口のように手首をひねるような動作は、日常生活で案外多いものです。例えばテーブルを拭く、マウスを動かす場合などです。痛いのに無理をして動かすと変形を助長することになり、特に尺側に動かす動作が多い場合は手指の尺側偏位を起こす心配があります。蛇口には補助具をつける、テーブルを拭くときは小指側に動かすよりも、親指方向の一方向に手首を動かすほうがよいなどアドバイスをしていきます。マウスを動かす場合もなるべく同様に行うことが望ましいです。

 最後に、スケール・評価基準を使って総合的に正しく患者さんを評価・判断するためには、正しい情報が不可欠です。患者さんが理解のうえ治療に参加できるよう、また患者さんと医師が共に寛解や低疾患活動性を目指して治療に取り組めるよう、私たち看護師が働きかけることはとても重要と考えます。

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