1. トップ
  2. 看護記事
  3. 症状から探す
  4. 意識障害
  5. NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)

  • 公開日: 2019/10/24

【関連記事】
脳出血の治療と看護ケア


1.このスケールは何を判断するもの?

 NIHSSは「National Institutes of Health Stroke Scale」の略称で、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など脳卒中の神経学的重症度を評価するスケールの一つです。「意識」・「運動」・「感覚」・「発語」などの全11項目を判定表に従って評価し、点数化します。

 脳卒中は緊急的な治療を要することが多く、治療の遅れが生命予後や後遺症の発現を左右することも少なくありません。このため、とくに発症初期の段階で的確に重症度を把握できるよう国際的に標準化されたスケールがNIHSSなのです。

 また、脳卒中は発症後も時間が経過するにつれ症状が変動しやすいため、経過観察のためにNIHSSによる評価が用いられることも少なくありません。脳梗塞の治療法の一つであるrt-PA静注療法では投与開始から1時間は15分ごと、1~7時間は30分ごと、その後24時間までは1時間ごとにNHISSによる評価を行うよう指針が示されています。

2.スケールはこう使う!

 NIHSSは世界共通の判定表を用いて評価を実施します。判定表には、意識水準・意識障害(見当識と記憶)・注視・視野・顔面神経麻痺・両上下肢運動・運動失調・感覚・発語・消去現象と注意障害など11項目のチェック項目が記載されています。注意すべき点は、必ず判定表に書かれた順番通りに評価を行い、一度評価したものは修正しないことです。また、特に指示がないかぎり患者さんを誘導してはなりません。もし患者さんが答えを言い直したとしても、評点は最初の答えについて行うようにしましょう。

NIHSS

 それぞれのチェック項目には決められた点数が記載されており、全ての評価が終了したらそれぞれの点数を合算します。NIHSSでは、「0点」が正常で、最大の「42点」に近づくほど神経学的重症度が高いと考えます。

 ただし、NIHSSは脳神経障害を評価する項目が少なく、言語障害に対する配点が高いため、意識障害や運動神経麻痺などよりも脳神経障害が目立ちやすい椎骨動脈系の障害、言語中枢が優位でない半球のみの障害では点数が低めに評価される傾向があります。このため、同じ点数でも実際の重症度は異なることがあるのです。患者観察の際にはNIHSSの点数だけでなく全身状態を把握した上で、総合的な重症度に適した対応を行うようにしましょう。

3.スケールの結果を看護にこう活かす!

 NIHSSは脳卒中の重症度を把握する上で非常に有用なスケールです。搬送時や初診時などはできるだけ速やかに評価を行い、緊急性の有無を判断できるようになりましょう。また、rt-PA静注療法を行う際など経過観察のために評価するケースでは、重症度の明らかな上昇が見られたときは速やかに医師に報告し、緊急の処置ができる体制を調えることが大切です。

参考文献

●脳卒中治療ガイドライン2015[追補2017].一般社団法人日本脳卒中学会(2019年10月10日閲覧)http://www.jsts.gr.jp/img/guideline2015_tuiho2017.pdf
●rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針.一般社団法人日本脳卒中学会(2019年10月10日閲覧)http://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA02.pdf

関連記事
脳卒中重症度スケール(Japan Stroke Scale:JSS)
脳槽ドレナージ|「部位別」ドレーン管理はここを見る!②
脳室・脳槽・硬膜外ドレーン、脊髄ドレーン(スパイナルドレーン)の留置部位と排出メカニズム
ドレナージの種類と適応|脳神経外科でドレナージが必要な理由②

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

PDAIは何を判断するもの?  国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。  天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ

2024/4/15

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949