【連載】脳神経外科看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!
半側空間無視と半盲、何が違う?
- 公開日: 2025/12/31
半側空間無視とは
半側空間無視は高次脳機能障害の1つです。視力や視野には問題がなく、実際には見えているにもかかわらず、認識できない(半側を無視している)症状をいいます。認識することができないため、多くの場合は自覚がありません。
半側空間無視の多くは右頭頂葉の障害で生じます。障害された脳の部位と逆側(右頭頂葉が障害された場合は左側)にある空間や物体に注意が向かなくなることで、さまざまな症状がみられます(表)。
また、右脳半球は左側だけではなく、右空間に注意を向ける働きがあるため、右頭頂葉の障害では左側の半側空間無視に加え、右空間の注意障害も生じます。
表 半側空間無視の主な症状(右頭頂葉に障害が生じた場合)
●歩行時に左側の物や人にぶつかる
●左側の文章を読み飛ばす
●左側からの呼びかけに反応しない
●左側の髭を剃り残す
●左側の偏視がある
半盲とは
半盲は、視野の一部が見えなくなる視野障害の一種です。
視覚情報は、視神経→視交叉網膜の内側(耳側視野)→網膜の外側(鼻側視野)→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉の順に伝達され、耳側視野にて受け取った刺激を伝える線維は交差して対側に、鼻側視野にて受け取った刺激を伝える線維は交差せずに同側に伝わります。半盲(ここでは同名性半盲のことを指す)は、この経路上において、視索から後頭葉が障害されることで起こりますが、障害される部位によっては半盲ではなく、1/4盲を呈する場合もあります(図)。
患者さんは、視覚的に見えていないという自覚をもつこともあり、そのような場合には視線を動かすことで、欠損している視野を補おうとします。ただし、特に上方視野など、日常生活ではあまり使用しない視野の欠損では、自覚をもたない場合もあります。
図 視野経路と視野欠損の例
ケアのポイント
半側空間無視と半盲のいずれも、転倒や物との衝突など身体の損傷を防ぎ、患者さんが日常生活をできる限りスムーズに過ごせるように介入します。退院後の生活の援助を家族が担う場合には、家族にも注意点を伝えます。
半側空間無視の場合
患者さんには半側を無視している、見落としているという自覚がないため、病識が乏しい傾向にあります。病識の欠如は、治療やリハビリテーションの妨げになるだけでなく、思わぬ事故につながるおそれもあるため、まずは、患者さんに病識をもってもらえるように丁寧に説明します。
また、右頭頂葉が障害されて半側空間無視を来した患者さんの場合、顔や視線が常に右側を向いていたり、左側の物や人に気づくことができないため、右側から声をかける、ナースコールも右側に配置するなど、患者さんが認識しやすいような工夫が必要です。食事のときも認識できる側に配膳し、テレビは消すなど、食事に集中できる環境を整えます。
無視側に注意を向けるようにかかわることも重要です。例えば、更衣時に無視側に視線を向けてもらう、無視側の衣服に触れて触覚で認知してもらうといった訓練をケアに取り入れていけるとよいでしょう。
半盲の場合
半盲の患者さんの場合は、残された視野で安全に生活できるように支援していきます。半盲の患者さんは見えていないという自覚があり、視線を動かすことで視野の欠損を補うことができるものの、日常生活への影響は大きく、障害物との接触や転倒など、さまざまなリスクに遭遇する可能性があります。看護師としては、患者さんに起こりうるリスクや問題に気づけるよう観察に努め、注意点を伝えられるようにします。
イラスト/たかはしみどり
