【連載】脳神経外科看護のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!
慢性硬膜下血腫の術後のドレナージ管理のポイントが知りたい!
- 公開日: 2025/12/8
慢性硬膜下血腫とは
脳は、頭蓋骨や髄膜により保護されています。髄膜は3つの膜で構成され、最も外側にあるのが「硬膜」、そのすぐ内側にあるのが「くも膜」、最も脳に近いのが「軟膜」です。これらの膜の間にはそれぞれわずかな隙間が存在し、頭蓋骨と硬膜の間を「硬膜外腔」、硬膜とくも膜の間を「硬膜下腔」、くも膜と軟膜の間を「くも膜下腔」といいます。
慢性硬膜下血腫は、硬膜下腔に緩徐に血液が貯留する疾患です。その成因に関してはまだ不明な点も多いですが、転倒や事故による軽微な頭部外傷が原因となり、硬膜下に炎症が生じ被膜が形成され、そこから持続的に血液成分の漏出が起こってくるともいわれています。受傷から数週間~数カ月を経て、徐々に増大した血腫が脳を圧迫し、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔気・嘔吐など)、片麻痺、歩行障害、認知機能低下などがみられるようになります。
慢性硬膜下血腫の術後のドレナージの目的
血腫量が少なく、症状がない場合は経過観察となることもありますが、血腫量が多い場合や症状を呈している場合は、手術が必要となることもあります。手術では、被膜内に貯留した液状の血液成分を排出し、そこにドレーンを留置します。
術後は、頭蓋内に残った血腫、あるいは手術時に頭蓋内に入った空気が体温により膨張し、脳を圧迫するリスクがあります。圧を外に逃がして、脳が元の状態に戻れるようにするため、血腫や空気を体外に排出させる処置(ドレナージ)が行われます。
ドレナージ管理のポイント
安静度・ドレーンの高さの維持
慢性硬膜下血腫の術後は、一般的に閉鎖式ドレナージが用いられます。医師から指示された安静度を守り、ドレーンの高さでドレナージの圧が規定されるため、ドレーンの高さが指示された場所に保たれているか確認します。
ドレナージ回路の確認
ドレーンの屈曲・閉塞、接続部のゆるみや外れがないか確認します。体位変換や清拭などのケアを行う際は、ドレーンの屈曲や抜去を防ぐため、ドレーンを引っ張らないように注意します。
排液量の観察
排液量は、硬膜下腔に残存する血腫の大きさ、空気、脳の弾力性によっても変わります。そのため、排液量のみからドレナージの状態を判断するのは難しいですが、排液量を注意深く観察し、変化がみられたときは、どのような問題や異常が生じている可能性があるかを考え、適切な対応につなげることが大切です。
排液量が少ない場合、経過とともに減少していれば問題ないことが考えられます。しかし、術直後にもかかわらず排液量が少ない場合や突然減ったときなどは、ドレナージがうまく行われていない可能性があります。ドレーン挿入部と排液バッグが指示された高さになっているか、ドレーンが屈曲していないか、接続部のゆるみや外れがないか、三方活栓の向きが正しい向きになっているか確認します。
ドレーン挿入部と排液バッグが指示された高さになっており、ドレナージ回路にも問題がない場合は、血栓により流出量が減少している可能性があります。また、ドレーン内に液体成分の排出が全く認められない場合には、ドレーンの断面で表面張力が起こり、その影響で排出されていないことも考えられます。こうした場合は医師に報告し、指示を仰ぎます。
一方、排液量が多いときは、ドレーン挿入部と排液バッグが指示された高さになっているか確認するのとあわせて、排液の色調を観察します。鮮血の排液がみられた場合は、再出血や新たな出血の可能性があるため、速やかに医師へ報告します。
排液の色調の観察
排液が暗褐色であれば、残存した血腫が排出されていると考えられますが、鮮血の場合は再出血や新たな出血の可能性があります。前述したように、鮮血の排液がみられた場合は、速やかに医師へ報告します。
意識レベル、神経所見、頭蓋内圧亢進症状の観察
意識レベル、神経所見、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔気・嘔吐など)の変化を確認します。新たな症状や異常が出現した場合には、適切にドレナージができているかを確認し、医師に報告しましょう。
