1. トップ
  2. 看護記事
  3. 注目ピックアップ
  4. 院内が一体となり行った新病院移転計画 施設を運用しながらもスムーズな搬送を実現<岩手医科大学附属病院>【後編】【PR】

【連載】Nursing 最前線 ―看護の現場をリポート―

院内が一体となり行った新病院移転計画 施設を運用しながらもスムーズな搬送を実現<岩手医科大学附属病院>【後編】【PR】

  • 公開日: 2020/3/20
  • # 注目ピックアップ
  • # 看護師インタビュー

岩手県唯一の大学病院としてより充実した医療提供を行うため、2019年9月に新たな施設で再スタートした岩手医科大学附属病院。11km離れた新たな場所への移転プロジェクトは、2016年10月からおよそ3年をかけて進行されました。そこには、入院患者さんの安全な移送を最重要テーマに、移転当日まで着実に計画を進めていったスタッフたちの姿がありました。


患者さんを安全に搬送するスケジュールの作成・管理を

 今回の移転では、旧病院を運用しながら新病院を作り上げ、医療を途切れさせないような移転と同時に安全に稼動させることが重要です。そのため、スケジュールの作成・管理は大きなポイントでした。

 「2018年末からは、半年間のスケジュールとともに月間スケジュールが配られ、月1~2回の定期会議で共有されました。スケジュールは『イベント』『診療体制』『搬送』『リハーサル』などに分かれており、これに沿って各部署が役割を果たしていきました」(看護部長・佐藤悦子さん)
 
 スケジュールを立てるため、まずは比較的軽症の患者さんの転院・退院を進め、当日の搬送数を減らすための調整を行いました。隣県(秋田・青森・宮城)の病院に一時転院を依頼したケースもありました。
 
 その結果搬送対象は、主に脳外科・消化器外科・小児科領域の重症度の高い患者さん114名となりました。これらの患者さんについては、重症度基準を作成して分類し、PaO2などのデータ、呼吸器の装着、体調などをチェック。移転当日まで状態に応じて対応方法を調整しました。

 岩手県高度救命救急センター師長で災害看護委員長でもある高橋弘江さんは、患者搬送フローの組み立てを担当。「今回の患者搬送には災害看護の視点が必要。これだけ大きな病院機能が患者さんと共に移動することは『病院避難』と同様のイベントが発生することを意味します。移転プロジェクトでは施設の運用と搬送の両輪が上手に機能することが大切。その架け橋となることを考えました」といいます。

 7月と8月に2回行ったリハーサルの結果も見直しながら、スケジュールや体制の調整は搬送当日まで進められました。

移転当日スケジュールは順調に進行 搬送後も気を抜かずに管理を

 2019年9月21日の移転当日は、午前8時に旧病院からの搬送がスタート。入院患者さんの搬送に携わった人員は、新旧2つの病院で患者さんの搬入・搬出を担当する計約600名、移転の核となる車両移送に約330名が配置され、本部も含めて1200名を数えました。

zu1
移転当日の搬送の様子。新病院入り口では搬送を受け入れる入口調整担当が患者さんの情報をチェック

zu2
入口調整担当から院内搬送担当にバトンタッチ

 自衛隊、消防、警察、医療機関、民間救急、タクシー協会の人員・車両による協力に加え、外出を控えるなど住民による協力もあり、予定の19時よりも早い15時50分で搬送を終了することができました。

zu3
自衛隊をはじめ関係協力機関の力もあり移転プロジェクトはスムーズに進行

zu4
移転当日は街中で救急車が連なって走る様子もみられた

zu5
移転に際しては新病院と旧病院のそれぞれに本部が置かれた。写真中央左に立つ久保田桜さんは副看護部長として旧病院本部で活躍。現在は附属内丸メディカルセンター総看護師長を務める

 しかし、医療・看護は搬送して終わりではありません。「重症度の高い患者さんばかりでしたので、気が抜けませんでした」と、副看護部長の出口育美さん。看護部では、病棟用に「移転搬送前後のフロー」を作成。搬送までに行うこと、当日の搬送前・開始時・車内・到着後・帰還準備とやるべきことをフローにまとめて活用し、新病棟での継続した管理につなげました。

新病院移転プロジェクトにより得たものをこれからの看護に生かす

 新病院の建設・移転を終えて、副看護部長の千葉香さんは「建物づくりから看護の視点でかかわることができました。いい看護を提供したいというスタッフの声が伝えられました」と充実感を滲ませます。
 
 「病院は職員一人ひとりで作るものだと感じました。これまであまり関心がなかったこと、自己ルールでやっていたことを、全病棟・全職員で統一していく大切さを確認できました」(出口さん)

 新病院がスタートを切り、通常の役割に意欲をみせるのは教育を担当する副看護部長の安保弘子さん。「今回の経験で実感した人材育成の大切さを、院内研修や看護学生の受け入れなどに生かし、人づくりをやっていきたいと思います」と話します。

 「転院をお願いした患者さんが戻り始め、1000床がほぼフル稼働の状態になってきました。ある意味移転後の混乱期。でも大きな仕事を成し遂げたスタッフと共にうまく乗り越えていけると思っています」と、佐藤さんも移転によって強まった信頼に手応えを感じているようでした。

zu6
写真左から)高橋弘江岩手県高度救命救急センター師長、安保弘子副看護部長、佐藤悦子看護部長、千葉香副看護部長、出口育美副看護部長

zu7
総合移転計画事務室の皆さん

DATA

岩手医科大学附属病院
岩手県紫波郡矢巾町医大通2-1-1
https://www.hosp.iwate-med.ac.jp/yahaba/
開設1936年病床数 ●1000床
職員数2200名(うち看護職員1203名)※2019年現在
看護配置一般病棟7:1
特定機能病院/岩手県高度救命救急センター/基幹災害拠点病院/がん診療連携拠点病院
/肝疾患診療連携拠点病院/総合周産期母子医療センター
zu8


ニプロ株式会社発行:看護情報誌「ティアラ」2020年4月(no.127)より転載

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

バイオミメティクス(生物模倣)技術を活用した医療機器の開発【PR】

2024年5月25日~ 26日に、海峡メッセ下関(山口県下関市)で、第33回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会が開催されました。25日に行われたスイーツセミナーでは、蚊の針を模倣した注射針や超高精密3次元光造形装置(3Dプリンター)を用いた微細加工の研究・

2024/8/19