1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. 褥瘡ケア
  5. 褥瘡のアセスメント
  6. K式スケール、在宅版K式スケール(在宅版褥瘡発生リスクアセスメント・スケール)

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

K式スケール、在宅版K式スケール(在宅版褥瘡発生リスクアセスメント・スケール)

  • 公開日: 2020/5/30

1.K式スケール、在宅版K式スケールは何を判断するもの?

 K式スケールは、前段階要因と引き金要因を、Yes、Noの2択式で評価します。

 「金沢大学式褥瘡発生予測尺度」とも呼ばれ、当時金沢大学医学部保健学科教授(現・東京大学大学院医学系研究科教授)の真田弘美先生が開発した、高齢者のための褥瘡のリスクセスメント・スケール(図1)で、主に病院で使われています。

図1 K式スケール
K式スケール
大桑真由美,他:K式スケール(金沢大学式褥瘡発生予測スケール)の信頼性と妥当性の検討―高齢者を対象にしてー.日本褥瘡学会誌 2001;3(1):7-13.より引用

 褥瘡のリスクアセスメント・スケールとして、日本の臨床現場に最初に導入されたのはブレーデンスケールでした。ブレーデンスケールは6項目で評価します。項目ごとの2点と3点の間の評価の解釈が難しく、看護師の経験年数や評価する人によって点数が分かれてしまうというデメリットがありました。そこで日本人の高齢者に特有な骨突出を取り入れ、信頼性と予測妥当性が高いK式スケールが開発されました。

 日本褥瘡学会の『褥瘡予防・管理ガイドライン』によれば、寝たきり入院高齢患者さんのリスクアセスメント・スケールとして、週1回の評価を行うことが「推奨度C1」とされています。

 在宅版K式スケールは「在宅版褥瘡発生リスクアセスメント・スケール」とも呼ばれ、在宅高齢療養者のために、K式スケールの前段階要因に「介護知識がない」、引き金要因に栄養が追加され、在宅版として活用されている褥瘡予防のアセスメント・スケールです(図2)。

図2 在宅版K式スケール
在宅版K式スケール
村山志津子,他:褥瘡発生に関連する看護力評価スケールの作成と信頼性の検討.日本褥瘡学会誌 2008;6(4):647-650.より引用

2.K式スケール、在宅版K式スケールはこう使う!

 K式スケールは患者さんの身体の状態や、普段からもっている要因である「前段階要因」と、ケアの問題を示す「引き金要因」の2段階で評価します。何らかの理由により、床上生活を余儀なくされている時期から評価の対象となります。

 前段階要因には①自力体位変換不可、②骨突出、③栄養状態が悪い、の3項目があり、それぞれに詳しいアセスメントのポイント、観察方法が書かれています。

 例えば、「自力体位変換不可」かどうかは、「自分で体位変換できない」、「体位変換の意思を伝えられない」「得手体位がある」で評価します。「骨突出」については、仙骨部体圧を測りますが、体圧計がなくて測定できない場合は、「仙骨、尾骨、座骨結節、大転子、腸骨稜」の骨突出があるか、「上肢・下肢の拘縮、円背があるか」を見ます。「栄養状態が悪い」かどうかは、Alb(血清アルブミン)かTP(総蛋白)を測定しますが、測定できない場合は腸骨突出を測り、それもできない場合は「浮腫・貧血、自分で食事を摂取しない、必要カロリーを摂取していない」で評価します。
「YES」の場合は1点で、合計点を「前段階スコア」で表します。スケール開始時点から2週間ごとに採点します。

 スコアが1点以上あれば、次に引き金要因の①体圧、②湿潤、③ずれの、3項目をアセスメントします。「YES」の場合は1点として、引き金スコアを出します。合計点が高いほど、褥瘡発生のリスクが高いといえます。

 在宅版K式スケールも、K式スケールと使い方は基本的に同じですが、注意しなければならないのは「介護知識がない」の項目です。褥瘡予防のポイントである①除圧・減圧、②栄養改善、③皮膚の清潔保持の3点について、全て述べることができなければ、つまり1つでも述べられないことがあれば「知識がない」と判定し、「YES」として1点をして加算します。

 在宅版K式スケールの場合は、前段階要因はあまり変わらないので、こちらの評価は1カ月に1回程度、引き金要因については週1回の評価を行います。

3.K式スケール、在宅版K式スケールを看護に活かす!

 K式スケールは褥瘡発生に関する短期予測に有用であり、引き金要因にチェックが1つでも入れば1週間以内に褥瘡発生の可能性があるとされています3)。K式スケールの引き金要因はケアの、在宅版K式スケールの引き金要因は介護力の評価なので、褥瘡発生リスクを捉えたら、それぞれの項目に書かれた内容を改善し褥瘡予防に努めましょう。

 例えば「体圧」が変化しているのであれば、体位変換ケアが不十分であったことが考えられるので、それを改善します。

 また、「湿潤」の変化は下痢便失禁の有無、膀胱内留置バルーン抜去後の尿失禁の有無、発熱38℃以上などによる発汗(多汗)の有無のいずれかが該当するかをみて、皮膚の浸軟回避と保護に努めます。「ずれ」についてはギャッチアップ座位などの、ADL拡大による摩擦とずれの増加があったかを確認します。

 在宅版K式スケールの「栄養」については、1日3食を提供できているかどうか、または食事のバランスに偏りがあるが、おやつや栄養補助食品などを提供し、補えているかどうかを確認し、介護者の負担が増すことがないよう、栄養改善を行います。

引用・参考文献

1) 大桑真由美,他:K式スケール(金沢大学式褥瘡発生予測スケール)の信頼性と妥当性の検討―高齢者を対象にしてー.日本褥瘡学会誌 2001;3(1):7-13.
2) 村山志津子,他:褥瘡発生に関連する看護力評価スケールの作成と信頼性の検討.日本褥瘡学会誌 2008;6(4):647-650.
3) 岡田克之:特集高齢者の褥瘡1.褥瘡のリスクアセスメントと予防対策.日本老年医学会雑誌 2013;50(5):583-91.

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

PDAIは何を判断するもの?  国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。  天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ

2024/4/15

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
9位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949
10位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741