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【連載】病棟・外来で役立つ! 事例で学ぶ急変・救急対応

めまいを訴える患者さんのアセスメントと対応

  • 公開日: 2021/2/25

事例紹介

患者背景

Eさん、55歳、女性


・既往歴:高血圧症

・内服薬:降圧薬:アムロジピンOD5mg 朝食後1錠(管理良好)


現病歴

朝食後、しばらくたってからめまいを感じた。30分間、様子を見ていたがめまい症状が改善せず、家族に支えられて救急外来を受診する。症状は「グルグル回る感じがする」「気持ちが悪い」「15分前に一度、少量の嘔吐をした」。数年前にも一度、同様のめまい症状があった。そのときは、経過観察で改善したため受診はしていない。


身体所見

意識レベル JCS 0、呼吸24回/分、脈拍98回/分、血圧156/68mmHg、SpO2 98%(室内気)、瞳孔左右3.0/3.0、対光反射+/+


四肢麻痺なし、跛行等の歩行障害なし(支えにて歩行可能)、蝸牛症状(耳鳴り、耳閉感、難聴)なし、頭位変換した数秒後にめまいが増強


不定愁訴かどうかを見極める

 「めまい」は主観的な体験であるとともに、他覚的・客観的所見に乏しい場合もあり、経過観察で問題ないか、緊急な対応を要するのかの判断が難しいケースがあります。また、事例の患者さんは、過去にも同様のめまい症状があったため、不定愁訴かどうかを見極めることから始めます。


事例において見極めが必要な患者さんの訴え

・めまい症状が改善しない


不定愁訴かどうかの見極め方

 Eさんは、「グルグル回る感じがする」と訴えており、主訴はめまいです。付き添いがあれば歩行可能で、跛行や四肢麻痺などの異常所見も認められず、不定愁訴が疑われます。数年前も同様の経験をしており、経過観察で症状が改善していることから、状態の悪化ということではないと考えられます。


 しかし、今回は嘔気・嘔吐がみられるなど、客観的に捉えられる新たな症状が出現しています。不定愁訴と決めつけず、リスクを確認していく必要があると考えました。


状態を把握する

事例から読み取るべき患者さんの状態

・めまい症状と、随伴症状として嘔気・嘔吐を認めている

・家族に支えられながら歩行できる

・跛行や四肢の麻痺の出現は認めない

・蝸牛症状(耳鳴り、耳閉感、難聴)は認めない

・頭位変換でめまいが増強する


状態把握のために必要な知識とポイント

ポイント1:ABCDを評価する

 A(気道)・B(呼吸)・C(循環)・D(意識)の評価を行います。Eさんは、やや促拍で血圧も高めですが、気道の開通や意識レベルに問題はなく、緊急性の高い異常は認められませんでした。


ポイント2:めまいの種類を把握する

 患者さんがめまいを訴えたときは、どのようなめまいか、いつから、どのくらい続いているか、症状が繰り返されているか、症状が弱まったり、強まったりするのか、突然に出現したのか、今までに同様の経験をしたことがあるのかを確認します。めまいの種類を把握することで、疾患を絞り込むことが可能になります(表1)。


表1 めまいの種類

めまいの種類

日本救急看護学会 監:救急初療看護に活かすフィジカルアセスメント.へるす出版,2018,p.189.より引用一部改変


 Eさんは、「グルグル回る感じがする」めまいが30分ほど続いています。随伴症状として蝸牛症状は認められませんが、嘔気・嘔吐がみられます。また、跛行や四肢の麻痺はなく、支えがあれば歩行可能ですが、問診を行ったところ、左右に頭の位置を変えた数秒後にめまいが増強することがわかりました。


 「グルグル回る感じがする」という表現から、Eさんは回転性めまいを生じていると考えられます。四肢麻痺などの運動障害や蝸牛症状を認めず、頭位変換の数秒後にめまいが誘発されている点も踏まえると、良性発作性頭位めまい症の可能性が高いといえます(表2)。


表2 良性発作性頭位めまい症の特徴

1.特定の頭位をとることによって誘発される回転性めまい

2.頭位変換から眼振出現まで数秒間の潜時がある

3.眼振の持続時間は短い(数十秒以内が多い)

4.引き続き同じ頭位をとることを繰り返すと眼振は減衰する

5.耳鳴り、難聴を伴わない

6.患側45°頭部を捻転させ、さらに懸垂頭位をとると眼振が誘発されるが、この捻転頭位を保ったまま座位にすると眼振の向きが変わる

日本救急医学会 監:救急診療指針 第5版.へるす出版,2018,p.275.より引用


ポイント3:失神性めまい、中枢性めまいに注意する

 Eさんで考えられるのは良性発作性頭位めまい症ですが、失神性めまい、脳血管障害の可能性がある中枢性めまいでは、緊急度・重症度ともに高くなるため注意が必要です。


 失神性めまい、中枢性めまいが疑われる場合は、バイタルサインを確認し、経時的なモニタリングを行います。必要時には12誘導心電図も測定します。眼振は目視ではわからないことがあるため、フレンツェル眼鏡を使用して確認します。


緊急度を判断する

 Eさんは良性発作性頭位めまい症と考えられ、徐々に症状が緩和される病態であるため、準緊急と判断します。


状態に合わせて対処する

 Eさんは、15分前に嘔吐したと話しています。嘔吐による脱水の併発を考慮し、速やかに補液を行います。


 頭位変換によりめまいが増強しているため、Eさんにとって安楽で、めまいの増強が起こらない体位を取るよう促します。このとき、上体を軽度起こすようにし、嘔吐による窒息を防止することが大切です。


 良性発作性頭位めまい症の場合、症状が徐々に軽度になっていくことを伝え、安心・安静を保ち、経過を観察します。


医師に報告する

 医師に報告する際は、簡潔にわかやすく伝えることが重要です。ISBARCに沿って報告するとよいでしょう(表3)。


表3 ISBARCを用いた報告例

報告例
Identify
(報告者と患者の同定)
・○○外来の看護師××です。外来受診されているEさんについて報告します。
Situation
(患者さんの状態)
・30分ほど前から、頭位変換による回転性めまい症状が出現し、嘔気と嘔吐を認めています。
Background
(入院の理由・臨床経過)
・朝食後に頭位変換による回転性めまいが出現し、30分ほど様子を見ていましたが、症状が改善しないとのことで受診されています。
・家族に支えられての歩行が可能で、四肢麻痺の出現は認めず、異常瞳孔所見や意識障害は認めません。
・現在も頭位変換により回転性めまいが継続しており、15分前に一度少量の嘔吐をし、嘔気も継続しています。
・数年前にも同様の症状が出現しており、その際は経過観察で症状が改善したとのことです。
・バイタルサインは呼吸24回/分、脈拍98回/分、血圧156/68mmHg、SpO2 98%(室内気)です。
Assessment
(状況評価の結論)
・頭位変換による回転性のめまいであることから、良性発作性頭位めまい症と判断し、観察ベッドで横になってもらっています。
Recommendation(提言または具体的な要望・要請)・患者さんの診察と追加治療を実施するかの指示をお願いします。
Confirm(指示受け内容の口頭確認)・(医師から指示があれば、指示の内容を復唱)

対応の流れを振り返る

 めまいを訴える患者さんへの対応の流れについて、フローチャートで振り返ります。


めまいフロー

参考文献

●城倉健:めまいを見分ける・治療する.ENT臨床フロンティア.小林俊光,他編.中山書店,2012,p.58.

●井上智子,他編:緊急度・重症度からみた症状別看護過程+病態関連図 第2版.医学書院,2015,p.448-63.

●高木永子 監:看護過程に沿った対症看護 病態生理と看護のポイント 第4版.学研メディカル秀潤社,2015,p.482-94.

●日本救急看護学会 監:救急初療看護に活かすフィジカルアセスメント.へるす出版,2018,p.188-95.

●日本救急医学会 監:救急診療指針 第5版.へるす出版,2018.p.265-76.

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