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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Lown分類

  • 公開日: 2021/4/1

Lown分類は何を判断するもの?

 Lown分類は、1971年にLownらが発表した冠動脈疾患の突然死の成績をもとに、心室性期外収縮(premature ventricular contraction:PVC)の重症度を出現数、出現様式によってGrade1~5に分類したスケールです(表)1)


表 Lown分類

Grade0心室性期外収縮なし
Grade1散発性(1個/分または30個/時間未満)
Grade2散発性(1個/分または30個/時間以上)
Grade3多形性(期外収縮の波形が複数ある)
多形性

Grade4a2連発
2連発
Grade4b3連発
3連発
Grade5RonT(連結期が短いもの)
RonT

 単純に期外収縮の数で評価するだけなく、複数の形(興奮が発生する部位が複数ある)がみられるか、連続して出現しているか、T波に近いかどうかなどといった心電図の特徴から、重症心室頻拍や心室細動に移行する危険性が高いPVCの見極めに役立てることができます。


 したがって、基礎疾患に冠動脈疾患がある場合、PVCの評価やPVCがどのような出現の仕方をするのか、どの種類のPVCが致死性不整脈に移行しやすいのかを理解するうえで、重要なスケールといえます。


 なお、Lown分類は本来、心筋梗塞急性期の心室細動への移行、つまり、心臓突然死の危険性を評価するということから出発したスケールです。そのため、さまざまな心疾患や心機能の患者さんに当てはめるには限界があることは否めません。


◆PVCとは

 PVCは、洞結節からの刺激よりも早く心室側で発生する刺激によって、心室の興奮が開始される不整脈です。興奮時期が早ければ早いほど、そのときの収縮による血圧は発生しにくくなります。逆に、その次の正常な興奮による収縮で拍出量が増加し、これを動悸として自覚することがあります。PVCには次のような心電図の特徴がみられます(図)。


・QRSは幅広く(≧0.12秒)、脚ブロック型となる

・P波が認められない。または、心室側で発生した興奮が心房側へ逆に伝わることでP波が逆転し、さらにT波付近に重なることがあるため、確認できないことが多い


図 PVCの波形の例

単発(ラウン分類)(ローン分類)

Lown分類はこう使う!

 心電図モニターを装着している状態で、PVCの出現頻度や様式に従って、重症度を判定します。


 通常、PVC3連発以上のものを心室頻拍と呼ぶことが多く、30秒未満を非持続性(nonsustained VT)、30秒以上を持続性(sustained VT)と区別します。


 Grade5のRonT型は、PVCのR波が先行するT波の頂点付近に重なったPVCのことです。T波の頂点から終わりまでは相対不応期にあたり、最も心筋が電気的刺激の影響を受けやすい時期になります。このタイミングでR波のような強い電気刺激を心筋が受けると、心室頻拍や心室細動のような致死性不整脈に移行しやすくなります。特に心筋が不安定な状況にある冠動脈疾患では、注意が必要です。


 一般的に、Grade3以上のPVCでは危険性が高いと判断されるため、基礎疾患や症状の有無によっては医師へ報告する必要があります。


Lown分類の結果を看護に活かす!

 Lown分類でのPVCの重症度の評価を看護に活かすためには、以下の2点が重要です。


PVCそのものよりも、PVCを引き起こしている基礎疾患などの背景を重視する

 1980年代に行われたCAST試験で、心筋梗塞発症後の無症状あるいは軽度の症状があるPVC、非持続性心室頻拍症例において、抗不整脈薬の投与によって不整脈を抑制できるかどうかが検討されました。


 抗不整脈薬を用いてPVCを抑制すれば生命予後が改善すると考えられていましたが、結果は全くの逆で、抗不整脈薬投与群ではむしろ死亡率が高くなることがわかりました2)。このことから、PVCそのものをなんとかしようとするのではなく、その原因となる基礎疾患への対応が重要といえます。


 一口に不整脈といっても、基礎疾患や使用している薬剤、電解質異常といった背景は患者さんによりさまざまです。PVCの出現、重症度に関連している背景の臨床判断こそ看護師の役割です。背景により治療法も異なるため、PVCそのものの重症度とともに、PVCに関連している基礎疾患などの背景も医師に報告することで、重篤化を回避できます。


モニタリング時は連結期を評価する

 Lown分類は、PVCの出現の仕方による危険性を警告してくれるスケールです。しかし、Grade1から5の順番に状態が悪化するとは限りません。特に、急性心筋梗塞のように重篤な状態であれば、Grade1の状態からRonTへ変化する場合も考えられます。そのため、PVCをモニタリングする際は連結期に注目します。


 連結期とは、PVCのQRS波形と、先行する正常なQRS波形の間のRR間隔のことです。これが極端に短く、先行するT波の頂点付近にPVCが重なる場合はRonT型であり、Grade5のPVCとして判断します。


 Grade1のPVCであっても、連結期が短く、T波に近い場合は危険性が高くなります。Gradeが低い場合や同じGradeでも、モニタリングによって徐々に連結期が短くなっていると判断されれば、RonTに移行する可能性を念頭に置いて報告します。


引用文献

1)Lown B,et al:Approaches to Sudden Death from Coronary Heart Disease.Circulation 1971;44(1):130-42.

2)Debra S,et al:Mortality and Morbidity in Patients Receiving Encainide, Flecainide, or Placebo—The Cardiac Arrhythmia Suppression Trial. N Engl J Med 1991. 324(12):781-8.


【関連記事】
●心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴とは?
●第8回<読み方・対応編⑥>心室期外収縮 (PVC)


【練習問題はこちら】
●<練習問題編③>Lown分類を知ろう
●第41問 心室期外収縮の略称と正式名として正しいものはどれか?



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