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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Nohria-Stevenson分類

  • 公開日: 2021/3/4

Nohria-Stevenson分類は何を判断するもの?

 Nohria-Stevenson分類は、心不全の病態を身体所見からより簡便に評価するための指標です。うっ血所見の有無(wet/dry)および低灌流所見の有無(warm/cold)に基づき、心不全の病態をProfile A、Profile B、Profile C、Profile Lの4つのプロファイルに分類しており、予後予測や治療方針を決める際にも用いられています(図)。


図 Nohria-Stevenson分類

Nohria-Stevenson分類(ノリア・スティーブンソン分類)

 Profile Aは重症度としては軽症とされ1)、心臓移植を含む短期間での死亡例は、Profile BとCに多くみられます2)。Profile Lに分類されるケースは少なく、実臨床では拡張型心筋症などの終末期で認められることが多い病態であると考えられています1)


 心不全の病態把握の分類というと、Forrester分類が頭に浮かぶ人も多いと思いますが、Forrester分類は観血的測定を前提としており、幅広い患者さんに適応することは難しいところがあります。その点、Nohria-Stevenson分類は、フィジカルイグザミネーションで得られる身体所見情報だけで評価できるため、臨床で頻用されています。


 看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士といった、医師以外の医療職者でも簡便に心不全症状や病態を評価できることも、Nohria-Stevenson分類の強みであり、優れている点といえます。


Nohria-Stevenson分類はこう使う!

 まず、うっ血所見として、起坐呼吸、頸静脈の怒張、浮腫、腹水、肝頸静脈逆流が出現していないかを観察します。頸静脈の怒張の有無を確認する際は、30~45度ベッドアップした状態で行います。臥床位では、頸静脈は怒張しているのが正常な所見となるため、注意が必要です。


 続いて、低灌流所見として、小さい脈圧、四肢冷感、傾眠傾向、低Na血症、腎機能悪化がないかを観察します。低Na血症については、血清Na値が135mEq/L以下を指します。心拍出量が低下すると、生体はそれを代償しようと腎臓からの排泄(尿)を制限することで循環血液量を増やそうと反応します。その結果、水分が多い血液となり、血清Na濃度が希釈され低くなります。低灌流所見に低Na血症が含まれるのはこのためです。


 全身を観察し、うっ血および低灌流に伴う症状や所見がいくつみられるかで、その患者さんのプロファイルが決定されます。例えば、起坐呼吸と末梢冷感を認め、血圧が80/60mmHgの患者さんがいるとします。この場合、うっ血所見として起坐呼吸、低灌流所見として小さい脈圧、四肢冷感が当てはまります。よって、プロファイルはc、wet/coldとなります。


Nohria-Stevenson分類を看護に活かす!

 Nohria-Stevenson分類は、経時的に評価することに意味があります。一時点での評価に意味がないわけではありませんが、薬剤による心不全治療の効果判定や心臓リハビリテーション導入時の過負荷の評価など、症状の経時的変化をこのスケールに当てはめて観察することで、心不全が代償できているかどうか(Profile Aに分類されれば代償できている)を看護師でも判断できます。


 心不全の治療効果は、心機能の改善(心エコーのLVEFなど)で評価されるのではなく、活動時・体動時の心不全症状が代償できているかどうかで決まります。看護師は、日常生活援助をする際に、うっ血および低灌流の症状が出ていないか観察しながら看護します。


 同じ日常生活援助や活動量でも、治療により経時的に症状が出現しなくなっていれば、心不全は代償できていると評価できます。例えば、清拭の際に息切れがみられた患者さんが、治療後の清拭では息切れが出なくなったり、1人で入浴しても息切れしなくなったといった場合には、心不全は代償できていると評価します。


 また、一例になりますが、β遮断薬の導入や増量時には、心不全症状が顕在化する可能性があります。うっ血および低灌流の症状がないかを意図的に観察し、Nohria-Stevenson分類に当てはめて、患者さんの状態をアセスメントできるようになるとよいでしょう。


 ほかに、Profile BあるいはProfile Cに分類された患者さんは重症という認識をもち、密な観察を行うことも重要です。


引用文献

1)渡邊雅貴:急性心不全症候群の新しい病態分類.ICUとCCU 2011;35(1):19.

2)日本循環器学会,他:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版),2018,p.12.

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