輸血検査|血液型検査、不規則抗体検査(スクリーニング検査)、交差適合検査(クロスマッチ)
- 公開日: 2021/10/25
血液型検査の目的と方法、手順
ABO血液型とRhD血液型の2種類を検査します。ABO血液型にはA型・B型・O型・AB型の4種類が、RhDには陽性・陰性の2種類があり、組み合わせによって計8種類の判定結果があります。
血液型検査の目的
ABO血液型
血液型の組み合わせにより、血液型抗原と、規則抗体と呼ばれる血液型抗原に対する抗体(抗A抗体・抗B抗体)が決まっています。血液型検査は、この性質を利用して施行されています。
ABO血液型検査では、まず、抗Aおよび抗B試薬を用いて、患者血球のA抗原およびB抗原の有無を調べます(オモテ検査)。次に、既知のA型およびB型血球を用いて、患者さんの血清中に存在する抗A抗体および抗B抗体の有無を調べます(ウラ検査)。オモテ検査とウラ検査の結果が一致している場合に、血液型が確定されます。
オモテ検査 |
ウラ検査 | 判定結果 | |||
抗A |
抗B |
A血球 |
B血球 | O血球 | |
+ |
ー |
ー |
+ | ー | A |
ー | + | + | ー | ー | B |
ー | ー | + | + | ー | O |
+ | + | ー | ー | ー | AB |
RhD血液型
RhD血液型検査は、抗D試薬を用いて患者血球のD抗原の有無を調べるオモテ検査のみを行います。RhD血液型には規則抗体は存在しないからです。
血液型検査の二重チェック
医療安全上、同一患者さんから異なる時点で採取した2検体で、二重チェックを行う必要があります。さらに、同一検体について異なる検査者がそれぞれ独立に検査し、二重チェックを行うことも必要です。
血液型検査の方法と手順
血液型検査の方法には①スライド法(オモテ検査のみ)、②試験管法、③カラム凝集法、④マイクロプレート法があります。多くの病院で試験管法が採用されていますが、大学病院等の大規模な施設では、全自動輸血検査装置が採用されています。
試験管法の操作手順
1)患者検体は1,200G(3,000rpm) 5分遠心し、患者名を明記した試験管に血漿(血清)を分取する。
2)試験管7本(赤血球浮遊液用:1本、検査用:6本)を準備する。
3)赤血球浮遊液用と検査用の試験管に患者氏名(または識別番号)と試薬名を明記する。
4)赤血球浮遊液用試験管に3~5%患者赤血球浮遊液を作製する。
5)抗A、抗B、抗D、Rhコントロール(Rh cont)の試験管にそれぞれの試薬を各1滴滴下する。
6)ウラ検査用試験管に血漿(血清)を2滴ずつ滴下する。
7)患者血漿(血清)や抗体試薬の分注もれがないことを確認する。
8)5)のオモテ検査およびRhD検査用試験管に3~5%患者赤血球浮遊液を1滴ずつ滴下する。
9)ウラ検査用試験管によく混和したA赤血球とB赤血球の試薬を各1滴滴下する。
10)患者赤血球浮遊液や赤血球試薬の分注もれを確認し、よく混和する。
11)試験管を900~1,000G(3,000~3,400rpm)15秒遠心する。
12)凝集や溶血の有無を観察し、判定結果(反応強度)を記録する。
注:Rhコントロールは抗D試薬の添付文書に従う。
手順・図ともに日本輸血・細胞治療学会:Ⅱ.検査法.輸血のための検査マニュアル Ver.1.3.1.2017,p.3.より転載
不規則抗体検査(スクリーニング検査)の目的と方法、手順
不規則抗体検査の目的
抗A・抗B以外の赤血球に対する抗体は、不規則抗体と呼ばれます。患者さんが保有する不規則抗体を判定するため行われるのが、不規則抗体(スクリーニング)検査です。不規則抗体の多くは、輸血や妊娠により産生されます。
不規則抗体の代表例として、Rh血液型E抗原に対する抗体(抗E抗体、抗ラージEあるいはビッグEと呼ばれる)が挙げられます。抗E抗体を持つ患者さんの場合、選択される輸血製剤は「E-血球」(赤血球表面にE抗原を持たない血球)です。
不規則抗体検査の方法
検査の方法には、①試験管法、②カラム凝集法、③マイクロプレート法があります。体温に近い37℃に加温する必要があり検査に時間を要します。検査で陽性だったときは精密検査を行います。
交差適合検査(クロスマッチ)の目的と方法、手順
交差適合検査の目的
血液製剤との適合性を検査するために、輸血前に行う重要な検査です。
この赤血球製剤を患者さんに投与しても抗原抗体反応が生じないかをチェックする最終関門です。
交差適合試験は、①ABO血液型の不適合がないか、②患者さんが持っている抗体が輸血する血液製剤と反応しないか、を確認するために行われます。交差適合検査には、主試験と副試験があり、主試験は、ABO血液型の不適合がないか、37℃で反応する臨床的に問題となる(『臨床的に意義のある』といいます)不規則抗体の検出を目的に行われます。主試験は必ず実施しなければなりません。副試験では、ABO血液型の不適合がないかを確認します。
交差適合試験の検体には、輸血事故を防止するために高い利用価値があります。ルーチンの検査は上記2点を目的に行われますが、初回(初診)緊急輸血で血液型検査を1度しか行っていない場合、交差適合試験の検体で血液型検査を実施します。その結果、血液型検査の信頼性が高まり(ダブルチェック)、輸血事故防止の1つの手段になるのです。
輸血副作用に関する遡及調査ガイドラインでは医療機関に対しては輸血施行前の血清検体を2年間を目安として凍結保管することを推奨しています。
交差適合検査の方法と手順
PEG:polyethylene glycol,LISS:low-ionic-strength solution
*1 低温反応性の抗体によって、生理食塩液法のみならず反応増強剤-間接抗グロブリン試験でも陽性となることがある。その場合には、反応増強剤無添加-間接抗グロブリン試験を試みる。
*2 PEG-IAT では抗IgG 試薬を用いる。
注:検査に用いた患者血液とセグメントチューブは一定期間保管して、副作用発生時の調査に備える。
日本輸血・細胞治療学会:Ⅱ.検査法.輸血のための検査マニュアル Ver.1.3.1.2017,p.8.より転載
引用・参考文献
●日本輸血・細胞治療学会:輸血のための検査マニュアルVer.1.3.1.2017.藤田 浩:リスクマネジメントに役立つ最新輸血のケアQ&A.照林社,2008,p.30-3.