輸血の手順|血液製剤の準備、実施の手順と注意点
- 公開日: 2022/4/14
輸血事故を防止するための重要なポイント
●血液製剤の準備は一患者さん毎に実施します。
●照合・確認は、投与開始までに3回行います。
1回目:血液製剤の受け渡し(出庫時)…輸血部門において
2回目:輸血準備時…ナースステーションにおいて
3回目:輸血実施時…ベッドサイドにおいて
●照合・確認は、1人では行わないでください。
●患者さん本人や前医の血液型申告、転院前の血液製剤の血液型を過信しないでください。
●副作用発現時の対処方法や必要物品の保管場所を確認しておきましょう。また、異常時にすぐに主治医と連絡が取れる体制を整えておくことも大切です。
輸血の準備(必要物品、血液製剤の準備)
必要物品として、注射指示書、輸血同意書、血液型を確認できるもの(血液検査結果など)、交差適合試験適合票、輸血用血液製剤、輸血セット、トレイ、ディスポ手袋、消毒用アルコール綿、生理食塩水(リンス用)、輸液スタンド、PDA端末を準備します。
1.注射指示書で、輸血指示(輸血日、血液型、血液製剤の種類、単位数、滴下速度など)を確認します。赤血球製剤の場合には、交差適合試験が適合であることも確認してください。
2.医師と看護師2人で声に出して照合し、適合票へサインをします。
●血液型は血液製剤、交差適合試験適合票、カルテの3点で照合します。血液製剤と交差適合試験適合票の患者姓名、製造番号が一致し、有効期限内であることを確認します。
●赤血球製剤、血小板濃厚液の場合は、放射線照射済みであることを確認します。
●血液バッグ内の血液の色調変化や溶血、凝血塊、凝集塊などの異常、血液バッグの破損の有無を確認します。異常を認めた場合は使用せずに、別の血液製剤へ変更してください。
細菌感染(エルシニア菌)した赤血球製剤(図1-1)と凝集物が混入している血小板製剤(図1-2)です。
まれに乳糜により白濁した新鮮凍結血漿もみられますが、これは、献血者の食事(高脂肪食や多量のアルコール摂取等)の影響と考えられます。食餌性の脂肪によるものであるため、輸血として問題ありません。
新鮮凍結血漿の融解前は簡単に破損しやすいため、箱から丁寧に取り出し、ビニール袋に入れたまま恒温槽や融解装置を用いて30~37℃の温湯で融解してください。融解時の注意として、製剤の温度が融解温度に達していること及び完全に融解していることを目視及び触感等等で確認し、不溶物が認められる場合は使用しないでください。
温度が低い場合、沈殿(クリオプレシピテート)が析出し、フィルターの目詰まりを起こします。温度が高すぎると蛋白質の熱変性により、凝固因子の低下を招き、輸血効果が得られません(図3)。また、適正に融解したにも関わらず白い浮遊物が出現した場合は、フィブリンの析出が考えられます(抗凝固薬の混和不足による凝血の一部)。フィブリンが析出した新鮮凍結血漿は輸血することはできません(表1)。
現象 | 判定 | |
適正な融解 |
全体的に白濁 | 乳糜→輸血可能 |
白い浮遊物 | フィブリン→輸血不可 | |
不適切な融解 | 白い浮遊物 | タンパク質の熱変性→輸血不可 |
低温融解→クリオプレシピテート* |
●スワーリングの確認(血小板濃厚液の場合)
スワーリングとは血小板の形態が良好に保たれているときに、血小板製剤を蛍光灯にかざしゆっくり撹拌すると確認できる渦巻き状のパターンをいいます。バッグの厚さを薄くして、電気スタンド等を用いて光を当てることで確認しやすくなります。