第7回 小児・乳児の救急蘇生法|心肺蘇生(胸骨圧迫・人工呼吸)、AED、気道異物除去など
- 公開日: 2022/4/17
小児の蘇生も成人と同様に、医療従事者を含め誰でも実施することができる一次救命処置(Pediatric Basic Life Support:PBLS)と、医療機関において医療従事者が行う二次救命処置(Pediatric Advanced Life Support:PALS)があります。今回はPBLSを中心に解説します。
救急蘇生法とは
救急蘇生法とは、容態が急変した人に対して行う救命処置のことを指します。心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:CPR)を構成する重要な2つの要素は、胸骨圧迫と人工呼吸です。傷病者の生存の可能性は、質の高いCPRによって向上します。質の高いCPRの特徴を学び、スキルを効果的に実施できるようにすることが大切です。
救急時における評価の仕方
①周囲の安全を確認し、まず傷病者の反応の有無を評価します。肩を軽くたたきながら大声で呼びかけても、何らかの反応や目的をもった仕草が認められなければ、「反応なし」とみなします。乳児の場合は、足底を刺激して顔をしかめたり、泣いたりするかで評価します。反応がない場合は応援を要請します。
②呼吸状態が正常か異常かを調べます。呼吸をしていない、死戦期呼吸がみられる、またはわからない場合は胸骨圧迫から開始します。
小児の一次救命処置(Pediatric Basic Life Support:PBLS)
気道確保
◆目的気道の狭窄や閉塞時、人工的に気道を開通させ、空気の通り道を確保することです。
◆方法 全身状態の観察を行い、反応のない患児では部分的気道閉塞が起こりやすいため、体位を整え気道確保を行います。気道確保には、頭部後屈あご先挙上法と下顎挙上法があります。CPR(胸骨圧迫+人工呼吸)
胸骨圧迫30回、人工呼吸2回の順にCPRを行います。小児・乳児で救助者が2人の時は、圧迫換気比を15:2へ変更します。
【胸骨圧迫】
◆目的心停止した患児の脳や心臓に血液の循環を促します。
◆手順【人工呼吸】
◆目的自発呼吸が不十分な患児に対し、肺に酸素を含んだ空気を送り、換気を補助します。
◆手順【CPR(胸骨圧迫+人工呼吸)のまとめ】
CPRについては、年齢ごとの違いを把握しておくとよいでしょう(表2)。
表2 小児におけるCPRのポイント(年齢別)年齢 | 乳児(1歳未満) | 小児(1~15歳) | 成人(16歳以上) |
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脈拍チェック | 上腕動脈 | 頸動脈、大腿動脈 | 頸動脈 |
胸骨圧迫部位・方法 | 【部位】 胸骨の下半分(乳頭間線の少し足側) 【方法】 救助者1名:2本指法 救助者2名:胸郭包み込み両母指圧迫法 | 【部位】 胸骨の下半分 【方法】 両手または片手の付け根で圧迫 | 【部位】 胸骨の下半分 【方法】 両手の付け根を合わせて圧迫 |
圧迫の深さ | 胸部前後径の約1/3(約4cm) | 胸部前後径の約1/3(約5cm) | 約5cm |
圧迫の速度 | |||
胸骨圧迫:換気比 | 救助者1名=30:2 救助者2名=15:2 | 救助者1名=30:2 救助者2名=15:2 | 救助者数にかかわらず30:2 |
換気回数(高度気道確保時) | 6秒に1回の換気 |
自動体外式除細動器(automated external defibrillators:AED)
AEDはショックを必要とする異常な心リズムを特定し、ショックを与えることができるコンピューター制御の装置です。AEDは操作が簡単で、医療従事者はこれを使用して安全に除細動を試みることができます。
乳児または未就学児に対してAEDを使用する場合は、いくつかの留意事項があります。一部のAEDでは、成人用と小児用とで異なるエネルギー量のショックが与えられるように改良されており、エネルギー量を選択する方法は、使用するAEDの種類によって異なります。
小学生以上では成人用パッド(小学生~大人用パッド)で操作し、乳児を含む未就学児(およそ6歳まで)では小児用パッド(未就学児用パッド)で操作する必要があります。
◆手順気道異物除去
急変時の呼吸停止は窒息によることが多く、その原因のほとんどが気道異物による気道閉塞と考えられています。気道閉塞は認められる徴候により、軽度と重度に大きく分けられます(表3)。
表3 気道閉塞時の主な徴候と対応PBLSのまとめ
成人の心停止は突然発症し、心原性であることが多いですが、小児の心停止は呼吸不全およびショックに続発して起こることが多くあります。成人だけではなく、小児に対するBLSアルゴリズムや救助方法を把握しておきましょう。