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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

日本救急医学会熱中症分類2015

  • 公開日: 2023/7/15

日本救急医学会熱中症分類2015は何を判断するもの?

 日本救急医学会熱中症分類2015は、熱中症の重症度を評価するためのスケールです。

 熱中症は、高温多湿な環境下で電解質バランスが崩れたり、体温調節機能が低下して体温が著しく上昇した状態をいい、『熱中症診療ガイドライン2015』では、熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病の総称と定義しています1)

 熱中症にかかると、めまいや立ちくらみ、嘔気・嘔吐、頭痛などを認め、適切な対処をしないまま重症化すると、死に至るおそれもあります。特に、体温調節機能が未熟な小児や、体内の水分量が少なく、暑さに対する感覚機能が低下している高齢者は熱中症になりやすく、早期段階から適切な治療を開始することが重要です。

 日本救急医学会熱中症分類2015を用いることで、熱中症による異常の把握と早期の治療につなげることができ、重症化を予防できます。

日本救急医学会熱中症分類2015はこう使う!

 日本救急医学会熱中症分類2015では、熱中症の重症度をⅠ~Ⅲ度の3段階で評価し、Ⅰ度は現場で対処が可能な状態、Ⅱ度は速やかに医療機関への受診が必要な状態、Ⅲ度は採血や入院(医療者の判断)が必要な状態と判断します(図)1)

 症状のみで迅速に重症度を分類できますが、重症度ごとに示された症状はあくまでも一般的によくみられる症状であり、その症状がみられなければ別の重症度に分類されるというわけではありません。また、熱中症の重症度は患者さんの年齢や基礎疾患、対処のタイミングなどによって短時間で変化しやすいため、注意深く経過を観察していくことが必要です。

図 日本救急医学会熱中症分類2015

日本救急医学会熱中症分類2015
日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン2015.p.7(2023年7月3日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdfより引用

日本救急医学会熱中症分類2015の結果を看護に活かす!

 熱中症が疑われる患者さんに対応する際は、日本救急医学会熱中症分類2015による重症度を正しく把握したうえでケアを行えるとよいでしょう。

 重症度にかかわらず、体温を下げることを最優先に考え、風通しのよい日陰やクーラーの効いた室内に移動させて衣服を緩め、保冷剤や濡れたタオルでなどで体表冷却を行います。スポーツドリンクや経口補水液の摂取を促すことも重要です。

 また上述したように、熱中症は重症度が短時間で変化しやすく、特に高齢者の場合、軽症でも治療が奏功しないケースが少なくありません。初期評価の重症度だけではなく、年齢、基礎疾患、初期対処の有無など全体的な状況を把握しつつ、バイタルサインや状態の確認をしていきます。重症度の変化が疑われる場合は、速やかに医師に報告することも大切です。

引用・参考文献

1)日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン2015.p.7.(2023年7月3日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf

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