おさえておこう! gradeの評価とケア【PR】
- 公開日: 2022/12/13
がんの治療に伴ってさまざまな皮膚障害が生じます。皮膚障害の評価のしかた、具体的な対処法、スキンケアのコツについて解説します。
皮膚障害(⽪膚乾燥、⽪膚⾊素過剰、⽖囲炎、ざ瘡様⽪疹、⼿掌・⾜底発⾚知覚不全症候群)の重症度(grade)の評価のしかたとgradeごとのスキンケアについて教えてください。
症状が日常生活に支障をきたしているかどうかが判断基準となります。
皮膚障害のgrade評価
「有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版(CTCAE v5.0 – JCOG)」は、体表面積や日常生活に支障があるかないかでgradeが分かれています。おおむねgrade 1が軽症、grade 2が中等症、grade 3が重症に相当します。最近主流になってきている分子標的薬では、皮膚乾燥や爪囲炎、ざ瘡様皮疹が出現し、これらの症状が日常生活に支障をきたすか否かが、薬剤の減量や中止にかかわってきます。grade評価においても日常生活動作の制限、つまりその人の生活に支障があるかないかが、判断のポイントとして一番わかりやすいと思います。
薬剤性の皮膚障害は薬剤の主作用の結果でもあり、薬剤の効果と皮膚障害の出現が比例することも多いため、安易に皮膚障害の出現により治療の中止や減量することができない場合があります。そのため、症状が出現してもgradeのなるべく低いところで治めたいですから、まずは予防的なスキンケアを続けていきます。
皮膚乾燥
皮膚乾燥は体表面積の10%を占めるか、30%を超えるかで3段階にgrade分けをしています。grade 1は保湿ケアのみで大丈夫ですが、grade 2になるとかゆみが出始め日常生活が少しずつ厳しくなってきます。ドライスキンになるとかゆみにかかわる神経が表皮まで伸びてきて、症状が出現しますので、まずは保湿に努めます。皮膚乾燥にはセラミド、コレステロールなどの細胞間脂質成分が配合された保湿剤が一番効果的です。かゆみにより日常生活に支障をきたすあたりから皮膚科医に声掛けし、副腎皮質ステロイド薬の外用が始まります。ステロイド薬は弱いものでは症状が治まらないので、強いものから始めます。grade 3ではかなり日常生活に制限がかかりますので、積極的に皮膚科医に声掛けしたほうがよいでしょう。
皮膚乾燥:有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版(CTCAE v5.0 – JCOG)
[CTCAE v5.0/MedDRA v20.1(MedDRA/J v25.0)対応 2022年3月1日]
grade 1 | grade 2 | grade 3 | 定義 |
体表面積の<10%を占め、紅斑やそう痒は伴わない | 体表面積の10-30%を占め、紅斑またはそう痒を伴う; 身の回り以外の日常生活動作の制限 | 体表面積の>30%を占め、そう痒を伴う;身の回りの日常生活動作の制限 | 鱗屑を伴った汚い皮膚; 毛孔は正常だが、紙のように薄い質感の皮膚 |
⽪膚⾊素過剰(⾊素沈着)
色素沈着は体表面積の10%を超えるかどうか、社会心理学的な影響(ボディーイメージ、見た目の問題など)があるかで2段階にgrade分けをしています。色素沈着はメラニンの過剰産生ですから、保湿をしてターンオーバーを正常にすることがケアの基本となります。
皮膚色素過剰:有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版(CTCAE v5.0 – JCOG)
[CTCAE v5.0/MedDRA v20.1(MedDRA/J v25.0)対応 2022年3月1日]
grade 1 | grade 2 | 定義 |
体表面積の≦10%を占める色素沈着; 社会心理学的な影響はない | 体表面積の>10%を占める色素沈着; 社会心理学的な影響を伴う | メラニンの過剰による皮膚色素沈着 |
⽖囲炎
爪囲炎は指先に痛みがかなりあり、grade 2では皮膚科で何かしらの処置(テーピング、ステロイド薬など)を、grade 3では外科的な処置を要します。不良肉芽が盛り上がってくると、痛みが増して何もできなくなってきますので、なるべくそうならないよう早めにステロイド薬を塗り始めるようにします。
爪囲炎:有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版(CTCAE v5.0 – JCOG)
[CTCAE v5.0/MedDRA v20.1(MedDRA/J v25.0)対応 2022年3月1日]
grade 1 | grade 2 | grade 3 | 定義 |
爪襞の浮腫や紅斑;角質の剥脱 | 局所的治療を要する;内服治療を要する(例: 抗菌薬/抗真菌薬/抗ウイルス薬); 疼痛を伴う爪襞の浮腫や紅斑; 滲出液や爪の分離を伴う; 身の回り以外の日常生活動作の制限 | 外科的処置を要する;抗菌薬の静脈内投与を要する; 身の回りの日常生活動作の制限 | 爪周囲の軟部組織の感染 |
ざ瘡様⽪疹
ざ瘡様皮疹は皮膚乾燥と同様に、体表面積に占める割合や日常生活動作の制限などからgrade分けをしています。膿疱になったり感染徴候がみえる場合は、grade 2のあたりから皮膚科医に声掛けし、ステロイド薬外用に加えて抗菌薬(ミノサイクリン)内服など、感染を悪化させない早め早めの対応を行います。
ざ瘡様皮疹:有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版(CTCAE v5.0 – JCOG)
[CTCAE v5.0/MedDRA v20.1(MedDRA/J v25.0)対応 2022年3月1日]
grade 1 | grade 2 | grade 3 | grade 4 | grade 5 | 定義 |
体表面積の<10%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない | 体表面積の10-30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、そう痒や圧痛の有無は問わない; 社会心理学的な影響を伴う;身の回り以外の日常生活動作の制限; 体表面積の>30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で, 軽度の症状の有無は問わない | 体表面積の>30%を占める紅色丘疹および/または膿疱で、中等度または高度の症状を伴う; 身の回りの日常生活動作の制限; 経口抗菌薬を要する局所の重複感染 | 生命を脅かす; 紅色丘疹および/または膿疱が体表のどの程度の面積を占めるかによらず、そう痒や圧痛の有無も問わないが、抗菌薬の静脈内投与を要する広範囲の局所の二次感染を伴う | 死亡 | 典型的には顔面、頭皮、胸部上部、背部に出現する紅色丘疹および膿疱 |
⼿掌・⾜底発⾚知覚不全症候群(⼿⾜症候群)
手足症候群は、皮膚の変化の程度(疼痛の有無など)や日常生活動作の制限などからgrade分けをしています。保湿がケアの基本となりますが、手についてはハンドクリームなどの保湿剤を塗り、炊事のときにゴム手袋をしたり、ほかからの刺激を避ける工夫をします。grade 2で亀裂が出てくるようであれば皮膚科医に声掛けし、ステロイド薬を処方してもらうのがよいでしょう。
足裏は保湿クリームを塗ると転倒のリスクがあるため、保湿剤が塗りにくい部位です。べたつきの少ないローションタイプの保湿剤を塗って靴下を履き、転倒を防ぐようにします。ローションタイプは足裏にも塗りやすく、靴下についても洗濯が容易です。手はすぐに見える場所ですが、足はそうはいきません。手に亀裂が入っていたら足も同じようになっていると思いますが、外来診察中に靴を脱いでみせてもらうと時間がかかってしまいます。外来での抗がん薬治療中ベッドに横になっているときに足の裏をみせてもらったり、往診したりしてしっかり観察するようにしています。靴にも注意を払い、高いヒールを履かないようにし、中敷きを厚みのあるふわふわしたものにして圧力を避けるようにします。
手掌・足底発赤知覚不全症候群:有害事象共通用語規準 v5.0日本語訳JCOG版(CTCAE v5.0 – JCOG)
[CTCAE v5.0/MedDRA v20.1(MedDRA/J v25.0)対応 2022年3月1日]
grade 1 | grade 2 | grade 3 | 定義 |
疼痛を伴わない軽微な皮膚の変化または皮膚炎(例: 紅斑、浮腫、角質増殖症) | 疼痛を伴う皮膚の変化(例: 角層剥離、水疱、出血、亀裂、浮腫、角質増殖症); 身の回り以外の日常生活動作の制限 | 疼痛を伴う高度の皮膚の変化(例: 角層剥離、水疱、出血、亀裂、浮腫、角質増殖症); 身の回りの日常生活動作の制限 | 手掌や足底の、発赤、著しい不快感、腫脹、うずき手足症候群としても知られている |
予防的なスキンケア
皮膚障害を予防するためのスキンケアの基本も、洗浄・保湿・保護であることに変わりありません。スキンケアというと保湿をメインにしがちですが、まずは汚れを落とすことができないと保湿剤が入っていきません。洗浄剤は抗がん薬を始めて2週間ごろ、そろそろ症状が出始める時期からは、弱酸性などの刺激の少ないものにするとよいでしょう。保湿剤は普段使っているもので構いませんが、皮膚乾燥に対してはセラミドやコレストロールなどの細胞間脂質成分が配合されたものがよいと思います。保護については、紫外線対策が最も重要です。窓から入ってくる紫外線がありますから、家の中でも日焼け止めを塗るようにします。外出時には、日焼け止め+日傘やつばの広い帽子、アームカバーなどで保護します。
敏感肌にも使えるミノンシリーズ
ミノン全身シャンプー泡タイプ

顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。
[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)
詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/
がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。