1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 在宅・地域
  5. 訪問看護
  6. 在宅療養者によくみられるスキントラブル|2023年2月開催セミナーレポート【PR】

在宅療養者によくみられるスキントラブル|2023年2月開催セミナーレポート【PR】

  • 公開日: 2023/5/15
  • # 訪問看護
  • # スキンケア
  • # 注目ピックアップ

持田先生

おさえておきたい! スキンケアの基本

 スキンケアの目的は皮膚の生理機能を正常に保つことであり、ケアの原則は皮膚の洗浄・清潔、保湿、保護です(表1)。十分に泡立てた洗浄剤で皮膚を優しく洗い、微温湯で洗い流します。洗浄剤は汚れだけでなく皮脂膜も除去してしまうため、保湿剤を塗って潤いを保ちます。

洗浄・清潔 十分に泡立てた洗浄剤で皮膚をなでるように洗い、微温湯で洗浄剤を洗い流す
洗い流すことが難しい場合は清拭剤で拭き取りをする
保湿 洗浄剤・清拭剤は皮膚の不要な汚れだけでなく、皮脂膜も除去してしまう
そのため洗浄後は保湿剤を毛の流れに沿って強く擦らないように塗布する
保護 排泄物や体液などが付着しやすい部位には、刺激から皮膚を保護する目的で保護クリームを使用

 特に排泄物などが付着しやすい部分には、保護クリームなどを使用し、刺激から皮膚を保護します。皮膚洗浄のポイントは、表皮に付着した汚れをきめ細かい泡で包み込んで擦らずに除去することです。最近では、泡立てる手間がなくワンプッシュで泡石けんが出てくる商品も増えていますので、利用を検討してみてもよいでしょう。

スキンケアの目的
・皮膚の生理機能を保持する
・ケアの原則は、皮膚の洗浄、保湿、保護
・ドライスキンにさせない(バリア機能低下を防ぐ)
・皮膚を汚れさせない
・拭き取るより、洗い流すケア
・物理的・機械的・化学的刺激要因を除去
・目的に応じたスキンケア方法の選択

在宅療養者によくみられるスキントラブル

 在宅でみられるスキントラブルと聞いて、どんな状態が思い浮かびますか?

 在宅で療養している人の70%以上がなんらかのスキントラブルを抱えていると報告されています1)。内訳をみると真菌感染症、湿疹や皮膚炎、IAD(失禁関連皮膚炎)が上位にあがります。他にはドライスキンや接触皮膚炎などがみられます。

真菌感染症

 真菌感染症は最も多いスキントラブルのひとつです。おむつ内の適温・多湿な環境により臀部に生じます。皮疹が環状に拡大する、保湿をしても治らず、副腎皮質ステロイド外用薬で悪化するなどの特徴があります。可能なかぎり早めに皮膚科の受診ができるように調整していくことが必要です。

ドライスキン

 ドライスキンもよくみられます。加齢により皮脂の分泌が減り、角質層の水分保持力が低下して皮膚が乾燥して起こります。皮膚のバリア機能が低下し、物理的刺激で傷つきやすく、治りにくくなります。保湿と保護が必要になります。

老人性乾皮症

 老人性乾皮症は、加齢による皮膚のバリア機能低下が関係しています。症状は、皮膚に浅い亀裂ができ、皮膚が粉状に剥がれてきます。膝下や腰背部に多く、強い掻痒感を伴い、掻くことでさらに炎症が悪化します。悪化すると脂肪欠乏性湿疹が生じます。保湿剤だけでは治癒しないため、副腎皮質ステロイド外用薬を用いて炎症部分を治療していくことがポイントとなります。

スキン-テア

 スキン-テアは、持続する圧迫がなく、一時的な摩擦やずれによって発生した皮膚損傷で、褥瘡とは発生要因が大きく異なります。感染と二次損傷を回避することが重要です。

 この他、尋常性乾癬、アレルギー性皮膚炎、爪囲炎、カンジダ皮膚炎、蜂窩織炎、帯状疱疹などがみられます。在宅でのスキンケアにあたっては、在宅でよくみられるスキントラブルや問題をあらかじめ理解しておくことも重要となります。また、異常の有無を見逃さないようにするため、毎日皮膚をしっかりと観察することを意識して行いましょう。

こんなときあなたならどうしますか? ―事例をもとに考えてみようー

事例①

Aさん(70歳代男性)
・皮膚が乾燥してキメが粗くなって白い粉のように剥がれ落ちている。
・爪先をみると、爪は肥厚してかかとは白く角質が固くなっているようにみえる。
・シャワー浴は毎日行っている。

皮膚が肥厚している患者さんの図

実施したケア

 ドライスキンが悪化して、老人性乾皮症となっています。かかとは傷つきやすく注意が必要なため、靴下の着用を勧めました。保湿剤を処方してもらい、できるだけ毎日塗るように声をかけるようにしました。保湿剤の塗布を続けてもらうと徐々にきれいになり、痒みも少なくなりました。

保湿剤を選ぶときのポイント
病院に行けるのか、処方なのか市販なのか、そのコストや買いに行けるかどうかなどを考慮する必要があります。また使用感や、自分で塗れるかどうか、蓋を開けたりポンプを押したりできるのかなども含めて、俯瞰的に評価しながら選択しましょう。

ベタベタするのが嫌だという人には、無理に新しいものを勧めず、本人が使っている化粧水やローションなど、自宅にあるものをまずは使ってみるのもよいでしょう。訪問時にマッサージをしながら保湿をしてみたりして、効果が実感できれば他の保湿剤に興味をもつことがあるかもしれません。

事例②

Bさん(50歳代歳男性)
・首の後ろから耳のあたりまで赤くなっている。
・Bさんは湿布でかぶれたと言っている。

耳の裏に発赤がある患者さんの図

実施したケア

 系統的なフィジカルアセスメントが必要となります。本当にかぶれたのか、いつから痒くなったのか、他の症状はないのかなどを確認していきます。

 主訴を詳しく尋ねると、1、2日前から飲み込むときに痛みがあり、喉や首のあたりを触るとピリピリとした痛みがあったとのこと。また、湿布でかぶれたとの訴えでしたが、左右両方に湿布を貼っていたにもかかわらず、赤く熱感のある湿疹は片側に限局していました。帯状疱疹を疑い、皮膚科を受診し、内服薬と外用薬を処方してもらいました。

 見た目だけではなく、経過やエピソードなどをしっかり聞き取りながら、アセスメントすることが大切です。

事例③

Cさん(80歳代男性)
・毎日デイサービスでシャワー浴をしているが、痒みがある。

下肢に皮疹のある患者さんの図

実施したケア

 顔や頭部に赤いプツプツがみられますが、その他の部位はどうなのか、全身の皮膚を確認し、エピソードをしっかりと聞き取っていく、系統的なフィジカルアセスメントが必要となります。

 発疹は、前胸部から左下肢にまで広がっていて、下肢のほうが症状はひどく痛みも感じていました。皮膚科受診が必要と判断し、家族やケアマネージャーに相談しました。帯状疱疹の診断で、内服薬と外用薬が処方されました。しばらくは、デイサービスは休むことになり、看護師の介助のもと自宅でシャワー浴を実施するため、看護師の訪問回数を増やすなど、ケアマネージャーとの調整が必要となりました。

 デイサービスに復帰する際には、デイサービスのスタッフが安心できるよう、どのような治療を行ってどう経過したのかという情報共有を行うことも必要です。

在宅スキンケアの悩み事について

 在宅スキンケアについて、よく伺う質問をもとに考えをまとめてみました。

保湿剤の選び方が知りたい

 保湿剤の形状や選び方については、在宅の現場でもよく聞かれます。それぞれの特徴や長所、短所を表2にまとめました。どのような状態で、どの部分に使用するのか、アセスメントしながら選択できるとよいと思います。

表2 保湿剤の形状による特徴
軟膏 クリーム ローション
基剤 ・油 ・水と油を混ぜた乳化剤 ・水と油を混ぜた乳化剤
※水分量がクリームより多い
刺激性 ・弱い ・軟膏に比べて強い ・軟膏に比べて強い
べたつき ・強い ・水を含むので伸びがよく、べたつきにくい ・軟膏やクリームに比べて、べたつきにくい
皮膚吸収 ・クリームより遅い ・吸収されやすい ・軟膏より吸収されやすい
使用に適した患部 ・どんな状態の患部にも使える
・刺激性が弱いので皮膚の弱い人にも使える
・主に乾燥している患部に使用
・ジュクジュクした患部、傷がある部分には適さない
・軟膏やクリームが塗りにくい、頭皮など有毛部に適している
・ジュクジュクした患部、傷がある部分には適さない
長所・短所
・保湿力が高く、皮膚を保護する
・さらっとした使用感から夏場は軟膏からの変更使用もある一方、汗で流れやすい ・伸びがよく、さらっとした使用感。水分が多く気化しやすいので夏場など汗をかくときの身体にも使いやすい

 スキンケア製品はさまざまなものがあり、使用に際し迷うことが多いと思います。スキンケア製品を勧める場合は、保湿は継続することが何より重要ですから、まず使用感を大切にし、価格や入手のしやすさを考慮します。高齢者の場合、自分で使えるのか、誰が使うのかなども考える必要があります。

 市販で購入できる保湿剤は大きく3種類に分けられます。使い分けは表3にまとめました。

表3 市販で購入できる主な保湿剤
ヘパリン類似物質 ワセリン 尿素
商品名 ・ヒフメイドシリーズ
・へパドロイド油性クリーム
・ヒルドイド
・ヒルメナイドシリーズ
・ヘパソフトプラス
・イハダドライキュア乳液
・白色ワセリン
・プロペト
・サンホワイト
・ヴァセリン
・イハダ薬用バーム
・ケラチナミンコーワ
・20%尿素配合クリーム
・尿素10%クリーム
・尿素スキンクリーム
作用機序 ・モイスチャライザー
・皮膚に浸透し水分保持
・エモリエント
・皮膚の表面に膜を張り水分蒸発を防ぐ
・モイスチャライザー
・皮膚に浸透し水分保持
特徴 ・保湿作用は大
・水分保持力高い
・価格が高い
・刺激が少ない
・べたつき感がある
・ガサガサした手足の角質、皮膚の厚い部分の水分保持
・炎症がある部位にはNG

清潔ケアを拒否する人に対する短時間で効果的なケア方法が知りたい

 なかなか入浴できない人には、ドライスキンがみられるケースが多く、清潔ケアが必要となります。清潔ケアを拒否する人に、毎日保湿剤を塗ってもらうというのは非常に難しいです。このようなときは、保湿剤入りの入浴剤を使い、短時間でできる清拭や部分浴を行ってみるのはいかがでしょう。少しずつ、できそうなことから進めていくのがよいと思います。

脆弱な皮膚に貼ったテープを出血させずに剥がすコツを知りたい

 テープを貼っていると、剥がす際の剥離刺激によってスキン-テアができる、テープの糊などの成分によってアレルギー性皮膚障害が起こるといったリスクがあります。テープを貼る際は、あらかじめカットしたテープを中央から両端に向かって引っ張らずに貼るようにしてください。何度も同じ部分にテープを貼らなければならないときは皮膜剤を使用するとよいでしょう。剥がす際は、引っ張る向きに気をつけます。より優しく剥がす場合は、剥離剤を使用します。高伸縮性のフィルム材は水平に引きながら、低伸縮性のサージカルテープはテープを折り返し、皮膚を押さえながらゆっくり剥がします(図)。皮膚が脆弱な場合、非固着性ガーゼを当てた上に別のガーゼを一巻きし、ガーゼ同士をテープでとめてから、ネット包帯等で固定するなど、固定方法を工夫することも大切です。

図 テープを剥がす際のコツ
テープの剥がし方のコツ

家族が衛生用品を入手する際にどうアドバイスすればよいか知りたい

 消耗品をすべて自費購入するのは経済的に負担となります。在宅療養指導管理料を算定していて、真皮以上の深度を要する褥瘡や皮膚欠損部位に対して使用するという目的であれば、創傷被覆材や非固着性のシリコンガーゼなどは3週間の保険算定が可能です。これには、ガーゼや絆創膏などの衛生材料も含まれますので、医師に相談するとよいでしょう。

 自費購入が必要な場合は、最近ではドラッグストアだけでなく、百円均一ショップでも購入できます。また、私たちが使用する場合は、大切に用いて、なくなる前に声をかけるなどの配慮も必要です。

まとめ

 在宅でのスキンケアは、在宅でのスキントラブルを理解して、皮膚を毎日観察することが大切です。スキンケア用品を選ぶ際には、使用感や価格、購入手段などさまざまな側面を考慮します。スキンケアは継続することが何より大切ですから、無理なく続けられる方法を本人や家族と一緒に考えることが重要です。

引用文献

柳澤宏美,他:在宅療養者における皮膚疾患実態調査 日本臨床皮膚科医会・日本看護協会との共同事業(在宅療養者の皮膚疾患状況と対応の現状).日本臨床皮膚科医会雑誌 2007;24(3):245-52.

敏感肌にも使えるミノンシリーズ

ミノン全身シャンプー泡タイプ

第一三共ヘルスケア_ミノン全身シャンプー泡タイプ


顔、身体、頭が一本で洗える泡タイプの全身シャンプー。バリア機能を守って洗う「植物性アミノ酸系洗浄成分」配合。弱酸性、無香料。


[医薬部外品]販売名:ミノン全身シャンプーW
500mL、400mL(つめかえ用)



ミノン全身保湿ミルク
ミノン全身保湿クリーム

第一三共ヘルスケア_ミノン全身保湿ミルク


敏感肌、バリア機能が乱れやすい肌を支える全身に使える「塗るミノン」。広い範囲のケアにはべたつかないミルクタイプ、乾燥のつらい部位にぴたっと密着感のあるクリームタイプ。


[医薬部外品]販売名:DSミルクz・DSクリームz
200mL、400mL(ミルク)、90g(クリーム)



詳しい製品内容についてはこちら → https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon/


がん治療の皮膚ケア情報サイト はだカレッジ


第一三共ヘルスケアのはだカレッジ画像

薬物療法の皮膚障害の情報を提供するサイト。
患者・家族向けの情報と医療従事者向けの情報を掲載。
医療従事者向けでは、「皮膚に学ぶ・薬に学ぶ・症例から学ぶ」「外来で役立つ・病棟で役立つ・生活で役立つ」の6つテーマに分けた情報が得られます。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_hada-college/hcp/

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

知っていますか? 糖尿病6つ目の合併症「歯周病」とうがいの効果【PR】

糖尿病の血糖コントロールが悪化する要因のひとつに歯周病があります。歯周病の治療や悪化の防止は血糖コントロールの改善につながるため、口腔環境を良好に保つセルフケアの継続が大切です。そこで、薬用マウスウォッシュ(グルコン酸クロルヘキシジン配合洗口液)によるうがいと歯周病菌の減少効果、

2024/6/17