若干の発熱が見られる場合も副作用?|トラブルシューティング
- 公開日: 2024/1/8
輸血の副作用としての発熱には定義がある
輸血副作用としての発熱は、「輸血開始後数時間以内に38℃以上に発熱した場合、または輸血前から発熱している場合は輸血開始後に1℃以上の体温上昇が認められた場合」で「輸血以外の原因が否定された場合」となっています。
輸血による副作用症状のなかでも、発熱(発熱性非溶血性副作用)は、蕁麻疹の次に頻度の高い副作用症状です。原因は①患者さん自身の白血球、血小板、血漿タンパク質に対する抗体、②血液製剤中の白血球によって産生されたサイトカイン等によると考えられています。
発熱を伴う輸血副作用には、急性溶血性副作用や細菌感染等も考えられるため、発熱性非溶血性副作用との鑑別が重要です(表1)。
診断名(疑い) | |||||||
重症アレルギー | 輸血関連急性 肺障害 (TRALI) |
輸血関連循環 過負担 (TACO) |
輸血後GVHD | 急性溶血性 | 遅延性溶血性 | 細菌感染症 | |
発症時間の目安 (輸血開始後) |
24時間以内 | 6時間以内 | 6時間以内 | 1〜6週間 | 24時間以内 | 1〜28日以内 | 4時間以内 |
1)発熱 | |||||||
2)悪寒・戦慄 | |||||||
3)熱感・ほてり | |||||||
4)掻痒感・かゆみ | |||||||
5)発赤・顔面紅潮 | |||||||
6)発赤・蕁麻疹 | |||||||
7)呼吸困難 | |||||||
8)嘔気・嘔吐 | |||||||
9)胸痛・腹痛・腰背部痛 | |||||||
10)頭痛・頭重感 | |||||||
11)血圧低下 | |||||||
12)血圧上昇 | |||||||
13)動悸・頻脈 | |||||||
14)血管痛 | |||||||
15)意識障害 | |||||||
16)赤褐色尿(血色素尿) |
1〜16の項目を元に、輸血副作用と鑑別する。ピンクはしばしば認められる症状。赤はその副作用に必須の症状である。
日本輸血・細胞治療学会 輸血療法委員会:副作用の症状.輸血副作用対応ガイド Version1.0.2011,p.3.より引用
発熱時の対応
輸血開始前から発熱がある場合は、解熱剤を投与し解熱がみられてから輸血をすることがあるので医師に報告し指示を確認しましょう。
輸血開始後に発熱が認められた場合は、まずはいったん輸血を中止してバイタルサインを測定し、発熱以外の副作用症状の有無を確認します。その後医師へバイタルサインや症状を報告し、解熱剤を投与するかどうか指示を確認しましょう。発熱による苦痛がある場合には氷枕などでクーリングをします。発熱性非溶血性副作用の場合、患者さんには、輸血による一時的な発熱であること、どのように対処するのか、どのくらいで治まると思われるのか等の見通しまで説明し安心してもらえるようにします。
また、輸血前に前処置として解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン等)や副腎皮質ステロイドが投与されている場合は、体温上昇の程度が軽微であったり、遅れて発熱をきたすこともあるため、継続した状態観察を行います。定義を満たさない体温上昇であっても、他の副作用項目がチェックされたり、バイタルサインの変化を認めた場合には注意を要し、輸血終了後も経過観察していきます。
入院中の輸血の場合は看護師が常に近くにいるのでタイムリーな対応が可能ですが、外来での輸血の場合は、帰宅後に発熱を含めどのような症状があった場合にどうすればいいのか、起こりうる症状や緊急連絡先等について、患者さんや家族への説明・指導が必要です。口頭での説明だけでなく、わかりやすく記載したパンフレット等があれば利用するのもよいでしょう。
参考文献
●日本赤十字社:輸血療法マニュアル 改訂7版.2018.
●学会認定・輸血看護師制度カリキュラム委員会,編:看護師のための臨床輸血 第2版,中外医学社,2011.
●輸血・細胞治療学会:輸血副反応ガイド 改訂版.2014.