House-Brackmann法
- 公開日: 2024/3/5
House-Brackmann法は何を判断するもの?
House-Brackmann法とは、顔面神経麻痺の重症度を評価するためのスケールです。顔面神経麻痺の重症度を評価するスケールは多くありますが、肉眼的評価を行う場合、日本ではHouse-Brackmann法と40点法(柳原法)と呼ばれるスケールが主に活用されています。
顔面神経麻痺の原因には、ウイルスが関与するBell麻痺やRamsay Hunt症候群をはじめ、外傷、腫瘍、脳血管障害などがあり、ほとんどをBell麻痺とRamsay Hunt症候群が占めます1)、2)。Bell麻痺とRamsay Hunt症候群が原因となる顔面神経麻痺は、「朝起きて鏡を見たら顔が歪んでいた」「ある日突然、顔の半分が動かなくなった」といったように、突然発症するケースが多いのが特徴で、患者さんに大きなショックと不安をもたらします。
顔面神経麻痺はその原因や重症度により、自然治癒するものもあれば、治療に時間がかかったり、後遺症が残ったりするものもあります。麻痺の原因を特定するのとあわせて、House-Brackmann法により重症度を評価し、適切な治療につなげることが重要です。
House-Brackmann法はこう使う!
House-Brackmann法では、顔面全体の表情運動の障害の程度を総括的に捉えて、顔面神経麻痺の重症度の評価を行います。具体的には、安静時の顔面の対称性、額のしわ寄せ、閉眼、口角の運動、共同運動、拘縮、痙攣の7つの項目を評価し、全体的な印象から重症度を判定します(表)。
特別な検査機器を必要とせず、短時間で簡便にスケーリングできるのが利点とされていますが、評価者の主観や経験に左右される場合があり、重症度と自覚症状が一致するとは限らない点に注意が必要です。
表 House-Brackmann法
House-Brackmann法の結果を看護に活かす!
顔面神経麻痺の患者さんの看護に当たるときは、House-Brackmann法による重症度を確認し、状態把握につなげることが大切です。ただし、前述したように、重症度と自覚症状が必ずしも一致するとは限らないため、患者さんの訴えに注意深く耳を傾け、状態が悪化している可能性が高いと考えられる場合は、速やかに医師に報告します。
顔面神経に麻痺が生じると、日常生活動作に支障を来します。麻痺により口の動きが制限され、食事がうまくとれない場合は食事介助を行います。麻痺側に食物残渣が溜まりやすいため、口腔ケアを行うことも大切です。麻痺の影響で眼瞼が閉じられない場合は、点眼で乾燥を防いだり、眼帯による目の保護などが必要になるケースもあり、患者さんの状態に合わせたケアの提供が求められます。
引用・参考文献
1)顔面神経麻痺の治療―特にベル麻痺とハント症候群について―耳鼻科的立場から.日本ペインクリニック学会誌 1994;1(1):48-52.2)村上信五:顔面神経麻痺の診断と治療.日本耳鼻咽喉科学会会報 2012;115(2):118-21.
●池田稔,他:柳原法とHouse-Brackmann法による顔面神経麻痺の評価と患者の自覚的評価の比較検討.日本耳鼻咽喉科学会会報 2001;(7):735-43.
●萩森伸一:顔面神経麻痺に対する電気生理学的検査.日本耳鼻咽喉科学会会報 2017;120 (10);1266-7.