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【連載】眼科で必要な看護技術を学ぼう!

緑内障の看護|分類、検査、治療、ケア(点眼指導、慎重投与・禁忌薬の確認、散瞳薬の注意点の説明)、急性発作時の対応など

  • 公開日: 2024/3/22

緑内障とは

 緑内障とは、主に眼圧の上昇により視神経が圧迫・障害され、視野障害を起こす疾患です。『緑内障診療ガイドラインガイドライン(第5版)』では、「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されており1)、日本における視覚障害の原因疾患の第1位となっています2)

 眼圧は、眼球の内圧のことで眼の硬さを表し、毛様体で産生された房水が眼球内を循環することで一定に保たれています。眼圧が高いと緑内障のリスクが高まりますが、正常眼圧(10~21mmHg)でも緑内障を発症するケースは多く、視神経が障害される眼圧は個人差があると考えられています。

緑内障の分類

 緑内障は、他に発症の誘因がない原発緑内障、他の疾患や薬剤の使用が誘因となる続発緑内障、小児緑内障に大きく分類されます(表1)。

表1 緑内障の分類

原発緑内障原発開放隅角緑内障・線維柱帯とシュレム管が目詰まりを起こし、房水が排出されにくくなり眼圧が上昇する 
・眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障も含む
原発閉塞隅角緑内障・隅角が閉塞することで眼圧が上昇する
続発緑内障・他の眼疾患(糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症など)、全身疾患、薬物使用による副作用が原因で眼圧が上昇する 
・隅角の所見によって、続発開放隅角緑内障と続発閉塞隅角緑内障に分けられる
小児緑内障隅角の発達異常などにより、小児期に眼圧の上昇を来す

 ここでは、緑内障の大半を占める原発緑内障を中心に解説します。原発緑内障は、隅角と呼ばれる角膜と虹彩が交わる部分が閉塞しているか否かで原発開放隅角緑内障と原発閉塞隅角緑内障に分かれ、原発開放隅角緑内障がほとんどを占めます。いずれも加齢に伴い増加しますが、原発閉塞隅角緑内障については、一般に60歳以上の女性や遠視の人に多くみられます。

 隅角の変化だけでなく、進行状況や治療効果をみるためにも、定期的な検査で状態を確認することが必要です。

原発開放隅角緑内障

 原発開放隅角緑内障は、隅角は閉塞していませんが、線維柱帯とシュレム管が目詰まりを起こし、房水が排出されにくくなることで眼圧が上がります(図1)。原発開放隅角緑内障には、眼圧が正常範囲でも視神経が障害される正常眼圧緑内障が含まれており、日本人では約7割を占めています3)。リスク要因として加齢や近視が考えられていますが、眼圧は日内や季節で変動するため、常に眼圧が正常範囲であることを把握することは難しいとされています。

図1 原発開放隅角緑内障

原発閉塞隅角緑内障

 毛様体で産生された房水は、隅角にある線維柱帯を通って、シュレム管から眼の外に排出されます。原発閉塞隅角緑内障では、加齢に伴う水晶体の肥厚、虹彩-水晶体間の房水の停滞などにより、虹彩が前面に押し出されて隅角が閉塞を起こし、房水の排出が妨げられることで眼圧が上昇します(図2)。また、突然隅角が閉塞し、急激に眼圧が上昇する急性原発閉塞隅角緑内障(急性緑内障発作)を起こす場合もあり、注意が必要です。

図2 原発閉塞隅角緑内障

緑内障の症状

 視野障害が一般的な症状ですが、緑内障の初期には、視野障害があっても自覚しないことがほとんどです。多くの場合、緩やかに進行していきますが、進行していくと、見えない場所(暗点)が出現する、視野が狭くなるといった症状が現れます。治療せずに放置すると、視野障害の範囲が広がっていきます(図3)。

 急性原発閉塞隅角緑内障では、眼圧が著しく上昇し、激しい眼痛や頭痛、嘔気、充血、目のかすみなどが急激に出現します。くも膜下出血など脳血管疾患と症状が似ているため、診断ではその鑑別も必要になります。

図3 緑内障による視野障害のイメージ

緑内障による視野障害のイメージ

緑内障の検査

 緑内障では眼圧検査、眼底検査、隅角検査、視野検査、光干渉断層計(OCT)を定期的に行い、病状の評価や進行経過を確認します。特に眼圧検査は重要な検査であり、数種類の測定方法が目的や状況などによって使い分けられます(表2)。

 眼底検査では散瞳薬を用いますが、原発閉塞隅角緑内障の患者さんに散瞳薬を使用すると眼圧が上がる可能性があるため、トロピカミド点眼液など作用がマイルドな薬剤が選択されます。

表2 眼圧の測定方法

非接触性型眼圧計 (ノンコンタクトトノメーター)・点眼麻酔が不要で簡便に行える 
・眼の表面に空気をあてて測定する
接触型眼圧計 (ゴールドマン眼圧計)・点眼麻酔後、アプラネーションチップを角膜に接触させて眼圧を測定する 
・最も精度が高い
携帯型眼圧計・手で持つことができ、ベッドサイドや自宅で眼圧が測定できる

緑内障の治療

薬物治療

 緑内障の根治治療はなく、障害された視野が回復することはありません。視野障害の進行を抑えるために、正常眼圧でも眼圧を下降させる点眼治療が基本になり、生涯にわたり継続することが必要です。

 点眼薬にはプロスタグランジン関連薬、β遮断薬、炭酸脱水素酵素阻害薬といった多くの種類があり、緑内障の種類や重症度、眼圧の高さなどに応じて処方されます。通常、単剤投与から開始され、眼圧下降効果が不十分な場合は、薬剤の変更や多剤併用療法が検討されます。

 ほかに、内服薬として、房水の産生を抑制して眼圧を下降させるアセタゾラミド(ダイアモックス)が処方されることもありますが、副作用のリスクが高まることから長期投与は行われません。ダイアモックスの投与では、体内のカリウムが失われるため、電解質バランスを保つためにアスパラカリウム製剤が併用されます。

レーザー治療、手術療法

 点眼治療では眼圧下降が不十分で、視野障害が進行する場合は、眼圧を下げることを目的にレーザー治療や手術療法が考慮されます(表3)。

表3 主なレーザー治療、手術療法

レーザー線維柱帯形成術線維柱帯にレーザーを当てて房水の流出を促進させる
レーザー毛様体光凝固術毛様体にレーザーを当てて房水の産生量を低下させる
線維柱帯切開術線維柱帯を切開し、房水の流出を促す
チューブシャント術房水流出路として、人工のチューブを挿入する

緑内障の看護

点眼指導

 緑内障による視野障害の進行を抑えるには、継続した点眼治療が必須になるため、正しい点眼操作と点眼薬の管理の指導が不可欠です。他の疾患で入院しているときも、点眼治療が滞らないように看護師が配慮することが大切です。

 点眼は簡単にできると思いがちですが、高齢者では認知機能に問題がなくても、視力の低下や手指の巧緻性の低下などさまざまな理由から、点眼操作が困難になります。このことを念頭に置き、指導を行うようにしましょう。患者さん自身で点眼ができない場合、入院中は看護師が行いますが、退院後も点眼が必要になるため、家族を含めて点眼指導を行います。

 点眼指導では、感染予防、患者さんに合った点眼方法の指導、副作用の予防が主なポイントになります。

感染予防

 点眼指導で最も重要なことは、「清潔に点眼を行うこと」です。特に術後は、眼内炎など感染症を予防する観点からも、点眼前の手洗い、点眼前後の眼周囲の清拭を徹底するように指導します。点眼薬への微生物の混入を防ぐために、点眼容器のノズルが睫毛や眼瞼、眼表面に接触しないように指導することも大切なポイントです。

点眼方法の指導

 点眼指導では、正しい点眼方法を説明しながら、患者さんに実際に点眼操作をしてもらいます。手技を確認したうえで、患者さんに合った点眼方法を指導していきます。

【正しい点眼方法】
①点眼前に、手を流水と石鹸でよく洗います。または、手指消毒剤で手を消毒します。
②清浄綿(非アルコール性)で、眼の周囲を眼頭から眼尻に向かってやさしく拭きます。
③点眼薬のキャップを外し、上向きに置きます。
④顔を真上に向けます。座位で顔を上に向ける動作が難しい場合は、仰臥位になります。
⑤利き手で点眼容器をもち、もう片方の手で下眼瞼を軽く引き、点眼します。このとき、ノズルが睫毛や眼瞼、眼表面に触れないように、点眼容器を眼から離します(図4)。

図4 点眼の仕方

 点眼容器をもつ手が安定せず、点眼がうまくいかない場合は、げんこつ法や点眼補助具の使用を検討します(図5、図6)。げんこつ法では、下眼瞼が下に引きやすくなり、眼と離れたところに点眼容器が固定されるため、ノズルが睫毛や眼瞼に触れずに点眼できます。

図5 げんこつ法

げんこつ法

図6 点眼補助具の例

点眼補助具

⑥点眼後は瞬きをしないようにして、眼を閉じます。
⑦あふれた薬液は、清浄綿の拭く面を変えて拭き取ります。
⑧眼を閉じたまま、1~5分間、涙嚢部を軽く指先で押さえます(薬液を浸透させるため)。ただし、術後は涙嚢部の圧迫が術創に影響することがあるため、眼を閉じるだけにします。

※2本以上を点眼する場合は、5分間あけて点眼をする

副作用の予防

 点眼薬による副作用にも注意します。主に使用されるプロスタグランジン関連薬のなかでもFP受容体作動薬は、眼の周囲に薬液が付着したまま放置すると、皮膚の色素沈着や睫毛の変化(長く、太く、多くなるなど)といった副作用が生じやすくなります。点眼後は清浄綿で拭き取ることを指導しましょう。

点眼薬の管理

 目標とする眼圧を得るために、点眼薬が複数処方されることがあります。点眼薬によって、点眼する時間帯や順番が決まっているため、点眼表を活用すると管理がしやすくなります。当院が作成している点眼表では、各点眼薬の写真と投与時間にキャップと同じ色のマークを記載し、マークの上に点眼薬を置いて管理できるようにしています(図7)。

 手術が必要な患者さんで両眼を別日程で治療するケースでは、右眼と左眼で点眼薬が異なることがありますが、後から処方された点眼薬に輪ゴムを巻くなど、患者さんが区別しやすいように工夫します。また、右眼と左眼で同じ種類の点眼薬を使用する場合であっても、感染予防の観点からそれぞれ点眼薬が処方されるため、いずれか一方の点眼薬に輪ゴムを巻いて、間違えて使用するのを防ぎます。

 同じ時間帯に複数の点眼薬を使用するときは、水溶性→混濁性→ゲル化→油性→軟膏の順に点眼することが基本になります。その場合、仕切りのある箱をつくり、点眼する順に点眼薬を並べて管理する方法もあります。

 大切なのは、個々の患者さん、もしくは介助する家族に応じて、管理しやすい方法をともに考え、継続して管理できるように支援していくことです。

図7 点眼表の例

点眼表

ADLの評価

 手術などで入院が必要な患者さんの場合、ADLの評価のもと必要な介助を検討します。特に術後は眼帯で眼を保護し視界が狭くなるため、眼帯を装着した状態での介助の必要度を判断します。当院では、ベッドサイドに必要な介助を示した札を掲示してスタッフ間で共有しています。(図8)。

図8 介助の必要度を示す札

介助の必要度を示す札

散瞳薬の注意点の説明

 眼底検査を行う際は、散瞳薬を使用します。散瞳薬を点眼すると、まぶしくみえる状態が半日ほど続きます。散瞳薬を使用する検査・治療を行う場合は、その当日より前に、車や自転車の運転は危険なこと、仕事や日常生活に支障を来すことを伝え、歩行に障害がある場合は、家族など介助する人に付き添ってもらうようにします。サングラスなどで眼を保護することも効果的です。

慎重投与、禁忌薬の確認

 抗コリン薬は、眼圧を上昇させるおそれがあることから、原発開放隅角緑内障では慎重投与、原発閉塞隅角緑内障では禁忌とされています。

 抗コリン薬には、抗不安薬、抗てんかん薬、消化性潰瘍治療薬、抗ヒスタミン薬、循環器治療薬、排尿障害治療薬、気管支拡張薬など多くの薬剤があり、他の疾患による検査や治療でも注意が必要です。例えば、胃内視鏡検査の前投薬として、抗コリン作用のある鎮静薬や鎮痙薬が用いられますが、原発閉塞隅角緑内障の場合は、代わりとなる薬剤が使用されます。

 ただし、自分が緑内障だとわかっていても、原発開放隅角緑内障か原発閉塞隅角緑内障かわからない患者さんも少なくありません。緑内障をもつ患者さんの看護では、原発閉塞隅角緑内障か原発開放隅角緑内障のどちらなのか、十分に確認することが大切です。

 ほかに、β遮断薬は、心拍数の低下や咳・喘息を誘発する作用があり、循環器疾患、喘息やCOPDなどの呼吸器疾患の患者さんでは、禁忌または慎重に投与する必要があります。

急性原発閉塞隅角緑内障発作の治療とケア

 急性原発閉塞隅角緑内障発作を生じた場合、放置すると数日で失明してしまうこともあり、緊急対応が必要です。直ちに硝子体の水分を排出させて眼圧下降を図るために、マンニトールなどの高浸透圧薬の急速静注投与を行います。縮瞳薬を頻回に点眼する場合もあります。薬物治療で眼圧を下げたあとに、レーザーで虹彩に孔を開けて、眼内の房水の流れを変えるレーザー虹彩切開術が行われることもあります。

 高浸透圧薬の急速静注投与では、投与中に患者さんの症状や眼圧の変化をモニタリングすることが大切です。また、水分が排出されることにより、排尿が促進されるため、患者さんには尿意を催したら、我慢せずに看護師に知らせるように伝えます。手術を実施した場合は、術後に眼圧が上昇するリスクがあるため、速やかに高浸透圧薬を投与できるように、術後も静脈路を確保しておきます。

引用・参考文献

1)日本緑内障学会ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第5版).日本眼科学会雑誌 2022;126(2):96.(2024年1月31日閲覧) https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/glaucoma5th.pdf
2)Morizane Y, et al:Incidence and causes of visual impairment in Japan: the first nation-wide complete enumeration survey of newly certified visually impaired individuals. Jpn J Ophthalmol 2019;63:26-33.
3)鈴木康之,他:日本緑内障学会多治見疫学調査(多治見スタディ)総括報告.日本眼科学会雑誌 2008;112(12):1039-58.
●厚生労働省医薬・生活衛生局:抗コリン薬の禁忌 「緑内障」等の見直しについて.医薬品・医療機器等安全性情報 2019;No.364:8-11.(2024年1月31日閲覧) https://www.pmda.go.jp/files/000230196.pdf
●医療情報科学研究所,編:病気がみえる vol.12 眼科.メディックメディア,2019.

イラスト/たかはしみどり

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