波形の形が違うのに、同じ洞調律として扱われるのはなぜ?
- 公開日: 2026/7/29
洞調律とは
モニター心電図を見ていると、ある患者さんはQRS波が高く鋭く振れているのに、別の患者さんは小さく平坦に見えるということがあります。見た目は全く違いますが、どちらも「洞調律(Sinus Rhythm:SR)」です。なぜなら、洞調律とは「波形の形が同じ」という意味ではなく、「洞房結節から発生した電気的刺激が正常なルート(刺激伝導系)に沿って心房から心室へ伝わり、適切なリズムを示している状態」を指す言葉だからです。
洞調律の判断基準と波形が変化する要因
洞房結節から発生した電気的刺激は、まず心房を興奮させてP波を形成します。その後、房室結節を通過して心室へ伝わることでQRS波となり、1回の心拍が作られて心電図に記録されます。
洞房結節から電気的刺激が発生し、P波→QRS波→T波が規則的に流れていれば、波形の高さや大きさに違いがあっても、すべて洞調律と判断されます。つまり、「洞調律かどうか」を判断するときに重視すべきなのは、波形の形や高さではなく、「P波があるか」「P波の後にQRS波が続くか」「P波とQRS波が一定の間隔を保っているか」「リズムが規則的か」ということになります。
例えば、痩せている高齢の患者さんは心臓と電極の距離が近くなり、洞房結節で発せられる電気的刺激が伝わりやすいため、QRS波が高く見えることがあります。反対に、皮下脂肪が多い患者さんや大量の胸水貯留がある患者さん、気胸により皮下気腫がある患者さんなど、何らかの要因で心臓と電極の距離が遠くなっている場合は、電気的刺激が電極にたどり着くまでに減衰するため、全体的に低電位を示します。これらはあくまで、体型や病態によって「波形の形が違う」だけであり、電気的刺激による心臓のリズムそのものが違うわけではありません。
「洞調律=正常」とは限らない
注意したいのが、「洞調律」と「正常心電図」は必ずしも一致しないということです。洞調律であっても、ST低下、QT延長、脚ブロック、テント状T波、期外収縮などを伴うケースはいくらでもあり、「洞調律だから大丈夫」とは決して言えません。
例えば、腎不全や透析中の患者さんでT波が急に尖ってきた場合、高カリウム血症が疑われるため、モニターの記録が洞調律のままであっても、医師への報告を検討します。同様に、STが下がってきたら心筋虚血や頻脈による心臓への負担を疑い、QRS幅が広がってきたら脚ブロックや薬剤の影響などを考えます。「洞調律という記録」と「波形の観察」は、分けて見る必要があるということです。また、心疾患の治療歴がある患者さんであれば、既往歴や過去の心電図を確認することも重要です。
