胸腔ドレーンの目的と挿入部位・排出メカニズム
- 公開日: 2015/12/10
胸腔ドレナージとほかの部位のドレナージの根本的な違いは、胸腔内の陰圧を維持する必要があることです。胸腔ドレーンを大気に解放すると、胸腔内の陰圧が保たれなくなり、肺の虚脱を引き起こします。
また、感染を起こさないためにも、ドレーン回路は閉鎖するのが原則です。回路の構造を理解して、管理を行うことが必要になります。
▼ドレーン(ドレナージ)について、まとめて読むならコチラ
胸腔ドレナージの看護|目的・手順・管理・看護計画など
ドレーンとは|ドレーンの種類と管理
胸腔ドレーンの目的
疾患や手術によって胸腔内に貯留した液体(血液、胸水、膿など)や気体を胸腔外へ排除することで、肺の拡張を促すこと、および胸腔内の情報を得ることができます。
液体や気体が胸腔内に溜まると、肺が膨らまなくなり、換気が十分に行われなくなってしまいます。
胸腔ドレーンの挿入部位
気胸の場合、基本的には前胸部の第2-第4肋間から挿入するとされていますが、経過によっては手術を行うこともあるため、それを想定して、第7肋間中後方から挿入するケースが多いようです。空気は軽いため上部に溜まるので、ドレーンチューブは上方に向けて留置します。
胸水など液体が貯留している場合は、第7肋間から挿入します。液体は下方および背側に貯留するので、ドレーンチューブは後方に向けます。
図 気体を排出する場合
図 液体を排出する場合
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* いくつ知ってる? 胸腔ドレーンの”4つの観察項目”
胸腔はどうなっているの?
胸腔は、胸壁・縦隔・横隔膜に囲まれた閉鎖された空間で、左右の肺が収まっている胸隔をそれぞれ左胸腔、右胸腔といいます。
横隔膜と胸壁の運動でその容積が変わることにより、肺は膨張・縮小し、換気が行われます。肺には、常に肺胸膜の弾性によって縮小しようとする力が働いていることから、肺を膨らませておくために、胸腔内は常に陰圧(-5~-8cmH2O)に保たれています。
胸腔ドレーンの排出メカニズム
3連ボトルシステムは、現在最も利用される方法です。水封法と低圧持続吸引法の両方の利点を併せ持ち、持続吸引で胸腔内圧を一定に保ち、水封室でエアリークも確認できます。
図 胸腔ドレナージ装置
①排液ボトル
胸水や血液、膿など排出された液体が、自らの重さによって底部に貯留します。
②水封室
中央の境界壁で2つの管(柱状の容器)に分けられ、境界部が蒸留水で水封(ウォーターシール)されています。これにより、胸腔内から排出された空気は気泡となって出されます。その一方で、外気は水封室の水でブロックされ、一方弁機能が働きます。
③吸引圧制御ボトル
ボトル内に溜められた蒸留水(水柱の高さ)で吸引圧を設定します。胸空内には、過剰な吸引圧はかかりません。
理解度UPのカギ
水封室の液体に気泡が発生した場合、エアリークがある。
ドレーン挿入患者さんがいたら、まずはコレをチェック
胸腔ドレーンが必要になる主な疾患・術後と目的
ドレナージ目的:胸腔外へ気体や液体を排出することで、肺の拡張を促す
*気胸(自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸)
→気体の排出
*胸部外傷
→気体・液体の排出
*肺全摘出以外の肺切除(葉切除、部分切除)
→気体・液体の排出
*血胸
→液体の排出
*胸水貯留
→液体の排出
*膿胸
→液体の排出
インフォーメーション目的:胸腔内の情報を得る
*開胸や胸腔内操作を伴う手術後における術後出血の早期発見
*肺瘻など異常の早期発見
病室に行ったら、まずコレをチェック
気胸/術後ドレーン管理のアセスメント
1.排液をみる
2.エアリークをみる
3.呼吸性移動をみる
4.皮下気腫をみるあ
5.全身をみる(呼吸状態、バイタルサイン、痛み、感染徴候)
6.刺入部をみる(固定状況、感染徴候の有無、創からの浸出液の有無)
7.ドレーン回路をみる
膿胸ドレーン管理のアセスメント
1.排液をみる
2.全身をみる(呼吸状態、バイタルサイン、痛み、感染徴候)
3.刺入部をみる(固定状況、感染徴候の有無、創からの浸出液の有無)
4.ドレーン回路をみる
(『ナース専科マガジン』2013年4月号から改変利用)
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